引きこもりで時代遅れの剣士は子竜を愛でる

4

　子育てというのは大変なんだな。


　ヒナはとにかく何でも興味を持つ。
　銃はくわえるわ刃物に触りたがるわ危ないと何回伝えても止めない。
　怒ろうとしても、キュイ？と無邪気に首を傾げられたら優しく注意に留まってしまう。

　あと毎日夜鳴きする。




　前は寝返りで潰さないように枕元にクッションを置いてその上にヒナを寝かせていた。


「キュ……キュィ～キュィ～」

　耳元で甲高い鳴き声がする。

　ああ、今日もか……。

「ん……」

　目を擦り、寝ぼけた頭で起こさないようにヒナを引き寄せる。
　腕の中に囲って肩まで布団をかけてやり、優しくお腹をポンポン叩く。
　すると、次第に鳴き声が収まっていくのだ。

「キュ…………」

　完全に寝たのを確認すると、俺もヒナを抱き締めて寝る。幼い温もりが心地好い。

　どうせ同じ布団で寝ることになるので、最近でははじめから同じ布団で寝ている。
　ヒナが嬉しそうだからいいだろ。ドラゴンは人間よりも頑丈だし。




　朝起きると、二人とも寝ぼけたまま顔を洗いにいく。
　まだ眠そうなヒナを小脇に抱えて洗面器にお湯を入れる。まだ寒いからな、冷たい水で洗顔はキツい。

　バシャバシャ顔を洗っていると、俺の真似をしようとしたヒナが大抵洗面器に落ちる。
　なので大抵ヒナはそのまま丸洗いだ。涎の跡もキレイに洗ってやる。

　俺が歯を磨いているとヒナも真似してくる。
　子供用の歯ブラシはエドウィンに持ってきてもらった。
　洗面台にちょこんと座って歯を磨くヒナは可愛い。口から歯磨き粉が溢れるのはいつものことだ。


　あれから俺は成長し、目玉焼きが作れるようになった。
　平べったい火の魔導石の上にフライパンを置き、ベーコンと卵を熱する。

「ヒナ～ご飯だぞ～」
「キュ～イッ！キュ～イッ！キュ～イッ！」
「よしよし、机の上で踊るな」

　短い手足と尻尾をフリフリするヒナは非常に可愛らしい。
　皿を置くとヒナは両手で目玉焼きを持って食べ始めた。頬っぺたがパンパンに膨らんでいる。

　……そういえばヒナって卵から生まれたよな。共食いにはならないのだろうか……。

「？」

　もっきゅもっきゅと目玉焼きを食べるヒナの真ん丸い瞳がこちらを見詰めてくる。

　……まあ種族が違うからいいのか。

　ヒナが汚した口周りを拭いてやる。


　ぽっこりとしたお腹まで汚していた。