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「あ~平和だなぁ~」

 冬の間はヒナとのんびり過ごしていた。毎日の読み聞かせの成果か、ヒナはちょっとずつだが言葉を話せるようになった。元々竜は知能が高いし成長速度も早いから教えるのは楽だ。

 その間に俺の親としての意識も大分育った気がする。なんか愛情が芽生えた。睡眠大好きな俺が夜鳴きも微笑んで許せるレベルだ。

 まだ冬は終わっていないが、もうすぐ雪も溶け始めるだろう。

 そろそろ仕事もしなきゃなぁ~。
 今は引きこもる前に貯め込んだ資金で生活している。それでもやっていけないことはないが、ヒナの為にも金はあるに超したことはない。
 まあ、春になったら歴史的には価値のある銃などの修理や400年程前に使われていた文字の解読の依頼がくるだろう。量を多目に受けよう。


 考え事をしているとヒナがトコトコ近付いて来た。

「ぱぱ!よんで!」
「ん?ああ、おいでヒナ」
「キュッ!」

 どうやらエドウィンに新しい絵本をもらったらしい。胡座をかいてその上にヒナを乗せてやった。

 表紙を捲る。

「むかしむかし、アルフェミア共和国には五人の英雄がいました。……」



 五人は元は冒険者だったが悪い魔獣をたくさん倒していると、いつしか英雄と呼ばれるようになったのです。

 ある日、アルフェミア共和国に邪悪なドラゴンが現れました。

 国は英雄達にそのドラゴンの討伐を頼みます。

 そして英雄達は力の限り戦いました。

 だが、あまりにもドラゴンは強く、五人は満身創痍だった。

 そこで、五人の中で一番若い男が名乗りを上げた。

 彼は自分の命をも脅かす強大な魔法が使えたのです。





「……そして、五人の英雄のうちの一人は命と引き換えに邪悪なドラゴンを倒しましたとさ。おしまい…………おい゛エドウィン」
「何すか?」

 俺はエドウィンの額に向かって絵本を投げた。


「ンゴッ!!」

「バッドエンドでしかもドラゴンが悪役の絵本をヒナに渡すんじゃねぇ!!」

「痛いっす!でもっ、これは小さい頃に誰でも読む過去に実際にあった話なんすよ!?」
「却下。教育に悪い。なぁ~ヒナ?」
「キュイッ」
「あ~可愛い」

 頭を撫でてやる。



「ちぇ~、一番有名な絵本なんすけどね~。そんなに気に入らなかったっすか?」

 エドウィンは額をさすりながら起き上がった。

「……気に入らないな。だって、こいつは死んでから英雄になったんじゃないだろ」
「そうっすけど、……そんなに違いあるっすか?」
「ある。こいつは英雄と呼ばれていたからから死んだんだ。英雄だったから、民の為に命懸けで戦うことを強制された。……ゾッとするよ……」
「考え方が暗いっすね。だから社会に馴染めなかったんじゃないっすか?」

「ヒナ~パパとお昼寝しよっか~」
「キュウ~!」
「唐突に会話打ち切るの止めて欲しいっす!!」

 喚くエドウィンを無視してヒナとソファーに横になる。
 目を閉じると、頬にヒナの手が当てられたのが分かった。

「キュウ~?」

 ヒナが心配そうに覗き込んでくる。

「ん?俺は大丈夫だよ、ヒナ。ほら、こっちおいで」

 俺の横をポンポン叩くとヒナは大人しく寝転がった。ヒナを抱き込む。

「キュイ~」
「心配してくれてありがとうな。パパは全然元気だぞ~」
「キュイ~!!」


 娘が良い子過ぎて感動。

 俺達はそのまま夜までぐっすりと寝ていた。






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