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三章

お泊り会をしました

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「ほ~ら、今から肉を焼くぞ~」
「「「きゅ~!!」」」

 ついにメインディッシュです。
 私を含め、子竜軍団は瞳を輝かせてお肉が焼けるのを見ている。
 ジュージュー音が鳴るたびに香ばしい匂いが漂ってくるのでついつい鼻をひくひくしちゃいます。私の隣に並んでいるリューン達も同じように鼻をひくつかせている。

「ん~! かわいいですわ。陛下、お肉はまだ焼けませんか?」
「まだだ。生焼けのままやってこいつらが腹を壊したら可哀想だろ」

 なぜか私達よりも待ちきれなさそうなシアラさんにヴォルフス様がそう返す。
 大人の竜なら生のお肉をバクバク食べても平気ですけど私達はまだ焼いてもらってやっと食べられる状態なんですよね。

 ぶんぶんと尻尾を振って待っていると、ついにお肉が焼き上がった。

「切るからちょっと待ってろよ」
「「「「きゅ~!!」」」」

 片手を上げていいお返事をする。
 ヴォルフス様は小さめに切ったお肉を、四つのお皿にそれぞれ盛り付けた。そして私達の前に置いてくれる。

「どうぞ、召し上がれ」

 微笑んでヴォルフス様が言う。

「きゅ~! (いただきます!)」
「「「きゅ~!!」」」
「まだ熱いからちゃんとふーふーするんだぞ?」
「きゅっ (は~い)」

 まだホカホカと湯気を立てているお肉にフーフーと息を吹きかける。子竜の姿でフーフーするのは初めてなので「きゅきゅっ」と、鳴き声がちょっとだけ漏れちゃったのはご愛嬌だ。

 そろそろお肉がいい具合の温度になった気がします。
 人間の一口サイズのお肉にかぷっとかぶりつく。

「きゅるるるるるる~!!」

 ん~! おいしいです!
 目の前で焼かれたお肉は格別ですね。
 リューン達も焼きたてのお肉にがっついている。いつもよりも食が進んでいるようで何よりだ。
 かく言う私もそうなんですけどね。いつもの倍くらいの食欲がある気がします。

「リアがいっぱい食べてるわ。よかったわね」
「そうだね」

 両親も喜んでくれているようだ。

「リアがこんなに食欲旺盛になるなら毎日バーベキューにしましょうか」
「それもいいね」
「きゅ~(いやいやよくないです)」

 手間がかかりすぎるでしょう。
 というか、まだあんまり量が食べられないことを心配させちゃってたんですね。これからはもっといっぱい食べるようにしよう……。そう思いながら私はお肉を口に運んだ。

 ごはんの途中からはシアラさんの旦那さんであるヴィクター様も参加し、それはそれは賑やかな夕食になった。





 そして夜も更けてきたのでみんなで寝る準備をした。
 竜用の予備のクッションベッドを三つ設置すればもう寝る準備は万端だ。
 竜化したお母さんがクッションベッドに寝そべり、そのお腹の辺りに私達子竜ズがギュウギュウに詰める。こんなにくっつかなくてもスペースは十分あるけれどまだ気が済まないらしく、みんなが離してくれないのだ。
 お母さんを挟んで反対側にはお父さんが寝そべる。
 シアラさんとヴィクター様、そしてヴォルフス様もそれぞれの寝床につく。

「はは、学生時代の宿泊行事を思い出すなぁヴォルフス」
「そうだな、懐かしい。まさかこの年になってお泊り会をするとは思わなかったが楽しいものだな」

 学校……そうですよね、ヴォルフス様にも学生時代はありますよね。

「きゅきゅ?」

 そこで、ノヴァが体を起こし、ヴォルフス様の方に向かって鳴いた。

「ん? 学校に興味があるのか?」
「きゅ!」
「学校っていうのはな――」

 もう割と夜も遅いからか、ヴォルフス様はかいつまんで竜達に学校のことを教えてあげていた。
 すると、ノヴァを筆頭に学校というものに興味を持った子竜達が興奮し始める。

「きゅ! きゅきゅ!!」

 もっと話を聞かせろとノヴァがヴォルフス様にねだる。

「今日はもう遅いから寝ような。話が聞きたいならまた明日話してやるから」

 ヴォルフス様が手を伸ばしてノヴァの頭を撫でる。ヴォルフス様も少し眠いのか、いつもよりもとろんとした微笑みがかわいいです。

「きゅるるるる」

 ノヴァは頭を撫でられて気持ちよさそうにしつつも名残惜しそうにしている。リューンやカノンも同じだ。中々興奮が冷めやらぬのかきゅっきゅきゅっきゅと鳴いて寝ようとしない。
 まだまだ子どもですし、あんまり夜更かしはよくないと思うんですけど……どうしましょう……。
 「きゅ~……」と鳴いていると、シアラさんは私がすっかり忘れていたことを思い出させてくれた。

「ふふ、リアさん、大丈夫ですよ。この魔道具がありますから」
「きゅ! (あ!)」

 シアラさんが持ってきたのは私が作成した魔道具だった。
 すかり忘れてました!

「いつも寝ている時間よりも遅いですし、いっぱいはしゃいだのでこの魔道具はよく効くでしょう。それではみなさん、おやすみなさい」

 そう言い、シアラさんは魔道具を発動させた。
 クルクルと人形が回り出す。

 効果は抜群で、リューン達はすぐにうとうとし始めた。そして、私を含めた他のみんなも。
 子竜じゃなくても今日はいつもよりもはしゃいでそこそこに疲れているわけで。そんなみんなに魔道具が効かないわけがない。

 微睡みに身を任せる直前、ヴォルフス様の深い青と目が合った。

「リア、おやすみ」

「きゅっ (おやすみなさい、ヴォルフス様)」

 ヴォルフス様の優しい声のおかげか、私を囲む温かい体温のおかげか、とても満たされた気持ちで私は眠りについた。













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