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二章
ハルトさんのご両親
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「かわいいわぁ。見てあなた、腕の中にクルンて納まっちゃったわ」
「ほんとに可愛らしいな。姫様、次は私に抱っこさせてください」
ただいま、私はハルトさんのお母さんの腕の中でカチンコチンに固まっている。二人のテンションに気圧されて動けないのだ。
「二人とも、姫様がビビり散らかしてるから陛下に返してあげなよ」
「あら?」
「ほんとだな」
呆れたような様子のハルトさんの発言で、二人は一斉にこちらを見た。ハルトさんのお母さんの瞳に、人形のように固まった私の姿が映り込んでいる。おっきな瞳ですね。
「ごめんなさいね姫様」
「すまないな」
ハルトさんのご両親は最後に私を一撫でずつすると、ルフス様に私を返却してくれた。ルフス様の腕の中に戻ると、慣れた香りに包まれてホッとする。
「まあ、かわいいわ」
「嬉しいと尻尾が揺れるのだな」
「きゅ」
安心して尻尾が揺れちゃってたみたいです。ハルトさんのお父さんに指摘され、私はゆらゆらとする尻尾を抱きしめて動きを止めた。
さすがハルトさんのお父さん。よく観察してます。
私が自分の尻尾を抱きとめると、ハルトさんのお母さんが自分の口をパッと覆った。
「どうしましょうあなた、姫様がかわいすぎるわ!!」
「そうだな、赤子の頃のハルトといい勝負だ」
「いや断然姫様の方がかわいいでしょ」
興奮しっぱなしのご両親にハルトさんが照れたようにそう返した。今の会話だけでも仲のいい家族だということが窺える。私の家族も負けてませんけどね!
「いや、子どもの頃のハルトはそれはもう―――」
「もうその話はいいよ。それより二人とも、姫様とは初対面なんだから名乗ったらどう?」
ハルトさんの発言に二人はハッとなった。
ちなみに、この間ルフス様はずっと優しく私の背中を撫でてくれている。包容力が半端ないです。猫だったらゴロゴロ待ったなしですね。
落ち着きを取り戻した二人は改めてこちらに向き直った。
「つい興奮で我を忘れてしまってました。申し訳ありません姫様。私はクロープ地方の第一区の区長をさせていただいていますカイトと申します。もうお察しかもしれませんが、そこにいるハルトの父親です」
「カイトの妻でハルトの母親のシーナです。最初から醜態をさらしてしまったけれど、どうか仲良くしてくれると嬉しいわ」
先程とは打って変わって穏やかに微笑むシーナさん。
「きゅ! きゅきゅ! (私はリアです。こちらこそ、仲良くしてください!)」
あ、きゅきゅっと鳴いても伝わらないんだった。私が竜語で挨拶しても二人は「なんか鳴いてるな~」という風に微笑むだけだ。
握手なら伝わりますかね?
お近づきの印ということで、二人に向けてちっちゃな手を差し出して握手を要求する。
「きゅきゅ!」
どうやら意図は正しく伝わったようだ。私の差し出した両手がそれぞれ同時に握られる。
「ああ、おててが小さいな」
「かわいいわあああああ!!」
握手された手が上下にフリフリされる。
うん、このお二人のテンションにも慣れてきました。
「―――さて二人とも、挨拶は済んだか? そろそろリアに何か食べさせたいんだが」
ルフス様がそう言うと、二人はパッと私の手を同時に離した。さっきからやることなすこと全部同じタイミングです。仲良し夫婦さんですね。
「これはこれは」
「失礼しましたわ! 食事はできてますので、今すぐ用意しますわね」
そう言ってキビキビ動き出し、食堂を出て行った二人。お二人がこのお屋敷を管理してるんですかね?
「リア、人間の姿になっておくか?」
「きゅ (はい)」
食事をするとのことなので、私は人間の姿に戻った。魔術で服も一瞬のうちに戻る。
それから暫くすると、食事と共にカイトさんとシーナさんが戻ってきた。
「まあ! まさか、この小さくて愛らしいにも程があるお嬢さんは姫様ですか!?」
「ちっちゃい! 小っちゃすぎるな!!」
あ、なんかデジャブです。
今にも手を繋いで私の周りをグルグルと回り出しそうなテンションの二人をルフス様が止めた。
「リアのごはんの時間だ。愛でたい気持ちは痛い程わかるが、それは後にしてくれ」
「「あ、はい」」
真顔のルフス様に諭されて、二人は大人しく引き下がった。視界の端にはどこか遠くを見るハルトさん。珍しい表情です。
「はいリアあーん」
「あーん」
ルフス様によってサラダが私の口に運ばれる。ん! おいしいです! さすが農業が盛んな地域。
私とルフス様の向かいの席では、ハルトさん一家が身を寄せ合ってなにかを話していた。仲良しですね。
「なあハルト、どうしてあの二人はナチュラルにあーんをしてるんだ? 二人は想い合っているのか?」
「まだそこまでは発展してないよ。単純にあの二人の距離感がバグってるだけ」
「あらそうなの? まあ、今の姫様を恋愛的な意味で想っていたらちょっと犯罪臭がするものね」
こそこそと何かを話していた三人が同時にこちらを向いた。こうして見ると完全に親子ですね。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
そう言ってハルトさん達も食事に手を付け始める。
ルフス様も私に栄養を摂らせることに集中していて三人の会話は聞いていなかったようです。
「私に食べさせてばっかりじゃなくて、ルフス様もちゃんと食べてください」
「食べてるぞ」
「あ、ほんとです」
ルフス様のお皿を確認すると、確かに減っていた。いつの間に食べてたんでしょう。
「姫様は陛下をルフス様と呼んでるのね。二人だけの愛称かしら」
シーナさんが微笑まし気に聞いてきた。
「う……」
「ああ。リアが『ヴ』の発音が苦手なんだ」
「それで『ルフス様』なんですね。ますますかわいいわぁ!! 姫様、一度ヴォルフス様って言ってみてくださいません?」
「ぼるふす様」
「~~~~~!!!」
なぜかはしゃぐシーナさん。カイトさんは無言でプルプル震えている。
私は隣のルフス様を見上げた。
「そんなにおかしかったですか?」
「いや? 二人はリアがかわいすぎて悶えてるだけだ」
「……ルフス様に聞いたのは間違いだったかもしれません」
「ただの事実なんだがな」
眉尻を下げて微笑むルフス様。
「言えるようになったらちゃんとヴォルフス様ってお呼びします。それまで待っててください」
「それはそれで少し寂しい気がするな。でも楽しみに待ってることにしよう」
そう言って、ルフス様は私の口にちぎったパンを放り込んできた。
おいしいです。
「ほんとに可愛らしいな。姫様、次は私に抱っこさせてください」
ただいま、私はハルトさんのお母さんの腕の中でカチンコチンに固まっている。二人のテンションに気圧されて動けないのだ。
「二人とも、姫様がビビり散らかしてるから陛下に返してあげなよ」
「あら?」
「ほんとだな」
呆れたような様子のハルトさんの発言で、二人は一斉にこちらを見た。ハルトさんのお母さんの瞳に、人形のように固まった私の姿が映り込んでいる。おっきな瞳ですね。
「ごめんなさいね姫様」
「すまないな」
ハルトさんのご両親は最後に私を一撫でずつすると、ルフス様に私を返却してくれた。ルフス様の腕の中に戻ると、慣れた香りに包まれてホッとする。
「まあ、かわいいわ」
「嬉しいと尻尾が揺れるのだな」
「きゅ」
安心して尻尾が揺れちゃってたみたいです。ハルトさんのお父さんに指摘され、私はゆらゆらとする尻尾を抱きしめて動きを止めた。
さすがハルトさんのお父さん。よく観察してます。
私が自分の尻尾を抱きとめると、ハルトさんのお母さんが自分の口をパッと覆った。
「どうしましょうあなた、姫様がかわいすぎるわ!!」
「そうだな、赤子の頃のハルトといい勝負だ」
「いや断然姫様の方がかわいいでしょ」
興奮しっぱなしのご両親にハルトさんが照れたようにそう返した。今の会話だけでも仲のいい家族だということが窺える。私の家族も負けてませんけどね!
「いや、子どもの頃のハルトはそれはもう―――」
「もうその話はいいよ。それより二人とも、姫様とは初対面なんだから名乗ったらどう?」
ハルトさんの発言に二人はハッとなった。
ちなみに、この間ルフス様はずっと優しく私の背中を撫でてくれている。包容力が半端ないです。猫だったらゴロゴロ待ったなしですね。
落ち着きを取り戻した二人は改めてこちらに向き直った。
「つい興奮で我を忘れてしまってました。申し訳ありません姫様。私はクロープ地方の第一区の区長をさせていただいていますカイトと申します。もうお察しかもしれませんが、そこにいるハルトの父親です」
「カイトの妻でハルトの母親のシーナです。最初から醜態をさらしてしまったけれど、どうか仲良くしてくれると嬉しいわ」
先程とは打って変わって穏やかに微笑むシーナさん。
「きゅ! きゅきゅ! (私はリアです。こちらこそ、仲良くしてください!)」
あ、きゅきゅっと鳴いても伝わらないんだった。私が竜語で挨拶しても二人は「なんか鳴いてるな~」という風に微笑むだけだ。
握手なら伝わりますかね?
お近づきの印ということで、二人に向けてちっちゃな手を差し出して握手を要求する。
「きゅきゅ!」
どうやら意図は正しく伝わったようだ。私の差し出した両手がそれぞれ同時に握られる。
「ああ、おててが小さいな」
「かわいいわあああああ!!」
握手された手が上下にフリフリされる。
うん、このお二人のテンションにも慣れてきました。
「―――さて二人とも、挨拶は済んだか? そろそろリアに何か食べさせたいんだが」
ルフス様がそう言うと、二人はパッと私の手を同時に離した。さっきからやることなすこと全部同じタイミングです。仲良し夫婦さんですね。
「これはこれは」
「失礼しましたわ! 食事はできてますので、今すぐ用意しますわね」
そう言ってキビキビ動き出し、食堂を出て行った二人。お二人がこのお屋敷を管理してるんですかね?
「リア、人間の姿になっておくか?」
「きゅ (はい)」
食事をするとのことなので、私は人間の姿に戻った。魔術で服も一瞬のうちに戻る。
それから暫くすると、食事と共にカイトさんとシーナさんが戻ってきた。
「まあ! まさか、この小さくて愛らしいにも程があるお嬢さんは姫様ですか!?」
「ちっちゃい! 小っちゃすぎるな!!」
あ、なんかデジャブです。
今にも手を繋いで私の周りをグルグルと回り出しそうなテンションの二人をルフス様が止めた。
「リアのごはんの時間だ。愛でたい気持ちは痛い程わかるが、それは後にしてくれ」
「「あ、はい」」
真顔のルフス様に諭されて、二人は大人しく引き下がった。視界の端にはどこか遠くを見るハルトさん。珍しい表情です。
「はいリアあーん」
「あーん」
ルフス様によってサラダが私の口に運ばれる。ん! おいしいです! さすが農業が盛んな地域。
私とルフス様の向かいの席では、ハルトさん一家が身を寄せ合ってなにかを話していた。仲良しですね。
「なあハルト、どうしてあの二人はナチュラルにあーんをしてるんだ? 二人は想い合っているのか?」
「まだそこまでは発展してないよ。単純にあの二人の距離感がバグってるだけ」
「あらそうなの? まあ、今の姫様を恋愛的な意味で想っていたらちょっと犯罪臭がするものね」
こそこそと何かを話していた三人が同時にこちらを向いた。こうして見ると完全に親子ですね。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
そう言ってハルトさん達も食事に手を付け始める。
ルフス様も私に栄養を摂らせることに集中していて三人の会話は聞いていなかったようです。
「私に食べさせてばっかりじゃなくて、ルフス様もちゃんと食べてください」
「食べてるぞ」
「あ、ほんとです」
ルフス様のお皿を確認すると、確かに減っていた。いつの間に食べてたんでしょう。
「姫様は陛下をルフス様と呼んでるのね。二人だけの愛称かしら」
シーナさんが微笑まし気に聞いてきた。
「う……」
「ああ。リアが『ヴ』の発音が苦手なんだ」
「それで『ルフス様』なんですね。ますますかわいいわぁ!! 姫様、一度ヴォルフス様って言ってみてくださいません?」
「ぼるふす様」
「~~~~~!!!」
なぜかはしゃぐシーナさん。カイトさんは無言でプルプル震えている。
私は隣のルフス様を見上げた。
「そんなにおかしかったですか?」
「いや? 二人はリアがかわいすぎて悶えてるだけだ」
「……ルフス様に聞いたのは間違いだったかもしれません」
「ただの事実なんだがな」
眉尻を下げて微笑むルフス様。
「言えるようになったらちゃんとヴォルフス様ってお呼びします。それまで待っててください」
「それはそれで少し寂しい気がするな。でも楽しみに待ってることにしよう」
そう言って、ルフス様は私の口にちぎったパンを放り込んできた。
おいしいです。
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