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二章
お料理をしたいです!
しおりを挟むハルトさんを始めとした学者さんが帰って行き、私とお母さん、そしてルフス様は家の中に入った。落ち着く間もなくお母さんは夕飯の準備に取り掛かろうとする。
「せっかくだから夕飯は畑でできたお野菜を使いましょうか。陛下も食べていかれますか?」
「そうだな。ご相伴にあずからせてもらおう」
ルフス様の返答にニコリと笑うと、お母さんは庭の畑に野菜をとりにいった。
「私も行きましょうか?」
「いえ、リアは陛下にお茶をお出ししておいて」
「わかりました」
ルフス様には座ってもらって、戸棚からお茶っ葉の入ってる缶を取り出す。お母さんに教えてもらって私もおいしいお茶の入れ方を学んだのだ。ルフス様は私が熱湯を扱うのをハラハラしながら見ている。腰を浮かせて今にも飛んできそうだ。もはや椅子には座っていない。
「ルフス様、座ってゆっくりしててください」
「だが……」
ルフス様の両手が空中を彷徨っている。さすがにお茶を入れるくらいで火傷なんかしませんよ。
なんとかルフス様を椅子に押しとどめ、無事に紅茶を入れ終えた。紅茶の入ったカップをルフス様の前の机に置く。家には割と身分の高い人達も来るのでちゃんといい食器も揃えてある。もちろん今使ったのは家で一番いいカップだ。私達家族は使わない完全来客者用。
ルフス様が紅茶を一口、口に含んだ。
「―――! おいしい!」
驚きで目を見開くルフス様。
「リアはすごいなぁ。こんなにおいしい紅茶を入れられたのか」
笑顔のルフス様に頭を撫でられる。えへへ、お母さんにお茶の入れ方を教わっておいてよかったです。
そこでお母さんが両手に野菜を抱えて帰ってきた。
「今日は野菜のスープとロールキャベツにするわね」
「あ、お母さん、私も料理してみたいです」
お茶を褒められて調子に乗った私はお母さんにそう尋ねてみた。前々から料理はしてみたかったんです。
「……ん?」
何の反応も返してくれない二人を見ると、見事に固まっていた。
暫く待っているとようやく二人が動き出す。
「リアが料理……?」
お母さんが呟く。
「だめですか?」
「ええ、ダメよ! 料理は刃物を使うのよ! 危ないわ!!」
「……」
お母さんは私を何歳だと思ってるんでしょう……。思わず遠い目になった。
「オリビアさんの言う通りだ! 料理は刃物も火も使うんだぞ! 危険だ!!」
ルフス様もでしたか……。
どうしましょう……今日の所は別に諦めてもいいんですけど、ここで引き下がったら一生料理をさせてもらえない気がします……。
お母さんもお父さんも大概過保護なんですよね。
「でも、料理してみたいです……」
ジッとお母さんを見る。
「うっ……! 私の娘がかわいい……!!」
「完全に同意だ」
「……」
褒め殺しで照れます。どう反応すればいいんでしょう……。
それから粘りに粘って、ようやく料理のお手伝いをすることを許してもらえた。
「はいリア、これを鍋に入れて?」
「はい」
お母さんが切った野菜を鍋に入れる。ちなみに、包丁には一切触らせてもらえなかった。
それから私がすることと言えば鍋を混ぜることくらいだった。これは料理の手伝いって言っていいレベルなんでしょうか……?
そんな私の疑問とは裏腹に、お母さん、帰ってきたお父さん、そしてルフス様は私が初めて作った料理ということで大袈裟なくらい喜んでくれた。
また今度料理にチャレンジしてみようと思います。次はちゃんと自分で一品くらい作ってみたいです!
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