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二章
お父さんの職探し
しおりを挟むお父さんと話したエルゼリアは食事を終えると王城に帰って行った。吹っ切れたようでよかったです。
「さて、じゃあ俺もそろそろ行こうかな」
「あら、どこに行くの?」
お母さんがお父さんに尋ねる。どうやらお母さんもこれからお父さんが出掛けることは知らなかったようです。
「職探しだよ。二人が研究に協力することで色々と便宜を図ってもらったけど、それに甘えているだけじゃやっぱり一家の大黒柱として恥ずかしいじゃないか」
リアも付きっ切りで子育てする年じゃなくなっちゃったしね、とお父さんが続ける。
「だからちょっと街でも見て回って俺でも就ける職を探しに行こうと思うんだ」
「あなた……」
お母さんは感動したようにお父さんを見た。
立派ですお父さん……!
「私もついて行きたいけれど、これからハルト君の研究室に顔を出す約束をしているのよね……」
「ふふ、俺一人で行くよ。愛しい妻にかっこ悪い所を見せさせないでくれ」
そう言ってお父さんはお母さんと私をハグし、出かけていった。
「――なんだ、言ってくれればアルフ殿の職くらいこっちで用意したんだが」
食事の後、一緒にお茶をしようと家を訪ねてきたルフス様があっさりとそう言う。
「ありがたいですけど、多分お父さんにもプライドがあるのでお断りしちゃったと思いますよ?」
「そうか。……それもそうだな。まあアルフ殿の就職に関しては心配することはないと思うぞ?」
「どうしてですか?」
首を傾げるとルフス様に頭を撫でられた。
「竜人は大概自分達よりもか弱い人間のことが大好きだからな。接客業なんかは引く手数多だと思うぞ」
「そうなんですか。よかったです」
ホッとしました。
「あ、次は私がお茶を入れますね」
「ああ、ありがとう」
一杯目は恐れ多くもルフス様に入れてもらってしまったのだ。次は私がおいしいお茶を入れてみせます……!
二杯目のお茶を一口飲んだルフス様はそれはもう大袈裟なくらい私を褒めちぎった。リアが入れてくれたお茶はまるで天の雫だなんだの。嬉しいですけどそこまで褒められるとやっぱり照れちゃいます。
二杯目のお茶をゆっくりと飲み干したルフス様は隣に座っていた私を持ち上げ自分の膝の上に置いた。未だ成長の気配を見せない私の小さな体はちょこんとルフス様の膝の上に納まる。
そしてルフス様は私の頭の上に自分の額を擦り付ける。
「ああ……癒される……」
「ルフス様お疲れなんですか?」
あの後いろんな後処理もあったでしょうし疲れてるのかもしれません。
「いや、仕事の方はもうそこまで大変でもないんだが癒しが足りないんだ。近くにリアが住んでいた幸福を俺は今になって噛み締めてるよ……」
「ふふっ、大袈裟ですよ」
「全然大袈裟じゃないんだけどな……」
私達はそのまま雑談に興じた。
「そうだ、リアは将来なりたい職業とかはあるのか?」
「将来……」
そういえば、なりたい職業なんて考えたこともありませんでした。なんとなく私はあの家の中で一生を過ごすのだと思ってましたし。
う~ん……。
「具体的に考えたことがなかったのでまだ分かりませんけど、とりあえず魔術を生かせる職に就きたいかな……って思います」
そう言うとルフス様にいいこいいこと頭を撫でられた。
「そうか。まあ将来のことはゆっくり考えていけばいい。リアはまずよく食べて成長することが仕事だからな」
なんなら俺が養うし、とルフス様。流石にそれは悪いですよ。
でも将来……将来かぁ……私は一体何になりたいんでしょう…………。
そして夕方頃、お父さんが帰ってきた。
「お父さんおかえりなさい!」
「おかえりなさいあなた」
「ただいま二人とも。聞いてよ! 早速職が決まったんだ!」
お父さんが嬉しそうに私達に報告をしてくれる。
「おお! 何に決まったんですか?」
「宰相補佐官だよ!」
満面の笑みでお父さんが言い放った。
「……」
「……」
一瞬なんて言われたのか分からなかった。たった半日で決めてくるような職じゃないでしょう……。
父、おそるべしです。
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