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2章 婚約と新たな火種
偶然の結果
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近衛騎士団副団長と言うだけあって、苦戦せずに魔物を屠っていた。
近衛騎士の数より魔物の方の数が倍以上多かったにも関わらず、皆余裕の表情で戦っていたので、かなりの戦闘経験があるのだろう。
魔物は王城の魔物図鑑で見てだいたい覚えている。
今回の魔物の群れの場合ゴブリン、コボルト、オークで構成されており、ゴブリンとコボルトは進化していなければ、一般人でも武器を持てば1対1なら勝てるほど弱い。
オークは鈍足で遅いが、力が強く一般人なら一瞬で叩き潰されてしまう。
なりたての冒険者がよく鈍足と言うだけで戦いを挑み力量を間違えて死ぬことが毎年1000件以上あることから、初心者殺しのオークと言われている。
この3匹に関しては繁殖力が高く放っておくと、魔物の王がすぐに誕生してしまうため、見つけ次第討伐が可能ならばした方が良いと本にも書かれていた。
そんなことを考えていたらもう最後の1匹になっていて、すぐに首が切断され死亡していた。
ナザリーさんは返り血をほとんど浴びずに竜車の中に入ってきた。
「お待たせしました。魔物の血でほかの魔物がよってくる前に移動してしまいましょう」
「オークの肉とか持ち帰らなくていいのですか。とても美味しいと本で書かれていた気がするのですが……」
「アーマン公爵を王城まで送ることが最優先ですので」
ナザリーさんはそう言うとすぐに移動の指示を出し、部隊が動き出した。
「魔法陣の話の途中だった気がしますが、どうしてアーマン公爵を王城に連れてくるように命令されたかの経緯を、話してよろしいでしょうか」
そうだ、マリア王女のことで問題が起きたから呼ばれていたのをすっかり忘れていた。
魔物を直接見るのは前にも何回かあったが、ここまで綺麗に戦っているのを見るのは初めてで、すっかりその事ばかりに考えがいっていた。
「そうでした。お話をお願い致します」
「はい。実は王城に魔族が入り込みアーマン公爵を暗殺しようと侵入した際、カナリア王妃とマリア王女に目をつけられ襲われました……」
「マリア王女が襲われた?! 大丈夫なんですか!」
自分が魔族に目をつけられたために、マリア王女とカナリア王妃が襲われるとは思っていなかったため、動揺してしまった。
「落ち着いてください。殺される寸前にガジル騎士団長が間に合い何とか守ることが出来たそうです……」
「そうですか……」
生きていることにホッと安心した。
「ですが、マリア王女様は魔族に襲われたことによる恐怖がトラウマになってしまい、いつ襲われてもおかしくないと思ってしまったようで、自分の部屋から出なくなってしまったのです」
「そこで僕を呼びどうにかしてトラウマを無くして欲しいと?」
「その通りです。マリア王女様はもう少しで学園へ通わなければならないため、すこしでも早くこの問題を解決していただきたいとアルバーン国王陛下は願っています」
アルバーン国王陛下は学園に通わせなければいけないためと表面上では言っているが、一人の娘の父親として心配なのだろう。
「僕にマリア王女を説得する自信はあまり無いですが、精一杯頑張ります」
「マリア王女は近衛騎士団員からしても妹や娘のような存在です。アーマン公爵しか頼れる人はいません。どうかよろしくお願いします」
ナザリーさんは深々と頭を下げてきた。
それだけマリア王女が周りの人から慕われていることに何故か俺も誇らしかった。
「はい。それでなぜ魔族が入って来たのですか? 確か王都は協力な結界で覆われていて魔族は侵入出来なかったはずでは?」
「対魔族用の結界は10年に1回、貼り直さなければいけない時期があります。そして張り直す時には既に張ってある結界を消さなければなりません。そのタイミングで魔族が襲撃してきたのが、偶然重なったしまった結界このようなことになったのだと思います」
「偶然……ですか……」
「はい。結界の張り替えについては超重要機密なのでそのタイミングを知っているのは、アルバーン国王陛下と王城に務めている結界魔術師のみです。さらに王都を覆う結界魔術師達は、何重にも身元確認がされているので裏で魔族と繋がるのは不可能です。その結論から今回のことは悲しいことであるが、偶然が重なり起きてしまったとの結論になりました」
「そんな……そんな偶然という言葉で片付けられることなのですか!」
「アーマン公爵、気持ちはわかりますが落ち着いてください……」
「どうしてこんなことに……」
俺は一体どこから選択肢を間違えたのか考えた。マリア王女と喧嘩した時にすぐに仲直りしておけば良かったのか? 創造神の加護なんて始めっから貰わなければよかったのか? それとも転生したことが間違えだったのか?
俺にはもうどこから正解でどこから間違っていたのか分からなくなってきた。
わからない……わからない……わからないわからない……わからないわからないわからない……わからないわからないわからないわからない……わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
脳がその一言で埋まり尽くし、そして発狂した。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「アーマン公爵! すみません!」
その声が聞こえた瞬間、俺は暗闇の中に落ちていった……
近衛騎士の数より魔物の方の数が倍以上多かったにも関わらず、皆余裕の表情で戦っていたので、かなりの戦闘経験があるのだろう。
魔物は王城の魔物図鑑で見てだいたい覚えている。
今回の魔物の群れの場合ゴブリン、コボルト、オークで構成されており、ゴブリンとコボルトは進化していなければ、一般人でも武器を持てば1対1なら勝てるほど弱い。
オークは鈍足で遅いが、力が強く一般人なら一瞬で叩き潰されてしまう。
なりたての冒険者がよく鈍足と言うだけで戦いを挑み力量を間違えて死ぬことが毎年1000件以上あることから、初心者殺しのオークと言われている。
この3匹に関しては繁殖力が高く放っておくと、魔物の王がすぐに誕生してしまうため、見つけ次第討伐が可能ならばした方が良いと本にも書かれていた。
そんなことを考えていたらもう最後の1匹になっていて、すぐに首が切断され死亡していた。
ナザリーさんは返り血をほとんど浴びずに竜車の中に入ってきた。
「お待たせしました。魔物の血でほかの魔物がよってくる前に移動してしまいましょう」
「オークの肉とか持ち帰らなくていいのですか。とても美味しいと本で書かれていた気がするのですが……」
「アーマン公爵を王城まで送ることが最優先ですので」
ナザリーさんはそう言うとすぐに移動の指示を出し、部隊が動き出した。
「魔法陣の話の途中だった気がしますが、どうしてアーマン公爵を王城に連れてくるように命令されたかの経緯を、話してよろしいでしょうか」
そうだ、マリア王女のことで問題が起きたから呼ばれていたのをすっかり忘れていた。
魔物を直接見るのは前にも何回かあったが、ここまで綺麗に戦っているのを見るのは初めてで、すっかりその事ばかりに考えがいっていた。
「そうでした。お話をお願い致します」
「はい。実は王城に魔族が入り込みアーマン公爵を暗殺しようと侵入した際、カナリア王妃とマリア王女に目をつけられ襲われました……」
「マリア王女が襲われた?! 大丈夫なんですか!」
自分が魔族に目をつけられたために、マリア王女とカナリア王妃が襲われるとは思っていなかったため、動揺してしまった。
「落ち着いてください。殺される寸前にガジル騎士団長が間に合い何とか守ることが出来たそうです……」
「そうですか……」
生きていることにホッと安心した。
「ですが、マリア王女様は魔族に襲われたことによる恐怖がトラウマになってしまい、いつ襲われてもおかしくないと思ってしまったようで、自分の部屋から出なくなってしまったのです」
「そこで僕を呼びどうにかしてトラウマを無くして欲しいと?」
「その通りです。マリア王女様はもう少しで学園へ通わなければならないため、すこしでも早くこの問題を解決していただきたいとアルバーン国王陛下は願っています」
アルバーン国王陛下は学園に通わせなければいけないためと表面上では言っているが、一人の娘の父親として心配なのだろう。
「僕にマリア王女を説得する自信はあまり無いですが、精一杯頑張ります」
「マリア王女は近衛騎士団員からしても妹や娘のような存在です。アーマン公爵しか頼れる人はいません。どうかよろしくお願いします」
ナザリーさんは深々と頭を下げてきた。
それだけマリア王女が周りの人から慕われていることに何故か俺も誇らしかった。
「はい。それでなぜ魔族が入って来たのですか? 確か王都は協力な結界で覆われていて魔族は侵入出来なかったはずでは?」
「対魔族用の結界は10年に1回、貼り直さなければいけない時期があります。そして張り直す時には既に張ってある結界を消さなければなりません。そのタイミングで魔族が襲撃してきたのが、偶然重なったしまった結界このようなことになったのだと思います」
「偶然……ですか……」
「はい。結界の張り替えについては超重要機密なのでそのタイミングを知っているのは、アルバーン国王陛下と王城に務めている結界魔術師のみです。さらに王都を覆う結界魔術師達は、何重にも身元確認がされているので裏で魔族と繋がるのは不可能です。その結論から今回のことは悲しいことであるが、偶然が重なり起きてしまったとの結論になりました」
「そんな……そんな偶然という言葉で片付けられることなのですか!」
「アーマン公爵、気持ちはわかりますが落ち着いてください……」
「どうしてこんなことに……」
俺は一体どこから選択肢を間違えたのか考えた。マリア王女と喧嘩した時にすぐに仲直りしておけば良かったのか? 創造神の加護なんて始めっから貰わなければよかったのか? それとも転生したことが間違えだったのか?
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「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「アーマン公爵! すみません!」
その声が聞こえた瞬間、俺は暗闇の中に落ちていった……
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