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執事コンテストと亀裂。
執事コンテストと亀裂㉜
しおりを挟む同時刻 サンシャイン
その頃結人たちは、水族館を全て見終えナンジャタウンへ来ていた。 ナンジャタウンというのは、サンシャインの中にあるテーマパークだ。
先に料金を払えば、中にある乗り物やアトラクション、何でも遊ぶことができる。 ナンジャタウンには結黄賊みんなと過去に来たことがあるため、柚乃をリードすることができた。
これまで結人は特に男としての役目を何も果たしていなかったため、一応一安心する。 それにしても、ここは家族連れが多い。 だがそんなことは、今の結人には関係なかった。
「じゃあ次は鳥を育てるヤツをやろう!」
先刻夜月からアドバイスを受けて以来、何故かテンションが上がっていた。 きっとそれは夜月にハッキリと物を言われ、自分の気持ちがスッキリしたからだろう。
「鳥を育てるの?」
「そうそう。 鳥の世話をして、どんどん成長させていくんだよ」
この遊びは結黄賊のみんなとやった結果、優が一番成長させることができた。
―――やっぱりゲームでも、人の性格とかって出んのかな。
柚乃はこのアトラクションが初めてのため説明を聞き、ゲーム開始となった。
「柚乃、俺たちからあんま離れんなよ」
「うん」
「じゃ、俺と柚乃さんはペアってことで、ユイが俺たちに負けたら飲み物奢りな!」
「え? ちょ、待てよ」
これから楽しもうと思っていたところで、突然夜月から勝負をしかけられる。
「もし俺たちが負けたら、俺が奢るからさ」
優しい顔をしながらそう言うと、結人の返事も聞かずに彼は柚乃と共に人ごみの中へと消えていった。
―――・・・ついさっき、柚乃に『俺たちから離れんなよ』って言ったばかりなのにな。
―――勝手に行かれちゃ困るぜ。
夜月に柚乃を一人占めされた気分になり、先刻までテンションが高かったはずが急に下がってしまう。 そんな自分に自虐的に笑い、結人も人ごみの中へと足を進めていった。
―――まぁ・・・とりあえず、成長させていくか。
近いものから順に鳥を成長させていく。 25分くらい経って、やっと1歳まで育てることができた。
―――鳥の性格は金銭小鳥・・・か。
鳥の性格はコロコロと変わっていく。 自分が行う育て方により、鳥の性格も変わっていくのだ。
次の場所へ移動しようと思い歩いていると、突如目の前に夜月たちが現れた。
「おぉユイ。 丁度よかった、ちょっとこっちへ来いよ」
軽く手招きをする夜月に付いて行くと、彼は一本の木が立っている目の前で立ち止まった。
―――ん・・・室内なのに木?
名を見てみると『聖なるツリー』と書かれてある。 これは二人プレイ専用らしい。 説明を見るとこう、書いてあった。
『お互いが手を繋ぎ両側の天使の象に触れ、二人の相性によってツリーが光り輝き相性の強さに応じたエナジーをもらえる』
―――つまりツリーの輝きが強い程、二人の相性はいいってことか。
「これがどうしたんだよ」
特にこんなものには興味がなく、少し嫌そうな表情をして夜月に尋ねる。
「さっき俺と柚乃さんでやったんだけど、あまり相性がよくなかったみたいで強く光らなくてさ。 だから今度は、柚乃さんとユイでやってみてほしいなって」
「はぁ? ・・・そんなの、結果が出たら出たで気まずくなるだけだろ」
彼の申し出に即否定の言葉を述べた。 悪い結果だと当然気まずくなるし、仮によかったとしても互いにどんな顔をしたらいいのか分からない。
―――こんなことをやって、柚乃は嫌な気持ちにはならないのか?
「もし悪かったとしても、俺と柚乃さんの相性がよくなかったんだから別に何も思わねぇだろ」
そう言いながら、夜月は結人の腕を引っ張り柚乃と無理矢理手を繋がせた。
「おい」
そんな彼を止めようとするが、結人の発言を全く聞こうとしない。
「それじゃ、天使にターッチ!」
「・・・」
そして、天使に触った――――結果。
「・・・うわ、すげぇ光ってる」
そう――――夜月の言った通り、目の前のツリーは物凄く輝いていた。
「まぁ、よかったじゃんか」
夜月はそう言って笑っているが、結人は反応がしにくい。 柚乃の方を、まもとに見ることができなかった。
この装置は本当の相性を占っているわけではないと分かっているが、何故か柚乃との相性がよかったという結果が出て安心する自分もいる。
―――何をやってんだろうな・・・俺。
「まぁ、エナジーをたくさんもらえてよかったわ。 んじゃな」
気まずい空気に耐えられず、結人はそれだけを言ってそそくさと夜月たちから離れていった。 背後からは、夜月と柚乃の楽しそうな会話が聞こえてくる。
―――柚乃は、喜んでくれてんのかな。
―――それならまぁ・・・いいかな。
結人は嬉しい気持ちを少し持ち合わせたまま、再び鳥を成長させていく。
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