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御子柴からユイへの想い。
御子柴からユイへの想い⑯
しおりを挟むその頃、結人は御子紫を連れて目的地まで歩いていた。 相変わらず彼は俯いたままで何も話そうとはしてこない。
「・・・御子紫」
「・・・」
何も返事はこないと分かっていながらも、言葉を続けていく。
「今日で、終わらせてやるから」
「・・・え?」
その言葉に少しでも反応してくれた御子柴。
「今日で全てを終わらせるから。 ・・・今まで、御子紫に苦しい思いをさせちまってごめんな」
「ッ・・・」
またもやその言葉に一瞬反応するが、結人に対しては何も言ってこない。 そしてその発言を最後に二人の間には沈黙が訪れた。
数分後――――気まずい空気の中、ようやく目的地に辿り着いた。 目の前には数人の仲間がいる。 命令通り動いてくれたことに安心した。
「お前ら、ちゃんと来ていたか」
その声にいち早く反応した未来は結人のことをキリッと睨み付ける。
「おいユイ! これは一体どういうことだよ。 ちゃんと説明しろよ!」
「・・・」
「どうして・・・ッ! どうしてコウたちに俺らの妨害をしろだなんて、命令したんだ」
―――・・・あぁ。
―――やっぱり、お前たちだったんだな。
未来たちの事情を確信しつつ、素直に謝罪の言葉を述べた。
「悪いな。 今日のためには、そうした方がいいと思って」
「ユイ! 日向が・・・ッ!」
優の苦しそうな声を聞き思わず日向のいる方へ目を向けると、彼は不良らにやられ、もがき苦しんでいる光景が目に入った。 優は――――いじめが大嫌いな少年だ。
いじめの現場を発見すると、いじめている相手がどんなに強かろうが自ら割って入りいじめられている人を必ず助けようとする。 彼は幼い頃からそういう性格のようで、とても優しい子なのだ。
だから今こうして、日向が悪かろうが見て見ぬフリをする状況はとても苦しいのだろう。 だけどそんな優の気持ちを分かった上でも、こう返すしかなかった。
「ごめんな、優。 今はもうちょっとだけ待ってくれ」
そう言うと、優は苦しそうな顔をして渋々黙り込んだ。
ここにいるみんなは未だに混乱している。 そこで結人は本当のことを打ち明けることにした。
「やっぱり、未来たちだったんだな。 日向をいじめていたのは」
「「・・・」」
未来と悠斗は黙り込みそれぞれ視線を結人から外していく。 その様子を見て軽く笑った。
「未来なら『日向をボコボコにしてやるー!』とか言って、アイツに暴力を振るうかもしれないっていうところまでは覚悟していたんだけど。 まさか御子紫にされたことをそのままやり返すなんてな。
もしかしてその案を出したのは、優を見習って考え付いた・・・悠斗の提案か?」
「・・・」
悠斗は何も言わなかった。 続けて結人は自分の事情を話していく。
「コウと優に、未来たちがしたことを妨害しろって命令したのは確かに俺だ。 その理由は・・・日向が御子紫に対してしているいじめを、止めたくなかったから」
今隣には御子紫本人がおりあまりこのことは言いたくない。 だが、伝えるのは今しかなかった。
「未来たちが日向をいじめていたら、御子紫に対するいじめが止まるかもだろ。 でも日向はそんな簡単にはいじめを止めない。
だからもしかしたら、いじめの標的が未来たちに変わっていたのかもしれない」
未来と悠斗に目配せをした後、御子紫の方へ視線を向けた。
「でも・・・今日という日を待つために、御子紫には今まで犠牲になってもらっていた。 今回の日向の件は全て俺から始まったというのに、今まで何もしてあげられなくて悪い。
御子紫の傍に付いていてやることもできなかった。 それに今日まで、たくさん苦しい思いをさせちまった。 だけどそんなことを分かっていながらも、俺は何もできなかった。 ・・・本当に、ごめん」
「・・・」
謝罪の言葉を述べるが、やはり御子紫は黙ったままだった。 そんな結人たちの会話に静かに割り込むよう未来がそっと口を開く。
「・・・どうして、今日まで待ったんだ?」
「今日が最適だったんだよ。 日向を懲らしめるには」
「「「?」」」
みんなはまだ理解していないようで、難しそうな表情を浮かべていた。 そんな彼らに苦笑をこぼす。
「いやほら、もう日向を懲らしめてんだろ。 ・・・見てみろよ」
そう言って、自分たちの少し先で不良たちにボコボコにされている日向を見た。 結人につられ、みんなも日向の方へ視線を移し――――皆一様に息を呑む。
結人の考えが彼らに伝わったのかは分からないが、悠斗が恐る恐る尋ねてきた。
「・・・どうして、ここが分かったの?」
その問いを聞いた後も結人は苦笑する。
「それは後で説明するよ。 ・・・まぁ俺は、最初からここがアイツらの溜まり場だっていうことは知っていたんだけどな」
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