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幼馴染の交差。
幼馴染の交差①
しおりを挟む入学式が終わり、校舎の案内や部活の紹介などで時間が過ぎていった。 藍梨と話す時間もあまりなく、日々ただ無為に時間が流れていく。 そんな中、事件は突然起こった。
高校に入ってから初めての休日。 事件はあの幼馴染二人を中心に台風のように回る。
休日 日中 電車の中
今日は高校生になって初めての休みの日。 陽気もいいということで未来は特に予定を立てていたわけでもなかったが、悠斗を誘って外へと出ていた。
立川の街は何となく分かってきたため、他の街も見てみようと今は電車で移動している最中だ。
「やっぱり横浜よりも人が多いなー。 どこ見ても人! 人! 人!!」
休日ということもあり、車窓の外はたくさんの人が行き交っていた。
「最後の言葉は普通心の中で思うものでしょ、どうしてわざわざ口に出して言うのさ。 ・・・でも未来は東京の方が似合ってるよ」
悠斗は笑いながら突っ込みを入れる。 駅同士の間隔は短いため、あっという間に目的地へと辿り着いた。 電車から降り、行く当てもなく適当にぶらつき街の雰囲気を楽しむ。
観光地へ行ったり、有名なものを食べたり、遊んだり。 二人はこの休日をとても満喫していた。
だがここから――――今日の楽しい思い出を全てぶち壊すかのような、悲しい出来事が起こってしまう。
夕方 路地裏
今未来たちの目の前には五人の男集団がいる。 彼らの真ん中にはスーツを着たサラリーマンが怯えながらその場で立ちすくんでいた。
先程から内容を聞いているところ、どうやら彼らはそのサラリーマンにカツアゲをしているようだった。
正義のヒーローとまでは言わないし、男たちがサラリーマンに手を出したわけでもないのだが、未来はこういう行為を見過ごすことができない。
「行くの?」
そんな集団を睨むようにして見ていると悠斗がさり気なく尋ねてきた。
「分かっている。 喧嘩はしない。 ただ、止めに入るだけ」
今結人がいなく命令をもらえない以上、未来たちは彼らに手を出すことはできなかった。 そのことを理解しながらサラリーマンを助けようと未来は彼らに近付いていく。
悠斗はそんな未来を見届けようと黙って後ろを付いてきていた。 彼らは気配に気付いたのか面倒くさそうに振り返る。
「何だよ。 チビガキはあっちへ行ってろ」
「ッ・・・」
確かに未来は結人よりも、他の結黄賊の仲間よりも身長が少し低い。 それはコンプレックスでもありガキ扱いされてもおかしくないとは思っている。 だが今の身長は165cmだ。
悠斗も未来とあまり変わらない。 というより張り詰めたこの緊張感の中でコンプレックスである身長を指摘されては、未来の感情を煽るだけだった。
―――コイツら、年下だと思ってナメてやがるな。
「そういうの、止めた方がいいんじゃないっすか?」
未来は苛立ちを抑えながら止めに入ったが、彼らにその怒りが伝わってしまったようで少しずつ距離を詰めてきた。 だが未来と悠斗はその場から一歩も動かず、代わりに少し顎を引く。
―――やられる。
瞬時に未来はそう思った。
「悠斗」
「?」
「俺がここで時間を稼ぐから、今のうちに交番を探して警察を連れてこい」
当然この発言は男たちにも聞こえているのだろう。 だが未来は決意した。 “今喧嘩ができないのなら、自分が犠牲となってでもコイツらの今の行為を止めたい”と。
「・・・でも」
迷っているのか悠斗はここから動かなかった。
―――・・・まぁ、俺の性格だとコイツらに手を出すとでも思ってんだろうな。
心の中でそう思い自虐的に笑う。
「何だよ、俺たちとやる気かぁ? チビガキのくせに俺たちに勝てると思ってんの? 逃げるなら今のうちだぜ」
流石に男もあまり大事にはしたくないのか、大人しく帰るよう促してくる。 それでも未来はこの場から逃げる気はなかった。
「悠斗、大丈夫だって。 俺は喧嘩はしない。 絶対に」
それでも悠斗はまだ迷っていたが、意を決したのか小さく頷いた。
「未来、気を付けて」
その一言を言い残し悠斗はこの場から走り去っていく。 未来はそれを聞いて少しだけ安堵の表情を浮かべた。
「あ、おい待て!」
まさか本当に警察を呼びに行くとは思わなかったのか、集団の一人が声を荒げて呼び止める。 当然悠斗は素直に立ち止まるわけもなく、ひたすら前へと走り続けていた。
彼らはすぐに役割を決め、今いる集団のうち二人が悠斗の後を追いかけていく。
―――悠斗、無事に逃げ切れるかな。
幼馴染のことを心配しながらも目の前にいる彼らに意識を集中させる。 残りの人数を見る限り未来一人でも十分に勝てる状況だった。 だがここで手を出したら最悪停学を食らってしまうだろう。
無論、それ以上にルールを破るわけにはいかない。 結黄賊のリーダーである結人も黙っていてはくれない。
―――まぁでも相手が無傷のまま喧嘩を終わらせることができるから、コイツらが警察に訴えても無駄だとは思うけど。
自分は彼らよりも圧倒的に強者だ。 そう思うと少し心に余裕が生まれた。 とはいえ殴られれば痛いし怪我もする。
「お前、どこの学校だよ」
―――は?
―――どうしてそんなことをお前らに言わなきゃなんねぇんだよ。
ここで学校名を言ってしまうと当然高校に連絡がいってしまうため答えることはできない。 だからその問いに対して一切口を開かず黙っていた。
「素直に言ったら、お前を解放してやるぜ?」
―――何を言ってんだか。
―――素直に言ったら学校に連絡がいっちまうじゃねーか。
気持ち悪いくらいにニヤニヤとしている男に嫌気が差し更に睨み付けた。 だがその行為は逆効果だったようで男はわざとらしく舌打ちをする。
「どうしても、言わねぇっていうんなら・・・」
目の前にいる男は更に距離を縮め未来に向かって勢いよく拳を突き出してきた。
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