心の交差。

ゆーり。

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校外学習と過去の因縁。

校外学習と過去の因縁⑯

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翌日 校外学習最終日 日中 海


鎌倉に広がる、青くて綺麗な海。 校外学習3日目の夕方には立川へ帰るため、今日は学年の全員海での自由行動だった。 班は関係なく、自由。 
海に入って泳いだりしている者もいれば、白くて美しい砂浜で遊んでいる者もいる。 もうすぐで夏休みを迎えようとしている今の季節に、とてもピッタリだった。
「藍梨」
そんな海を静かに見つめている藍梨の姿を発見し、結人は彼女のもとへと近寄る。 藍梨がその声に気付き顔を向けてくると、優しく笑い言葉を綴った。
「こんなに綺麗な海、藍梨と二人きりで来たかったなー」
「え?」
「なーんて」
その発言に素で驚いた彼女を見て、結人は苦笑しながら自分に突っ込みを入れる。 そして、続けて尋ねかけた。
「藍梨はさ、夏休み・・・俺と一緒に横浜に来るだろ? それとも、静岡に帰りたいか?」
「横浜へ行く!」
それには笑顔で即答してくれ、思わず笑みがこぼれる。 藍梨のことは、結人の両親には伝えてあった。 
藍梨という彼女ができたことと、今年の夏、結人の家に泊まらせるということを。
「藍梨ちゃんー! 一緒に海に入ろう!」
突然、クラスの女子が藍梨に向かってそう声をかけてきた。 そんな友達にも、笑顔で対応する。
「うん、行くー! 愛ちゃんも行こう!」
そう言って近くにいた同じ班員である愛を連れて、海の方へと走っていった。 すると藍梨を呼んだクラスの女子が、今度は結人に向かって声を上げてくる。
「色折くんー! しばらく藍梨ちゃんを、お借りしまぁーす!」
「おう!」
笑いながらそう言ってきた女子に、結人も笑ってそう返した。 それを聞いた彼女も走って海へ駆けていく姿を見送っていると、突然隣に未来が現れる。
「ユイー! チームで集合写真を撮るから、ユイも来いよ」
「もちろん」
チームというのは、当然結黄賊のこと。 外ではその名を簡単に口にはできないため、チームということで話は通っていた。 
未来と一緒に仲間の方へ足を進めていると、ふと疑問に思ったことを口にする。
「あれ、そういや撮る人は?」
「あぁ、伊達に頼んだよ」

―――伊達・・・か。

未来の言った通りカメラを持っている伊達に、今度は話しかけた。
「だったら伊達も一緒に入れよ」
「いや、俺はどのチームにも所属していないから写るわけにはいかないよ」
「・・・そっか」
その誘いをやんわりと断られ、これ以上は無理に何も言えなくなる。
「ユイと夜月は真ん中なー!」
「並び順はー?」
「そりゃあ一列だろ! あ、あとはみんな背を向けたヤツも撮りたいな!」
近くからは仲間のそのような会話が聞こえ、結人はいつも通りだと安心し胸を撫で下ろした。 そんな彼らに交ざり真ん中へ行くと、伊達はカメラを結人たちへ向ける。
「じゃあ撮るよー! ハイ、チーズ!」

「撮ったヤツは、後でみんなに送るなー!」
何枚か撮り終えた後、御子紫は伊達からカメラを受け取りそう言葉を発した。 そして写真の後は、未来が次にすることを提案する。
「なぁ! みんなで砂の城を作ろうぜ!」
「いいな、それ!」
「賛成ー!」
「だったら勝負しねぇー? 二つのチームに分かれてさ!」
その案は通り、今度はチーム分けとなった。
「いいよ。 チーム分けはどうする?」
「文化祭でやったダンスチームでよくね?」
「えー。 また俺コウと分かれるの・・・?」
「優、今くらい我慢しろよ」
「それじゃあやるぞ! 位置について、よーい・・・ドンッ!」
御子紫の声により、仲間たちは一斉に作業に取りかかる。 
そんな彼らの光景を優しい目で見つめながら結人も交ざろうとすると、目の前に夜月がゆっくりと歩いている姿が目に入った。

「夜月!」

「?」

思わず夜月を呼び止めてしまうと、当然彼は振り返ってくる。 
「あぁ、えっと・・・。 昨日の、ことなんだけど・・・」
自分がどうして呼び止めたのか分からず、覚束ない口調で言葉を紡ぎ出した。 その様子を見て、夜月は複雑そうな表情を見せながら返していく。
「あぁ・・・。 俺のせいで、ユイが琉樹さんにいじめられていたっていう話?」
「まぁ・・・。 それもある」
「・・・悪い。 今はそれ、話したくない」
結人から視線を外しそう口にした彼に、慌てて口を開いた。
「そっか、そうだよな。 いいよいいよ、俺こそ悪い。 俺もそんなに、気にしていないし」
「あぁ、またいつか話すよ。 というより・・・実は伊達にも、俺とユイの過去のことを聞かれてな」
「え・・・。 伊達に?」
その言葉に、小さく頷く。
「だから伊達がいる時に、ユイにも話すよ」
「・・・分かった。 それまで、待っているよ」
本当のことを言うとやはり結人も過去のことが気になっていたため、夜月にそう返事をした。 ここで一度話が途切れると、少し遠くから仲間の声が聞こえてくる。
「ユイ、早く!」
「おい夜月! サボるなよ、夜月も手伝え!」
それぞれのチームである悠斗と未来から呼ばれ、結人と夜月は互いに苦笑を見せながら仲間のもとへと駆け寄った。

「で、これは誰が判定すんの?」
チームの中に交ざると、早々に口を開き悠斗にそう尋ねる。
「伊達に決めてもらうよ」
―――あぁ・・・伊達。
またもやここでその少年の名を聞いた結人は、砂で城を制作しているみんなを楽しそうに見つめている伊達に声をかけた。
「どうした? ユイ」
「伊達はこの夏、何か予定は入っているのか?」
「予定? いや、旅行とかは決まっていないけど・・・」
そう返してきた彼を、早速誘ってみる。
「じゃあさ、今年の夏は横浜に来ないか? 俺たちの地元にさ」
「え、いいのか?」
「もちろん。 藍梨は俺の家に泊まらせるし、真宮も他の仲間の家に泊まらせる予定。 だから伊達も真宮と同じで、そうしたらいい。 きっとみんなも喜ぶぜ」
笑顔でそう口にすると、伊達は不安そうな表情で言葉を返した。
「いや、でも・・・。 それは流石に迷惑なんじゃ」
「そんなことねぇよ。 コイツらが迷惑に思うはずねぇだろ。 俺たちはおそらく夏休みの間ずっと横浜にいるけど、伊達は一週間くらいでもいいわけだし」
「んー・・・。 いや、なら俺も横浜にずっといたいかな。 立川は遊び飽きたし」
「歓迎するよ」

これで伊達も、横浜に誘うことができた。 この校外学習では、それぞれに色々な壁があったらしい。 
結人の知らないところで、御子紫はいつの間にかコウたちとより仲よくなっているし、北野と椎野も喧嘩していた。 そしていつの間にか、夜月も琉樹と再会している。
色々なハプニングがあったが、今日で何とか校外学習を終えることができた。 今回もまた仲間同士で助け合い、解決することができたのだ。

そして――――次からは、夏休みに入る。


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