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文化祭とクリアリーブル事件。
文化祭とクリアリーブル事件⑦⑨
しおりを挟む―――さて・・・残り二人の意見も聞いていくか。
感情的になって暴走してしまいそうな仲間に何とか聞き終えた後、残りの悠斗と夜月に尋ねようとする結人。
ベッドに安静にして座っている悠斗の方へ目をやると、彼は少し俯いて複雑そうな表情をしていた。
今は身体のこともありあまり負担をかけたくないのだが、悠斗の意見も聞きたいため申し訳ない気持ちを持ち合わせたまま口を開く。
「じゃあ・・・次は悠斗。 悠斗は、どう思う?」
「・・・」
尋ねると、更に俯いて表情が見えなくなってしまった。 その行為を見て、彼に話を振ってしまったことを後悔する。
―――やっぱり・・・悠斗に聞いたのはマズかったか。
―――真宮に実際刺された身だし、本当の気持ちなんて言いにくいもんな・・・。
そう思った結人は夜月に話を振ろうかと迷っていると、一人の少年がそっと口を開き言葉を放した。
「・・・悠斗。 俺なんかに構うな。 気を遣わなくていい。 だから、思っていることを素直に言え」
静かでなければ聞き取れない程に、小さな声で発した少年――――未来の発言を聞いて、悠斗はゆっくりと顔を上げ彼のことを見た。
―――なるほど・・・未来がいるせいで、堂々と意見が言えなかったのか。
そして――――少しの時間を置き、悠斗は意を決したかのように口を開いて言葉を発する。
「俺は・・・真宮の命令を聞かなかったことについては、悪いと思っている」
ここにいるみんなはその言葉だけに集中し、黙って彼の発言に耳を傾けた。
「真宮の命令を素直に聞いていたら・・・こんなことには、ならなかった。 俺たちが動かないでいたら、こんなにも被害は出なかった。
だから・・・俺は、真宮のことは責めたりしない」
「ッ・・・」
当然、その意見に反応をしたのは未来だ。 彼は自分が暴走しないよう歯を食いしばり、拳を強く握り締めてこの場を何とか耐え切っている。
―――やられた身の悠斗も、真宮を許す・・・か。
そして更に時間を置き、再び口を開き言葉を発した。
「でも俺は・・・未来と行動を起こして、よかったとも思っている」
「「「?」」」
それを聞いた瞬間、ここにいるみんなは頭の上にハテナマークを浮かべた。 それを感じ取ったかのように、悠斗はゆっくりと続きの言葉を紡いでいく。
「だって・・・未来と動いていなきゃ、このクリーブル事件は一段落していなかったから。
みんなには迷惑をかけたけど・・・俺たちが行動を起こしたからクリーブル事件は前に進んで、俺たちのおかげで、この事件は一段落したとも言える。 俺は、そう思っている」
その言葉を聞いた瞬間――――ここにいる何人かは、心の中で安堵したことだろう。 だって、自分の意見を言いつつも――――最終的には、未来の味方についたのだから。
そして――――当然結人も、そう思っていた。
―――そう・・・悠斗も、それでいい。
―――未来の意見ばかりを聞いて行動するものいいけど・・・ちゃんと、自分の意志も持っていないとな。
悠斗からの意見を聞き終えた後、最後の一人である夜月に話を振った。
「悠斗、ありがとな。 それじゃあラストは、夜月。 夜月はどう思うんだ?」
尋ねると、ここにいるみんなは一斉に夜月の方へ注目する。 そしてみんなからの視線を感じながら、彼も言葉を紡いでいった。
「・・・俺も、真宮を許す。 みんなと同じで、真宮の立場に自分がなったら・・・俺も、そうしていたのかもしれない。
真宮が今まで抱え込んでいた苦しい気持ちに気付けなかったのも、悪いと思っている」
未来や御子紫からの痛い視線を身体で感じ取りながらも、負けじと続けていく。
「真宮が選んだ、椎野、ユイ、悠斗・・・。 コイツらを選んだ理由は、もし怪我を負わせた奴が自分だとバレたとしても、許してくれると思ったからだろ?」
「ッ・・・! そうなのか?」
その発言に御子紫は突っ込みを入れるが、彼は構わずに言葉を紡ぐ。
「結黄賊を守るため。 そして、藍梨さんを守るため・・・。 そう言ったら、許してくれると思ったんだろ。 今も実際、真宮のことを許しているわけだし」
淡々とした口調で、更に言葉を発していく。
「許してくれると言ったらコウだろうけど、コウは喧嘩が強いし気配もすぐに感じ取りやすい。 だから攻撃をする前に気付かれて、コウは駄目だと思った。 ・・・そうだろ?」
「・・・」
真宮に向かって尋ねるが、彼は目をそらし何も答えようとしない。 だが夜月は返事を求めていないのか、最後に自分の気持ちをもう一度打ち明けた。
「だから・・・真宮が選んだ3人は、間違っていないと思う。 だって、俺がもし真宮の立場だったら・・・俺もその3人を、狙っていただろうから」
―――夜月も、真宮を許す・・・か。
―――ということは、許していないのは未来と御子紫だけだな。
そして自分の意見を言い終えた夜月は、結人に向かって話を振った。
「それじゃあ本当のラスト。 ユイは、どう思っているんだ?」
そう言葉を発すると、皆一斉に結人に注目する。 突然話を振られ一瞬戸惑うが、結人の意見は既に決まっていた。
ここにいる彼らに向かって、静かな口調で一つのことを尋ねかける。
「もし俺が、藍梨がやられるくらいなら俺は死んだ方がマシって言ったら・・・お前らは怒るか?」
「「「ッ・・・」」」
その一言でみんなが反応したことを機に、結人は自分の思いを吐き出していく。
「俺は結黄賊のリーダーだ。 当然、仲間のことを信じなければならない。 だから俺は、真宮のことを許す」
「ッ、おい待てよ! 今はそんな道理にかなっている場合じゃないんだぞ!」
聞いてすぐさま反論してきた未来に、冷たい口調で言葉を放った。
「リーダーの命令を聞かずに、勝手に行動していた未来が言えることかよ」
「ッ・・・!」
彼がその発言を耳にして言葉に詰まったことを確認し、話を続けていく。
「未来は、俺たちのために役立つことをしてくれるから、今まで自由な行動を許してきた。 実際今回も、有力な情報を手に入れてくれたわけだし、助かったと思っている」
そして更に、自分の意見を主張した。
「だからそう考えると・・・真宮が今までしてきた行為も、許さないといけない。 未来だけ許して真宮は許さないだなんて、俺にはそんなことができない」
「・・・」
その言葉を聞いて反論できなくなった未来を見て、二人のことを交互に見ながら言葉を発する。
「許していないのは、未来と御子紫だけだ。 ・・・お前らは、どうしたら真宮を許してくれるんだ?」
「「・・・」」
二人は結人から目線をそらし、言葉を発さずに沈黙を守り続ける。 そんな彼らを見かねて、溜め息交じりで小さく呟いた。
「じゃあ・・・真宮に結黄賊を、辞めさせるか」
「や、そこまでは・・・ッ!」
「ならどうしたいんだ?」
「ッ・・・」
すぐ反応した御子紫に強く言い返すと、彼は再び俯き出し言葉を発さなくなった。 そしてそんな御子柴を代弁するよう、未来はそっと口を開き静かな口調で言葉を紡ぎ出す。
「真宮は・・・しばらく、結黄賊としての行動を慎んでほしい。 俺たちと一緒にいるのはいいけど・・・もし抗争とかまた起きたら、その時は関わらないでほしい。
その間・・・今まで自分がしてきたことを、反省してくれれば」
―――・・・なるほどな。
―――未来としては、いい意見だな。
彼の意見に反対するところもないと思い、結人は仲間に向かって命令を下した。
「よし。 未来の意見を採用しよう。 真宮にはしばらく、結黄賊としての行動を慎んでもらう。 いいな?」
その言葉に真宮が小さく頷いたことを確認し、更に言葉を続けた。
「でもしばらくは、抗争は起きないと思う。 クリーブルの連中も、少しは大人しくなるだろ。 でもだからと言って、真宮を仲間外れにするのは俺が許さねぇぞ。
いつも通り普通に接してやれ。 ・・・分かったな」
こうしてクリアリーブル事件は、一度幕を閉じた。
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