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みんなでキャンプ。
みんなでキャンプ④
しおりを挟む数時間前
未来は今、悠斗と藍梨と一緒に行動を共にしていた。
「未来くんたちは、これからどこへ行こうとしていたの?」
「釣りはあんまり好きじゃねぇから、適当に歩いて散歩でもしていようかなーって」
「そうなんだぁ」
彼らは特に行きたい場所もなく、地図がなくて道も分からないため、適当に歩いて冒険でもしようと思っていた。 その上この中に女性も入るとなると、華があって盛り上がる。
折角結人が作ってくれた、藍梨と一緒になれたチャンスなのだ。 だけどそんな中、悠斗は彼女と一緒に会話していた。
「藍梨さんは自然好き?」
「うん、好き!」
―――・・・でも、悠斗に取られるのはそれもそれで嫌だな。
そこで未来は、伊達の話を持ちかけてみる。
「ねぇ藍梨さん。 藍梨さんは、伊達のことをどう思ってんの?」
「ッ・・・」
突然のその問いに、彼女を挟んで隣にいる悠斗は少し驚いた顔をした。 きっと“どうしてそんな話を持ち出したんだ”と思っているのだろう。
―――まぁいいだろ。
―――俺たちの話よりも、伊達の方が共通のネタに使えるんだから。
「うーん、直くんかぁ。 直くんは、結人と少し似ているよね。 優しいし、いつも気を遣ってくれるし」
想像していた通りの返事に、更に深く問い詰めてみる。
「伊達は確かに優しいけど、一番優しくしているのは藍梨さんだけかもよ?」
そしてその発言に対しても、すぐさま返事をした。
「え、そうなの? そんなことは絶対にないよ! 直くんは誰にでも優しいって分かるよ、いつも遠くから見ていてもそう思うもん。
みんなにはいつも笑って話しかけているし、さり気ない気遣いもできるし、本当に紳士みたいで・・・」
―――ん・・・え・・・?
―――ちょっと待てよ、それって・・・。
「だからね、直くんは私にだけ優しいってことはないと思う。 誰にでも、みんな平等に優しいんだよ」
そう言って彼女が満足気に微笑む中、未来は一人思った。
―――藍梨さん、もしかして伊達から好意を持たれているっていうことに、気付いていないのか・・・?
ふと悠斗の方を見ると、苦笑いをしながら彼女の話に相槌を打っていた。 悠斗もきっと、同じことを思ったのだろう。
「藍梨さんは鈍感ってか、何ていうか・・・」
「え、何?」
「ん? いや、何でもねぇよ」
―――しまった、油断していたせいで口を滑らせた。
―――・・・まぁいいか、藍梨さんには聞こえていなかったみたいだし。
だが再び悠斗の方をちらりと見ると、彼は目を細くして未来のことを見据えていた。
―――何だよ。
―――言いたくて言ったんじゃねぇし、別にいいだろ。
そんな彼に対してそっぽを向いていると、今度はその悠斗が口を開く。
「あ・・・。 違うところ、行こうよ」
「あ? 違うところ?」
突然そう言われ、顔を正面へ向けて道を確認した。 目の前には、100メートル程の長い橋がかかっている。
―――あー、なるほど。
―――悠斗は高いところが苦手なんだよな。
「でもこの距離くらい、大丈夫だろ? そんな高くもねぇし、この橋は丈夫そうだし」
「いや、でも念のためにさ」
「何が念のためだよ。 藍梨さんを目の前にして、弱いところを見せてもいいのかー?」
「悠斗くんは高いところが苦手なの?」
未来がニヤニヤしながらそう言うと、藍梨が会話に割って入る。
「まぁ、多少は平気だけど好きではないかな・・・。 そういう藍梨さんは、高いところ平気?」
「高いところは私も好きじゃないよ、怖いし。 でもこのくらいの高さなら大丈夫かな」
藍梨は橋に乗り、見下ろしながらそう口にした。
「よし! それじゃあ話は早いな。 このくらい耐えろ、悠斗」
「・・・ん。 分かったよ・・・」
彼が渋々OKしたのを確認し、3人で橋を渡ることになった。 思い切り橋の上でジャンプをしたり走らない限りは揺れないし、このくらいなら悠斗でも大丈夫だろう。
「悠斗くんは高いところが苦手で、未来くんは怖いものが苦手なの?」
さり気ない彼女の問いに、未来たちは答えていく。
「そうだよ」
「つか、藍梨さん俺が怖いもの苦手ってこと、聞いていたのかよ」
「そりゃあ、あんな大きな声で言われるとね」
「あぁでもね、藍梨さん。 その逆に、俺は怖いものは平気で未来は高いところが平気なんだ」
「そうなの?」
「そそ。 簡単に言うと、俺は絶叫系は好きだけどお化け屋敷とかは苦手。 悠斗はその逆ってことさ」
「本当に二人は正反対なんだね」
そんなことを話しながら、未来たちは橋を渡り終えた。 悠斗の様子を見る限り大丈夫そうだ。 無事渡り終えたことに安心したのか、彼は安堵の表情を浮かべていた。
―――まぁ、悠斗が途中で『もう無理』とか言ったら、引き返そうとは思っていたけどな。
そして未来は――――見てしまったのだ。
橋を渡り終え――――未来たちから少し離れたところにいる――――一人の、少女の姿を。
「・・・出た」
「ん? 何が出た?」
―――悠斗たちには見えていないのか?
―――だって・・・だって、あの子は・・・。
「で、で・・・! 出たあああぁぁあああぁぁッ!」
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