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みんなでキャンプ。
みんなでキャンプ③
しおりを挟む数時間前
河へ着き、御子紫は早々はしゃいでいた。 そんな光景を見て、結人は優しく微笑む。 これはいつもと変わらない日常だ。
だがこの時は釣りをする気分ではなかったため、どうしようかと思い適当に周辺を歩き回りながら考えていた。
―――んー、どうしようかな。
―――みんなが釣りしているところを、離れた場所から見ていようかなー・・・。
―――・・・ん?
―――あれはコウと優か?
そんなことを考えていると、コウたちが山の中へ入ろうとしているのを偶然見つけた。 そんな彼らを大きな声で呼び止め、二人に尋ねる。
「二人はこれからどこへ行くんだ?」
「釣りはあまり好きじゃないから、違うことをしようかなって。 ここは山で食糧が採れるんだって。 山菜とかキノコとか。
だから魚はみんなに任せて、俺たちは別行動しようかなと思ってさ」
コウの丁寧な説明に、結人も興味本位で彼らに近付く。
「へぇ・・・。 それ、俺も付いていっていい?」
「え? いいけど・・・。 藍梨さんは?」
「あ・・・」
優のその言葉を聞き、一瞬戸惑いを見せた。 確かに藍梨も連れて行きたいが、流石に『山の中は嫌だ』と言いそうだ。 そこで辺りを見渡すと、藍梨は伊達の近くにいた。
そして更に周りを見渡すと、未来と悠斗がさり気なくみんなから離れていくのを発見する。
「未来! 悠斗!」
二人を呼び止めた後、結人は藍梨のもとへと近付いた。
「んー? 何だよユイ」
未来たちは呼ばれたことにより、結人のいるところへ一度戻って来てそう口にする。 そんな彼らに、一つ頼み事をした。
「二人で今からどこかへ行くんだろ? だったら、藍梨も一緒に連れていってくんね?」
「それは構わないけど、ユイはどこへ行くんだ?」
「俺はコウたちと山ん中へ行ってくる。 藍梨も釣りとか山ん中とかは苦手だろうから、未来たちに任せたいんだ」
「あぁ、ならいいぜ」
「藍梨もいいだろ?」
念のため、隣にいる藍梨にも確認を取る。
「うん、いいよ。 結人気を付けてね」
「ん、さんきゅ。 じゃ、藍梨を頼んだぞ」
未来たちに彼女を任せ、結人は彼らから離れた。 未来だけだと心配だが、悠斗もいればきっと大丈夫だろう。
「お待たせ。 それじゃあ、早速行こうか」
コウたちのもとまで戻り、3人で山の中へと入っていく。 そこも、河と同じで人が多かった。 まずは空いている場所を見つけられるのだろうか。
そこで結人は、ふと思った肝心なことを口にする。
「そういや、ここにあるものは全部食えるのか?」
「いや、全部じゃないと思うよ。 図鑑とか資料は持っていないから、携帯とかで調べないといけないんだけど。
でも多少は分かるから、分からなかったら俺に聞いて」
「ふーん・・・。 分かった」
彼らにつられ結人も携帯を取り出し、電波が届くかを確認する。 どうやら一応届くようだ。
―――それじゃ、俺も調べながらやるかな。
人がいない場所まで歩き、しばらくそこで採ることになった。
そして、数十分後――――3人で黙々と作業している中、結人は何気なく二人に向かって話を振る。
「なぁー。 二人の出会いを、俺に詳しく教えてよ」
「えー? 何だよ急に!」
優はそう言うが、顔を見る限りどうやらそれを聞かれて嬉しいようだ。 この流れに逆らわないよう、彼に食い付いていく。
「いいじゃん! 二人はどうやって出会ったんだよ。 コウから話しかけたんだろ?」
「そんな昔のこと、今はどうでもいいよ」
だがコウは興味ないようで、冷静な口調でそう返してきた。
「でも優は、その過去を大事に思っているらしいぞ」
「・・・でも俺には、どうでもいいんだ」
コウは何も話そうとはしてくれないため、もう一度優に聞くことにする。
「優ー。 教えてくれよ、最初コウは優に何て声をかけたんだ?」
そう聞くと、彼は嬉しそうな顔をしてこう答えてくれた。
「『君、カッコ良いね』って、言ってくれたんだよ」
“君、カッコ良いね”
この言葉が、今の優とコウを繋いだものなのだ。
―――いい一言だな。
―――優がコウに言っていそうな言葉だけど、これは逆なんだな。
その言葉について、詳しく聞き出そうとしたその瞬間――――続けて優が、口を開く。
「ユイは、夜月とはどういう出会いだったの?」
「え、俺?」
「うん! だって、中学の時よく一緒にいたでしょ?」
「・・・」
優にそう問われるも、結人はその質問には答えられなかった。 いや――――答えたくなかったのだ。
「・・・別に、俺の話はいいよ」
「どうしてー? 俺だって、少しは話してあげたじゃん!」
「だーかーら、俺の話はいいんだって」
そう――――結人と夜月の過去は、あまりいいものではないから。
だから今でも仲のいい二人には、聞かせたくなかったのだ。 そして優との会話が途切れてしまい困っていると、コウがこちらの方へ近付いてくる。
“フォローでもしてくれんのかな”と思っていたが、彼は予想外の言葉を結人に向かって口にした。
「・・・ちょ、ユイ! そのキノコは食べられないよ。 つか、それ毒キノコ」
「ん・・・。 え? ちょ、マジで!?」
「どう見てもその写真と違うだろ」
そう言いながら、結人の携帯の画面を覗き込み指を差しながらそう言う。 今この画面には、食べられるキノコの写真が多く並んでいた。
「でもよく見てみろよ! 形とか模様とか、全部一緒じゃん!」
「色が完全に違うじゃん。 ・・・色は重要だよ、ユイ?」
苦笑いをしながらそう言ってくるコウに、結人は強がったように愚痴をこぼす。
「何だよ・・・。 毒があるもんを、山に植えるんじゃねぇッ!」
そんなこんなで――――たくさんのものを採り終えることができ、3人はみんなのもとへ戻ることにした。
「お、ユイいたいた!」
「何それ美味そう! 全部食えんの?」
「うん、食べられるよ」
「マジで!? 楽しみー」
「北野たちは魚取れたの?」
「うん、たくさん」
みんながコウたちの持ってきた食糧を見ながら盛り上がっている時、結人はふと気が付いた。
「あれ。 みんな、藍梨知らねぇ?」
そう尋ねた瞬間、ここにいるみんなは一斉に結人の方へ注目する。
「あぁ、そうそう。 さっきからずっと見当たらないんだよ。 てっきり、ユイたちと一緒に行動しているのかと思っていたし」
―――・・・いや、俺たちとは行動していない。
「そういや、未来と悠斗も見ないよな」
「そうだな。 二人共どこへ行ったんだろう」
彼らのその会話に、結人は口を挟む。
「いや、未来たちと一緒に藍梨もいるはずだ」
「あ、そうなの?」
「二人が付いてんなら大丈夫じゃね?」
「その3人に連絡はしたのか?」
「藍梨さんには連絡したよ。 でも、電波が届かなかったんだ。 未来たちと藍梨さんが一緒にいるなら、未来たちにもきっと届かないと思う」
―――しまった・・・ッ!
―――3人は今頃、無事なのかな・・・。
そんな彼らの会話を耳にしながら、結人は一人懸念を抱いていた。
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