異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

文字の大きさ
上 下
191 / 243

191 王都 3(別視点)

しおりを挟む
* 別視点 ポール side *

 王都に到着して3日が経った。

 今日はこれから叙爵の儀が執り行われる。
 いま私は、王城内、控えの間にいる。さすがに緊張する。

 コン、コン、コン。

ポール「どうぞ」
職員 「お時間です。ご案内します」
ポール「頼む」

 私は職員誘導され、ついて行く。向かう先は謁見の間。
 その大扉の前に着いた。

職員 「お待ちください」

 しばらく待つと・・・

 コン・・・コン。
 謁見の間内側から合図があった。

 おお扉が開く。

職員 「ポール・カベスカ殿、入場」(大きな声)

 通路の左右には多くの貴族がいる。
 私は玉座に向かって歩みを進めた。
 そして国王陛下の前でひざまずきき、こうべを垂れる。

国王 「おもてを上げ、起立せよ」

ポール「御意ぎょい

 私は顔を上げて立ち上がる。

宰相 「奏上そうじょう」(大きな声)

宰相 「ポール・カベスカ殿の功績を申し上げます。
    サンローラの発展、キララ発掘、スラム解消、村の開拓、
    砂糖の製造、国家に有益な発明品の献上、料理レシピの献上」

宰相 「この功績に相応しき爵位を任命すべきと進言いたします」

国王 「国王ルイ・タマイサの名において、
    ポール・カベスカを子爵に任命する」

ポール「御意、謹んで受命いたします」

 パチパチパチ・・・
 拍手が起こる。

宰相 「爵位章、任命書、恩賜おんし目録の授与」

 私の横に職員が二人現れた。
 えりのラペルホールに爵位章を着けてもらい、任命書と恩賜目録を受領した。

宰相 「ポール・カベスカ子爵、退場」

 私は陛下に一礼したあと、きびすを返して退場する。
 謁見の間の大扉が閉まった。

 叙爵の儀が無事に終了した。

     *

 謁見の間では引き続き領主との謁見がある。
 そのあと通常であれば貴族が集まり、お茶会になるのだが、今回は大広間でお茶を飲みながらの歓談になるらしい。
 そして大広間でサンローラの特産品が披露される。
 私は大広間に向かった。

 大広間に入ると妻のクレアが待っていた。

ポール「リリーはどこだ?」
クレア「あそこにいます」

 リリーは貴族の子供達に囲まれていた。
 子供達は、娘が持っている黒猫のぬいぐるみが気になり注目しているようだ。

 大広間には、式典に参加出来なかった貴族の子息や令嬢がいる。
 特産品を見学している者や歓談している者、遊戯盤ゼンセンに興じている者もいる。

ポール「正式に叙爵した。子爵だ」
クレア「おめでとうございます。あなた」
ポール「ありがとう。これが任命書だ」
クレア「拝見します」

 任命書は革製の豪華な装丁になっており、開くと左に任命書、右に記念メダルと恩賜の品名が記されている。

ポール「お茶にしよう」
クレア「はい」

 私はクレアから任命書を受け取った。そして空いているテーブルに向かう。
 リリーが私たちに気付いて、一緒について来た。

 私たちが着席すると職員がワゴンを押して来た。

職員 「お飲み物は、いかがでしょうか?」
ポール「コーヒーはあるか?」
職員 「はい。ございます」
ポール「ではコーヒーを、砂糖とミルク入りで」
クレア「わたくしは、カフェオレを、砂糖入りで」
リリー「ここあ」
職員 「かしこまりました」

 飲み物が配り終わると・・・

職員 「お菓子は、いかがでしょうか?」

 ワゴンには数種類の菓子が乗っている。サンローラでは見慣れた菓子ばかりだ。

ポール「リリー、チーズケーキがあるぞ」
リリー「たべたい」
クレア「わたくしも」
ポール「チーズケーキを三つくれ」
職員 「かしこまりました」

 チーズケーキが配られて、職員は下がった。

ポール「うん、コーヒーがうまい。街と同じ味だ」
クレア「チーズケーキも美味しいですわ」
リリー「おいしい」

 コーヒーとケーキはサンローラと変わりない。さすが王城だけのことはある。

ポール「リリー、先ほどぬいぐるみが注目されていたようだな」
リリー「うん、かわいいって」
ポール「そうか、それは良かったな」
リリー「うん」

     *

 謁見を終えて貴族達が大広間に入ってくる。
 やはり、サンローラの特産品が気になるようだ。

 貴族達は熱心の特産品を見て、説明書を読んでいる。
 食材で注目されているのが、卵と砂糖だ。
 通常、卵を入手するには、野鳥の卵を採取する。定期的に入手はできない。
 そのため高級食材になっている。
 砂糖は、外国からの輸入に頼っている。こちらも高級品の扱いだ。

 食材以外で注目されているのが、キララ、遊戯盤ゼンセン、そろばんだ。

 今回、キララは小さな窓枠にはめ込んで展示したある。
 板ガラスはこの国で生産していない。製造方法も不明、当然高級品だ。
 王城でさえも、全ての窓を板ガラスにすることはできない。
 多くの貴族にとって、板ガラスの窓は憧れだ。その代替品のキララに注目が集まるのは当然と言える。

 遊戯盤は、陛下がたしなむと言う話が伝わっている。
 これから社交の場で必要になることを多くの貴族が理解しているはずだ。

 そして、計算道具のそろばんも多くの貴族が熱心に見ている。
 領の運営、税収の計算業務に必要なのは明らかである。
 そろばんは、ギルドだけではなく、各領主も導入するに違いない。

     *

 大広間に人が増えてきた。



 私たちは中庭に行くことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...