44 / 44
先行投資・俺だけの人。
・
しおりを挟む
*
まとまってみれば、今までが嘘のように樹の腕が心地よい。
ここが、私の居場所なんだと再認識する。
私が安らげる居場所なんだ、と。
樹が、私の誰よりも〝大切〟な人間なんだ、と。
結局、あの後、樹は私がギブアップというまで私の身体を抱き続けた。
今までの離れていたぶんを、補うかのように。
おかげで、こっちは、情事が終わった後も未だに樹のものが入っているような気がしてならないのに。
樹は、情事の最中、何度も私に愛していると囁き、きつくその腕の中に閉じ込めた。
愛情という名の、檻に。
隣に視線をやれば、樹はむにゃむにゃ、と、口元に笑みを浮かべながら、幸せそうに私を抱いて眠っていた。
その腕は、しっかりと私の腰に回されており、簡単に腕からは逃げられそうにない。
まったく。
「樹…」
小さく、樹の名を呟く。
名前を呼んだだけで、ドキドキする。
今まで散々抱き合ったのに、昨日よりも、もっとずっと、樹に対してドキドキと胸が高鳴る。
たぶん、明日はもっと、樹にドキドキするんだろう。
ずっと、ずっと。毎日樹へのスキが大きくなっていくだろう。
樹。
私の、樹。
私の大事な…、恋人。
「いつき…、」
やんわりと、樹のパジャマを握り閉めながら、樹の胸板に顔をよせる。
くしゃり、と、シャツにしわがよった。
「好きだよ…、お前が…」
「…愛してる、は…?」
ぱち、と、開かれた瞳。にやり、と上がる口角。
「また狸寝入りだったのか?」
そう問えば、樹はすりすり、と、私の頬に顔をよせる。
全く…。
狸になったり、わんこになったり、忙しいやつだ。
樹は、上目づかいで、私を見つめながら、甘えたように、
「愛してるって言ってほしい」
と強請る。その口調が、まるで、玩具がほしいといっている、子供のような口調で。
いくつになっても、甘えたな樹にくすりと微笑む。
「甘えただな…」
そういいつつも、クスクスと笑いながら、樹の手を取り、唇を重ねる。
口づけた後、樹に視線をやると、樹は嬉しそうに私を見つめていた。
一生、私はこのわんこに叶いっこない。
愛している。
ほかの、誰よりも。
誰よりも、愛しすぎて、愛おしい。
私の息子で、恋人で、甘えたなわんこ。
「ね、公久さん、ちゅーしよ…」
「…ああ」
やんわりと手を握る。指までからめて。
そっと、キスを交わす。
キラリ、と樹と私の薬指にはめている指輪が視線に映った。
まとまってみれば、今までが嘘のように樹の腕が心地よい。
ここが、私の居場所なんだと再認識する。
私が安らげる居場所なんだ、と。
樹が、私の誰よりも〝大切〟な人間なんだ、と。
結局、あの後、樹は私がギブアップというまで私の身体を抱き続けた。
今までの離れていたぶんを、補うかのように。
おかげで、こっちは、情事が終わった後も未だに樹のものが入っているような気がしてならないのに。
樹は、情事の最中、何度も私に愛していると囁き、きつくその腕の中に閉じ込めた。
愛情という名の、檻に。
隣に視線をやれば、樹はむにゃむにゃ、と、口元に笑みを浮かべながら、幸せそうに私を抱いて眠っていた。
その腕は、しっかりと私の腰に回されており、簡単に腕からは逃げられそうにない。
まったく。
「樹…」
小さく、樹の名を呟く。
名前を呼んだだけで、ドキドキする。
今まで散々抱き合ったのに、昨日よりも、もっとずっと、樹に対してドキドキと胸が高鳴る。
たぶん、明日はもっと、樹にドキドキするんだろう。
ずっと、ずっと。毎日樹へのスキが大きくなっていくだろう。
樹。
私の、樹。
私の大事な…、恋人。
「いつき…、」
やんわりと、樹のパジャマを握り閉めながら、樹の胸板に顔をよせる。
くしゃり、と、シャツにしわがよった。
「好きだよ…、お前が…」
「…愛してる、は…?」
ぱち、と、開かれた瞳。にやり、と上がる口角。
「また狸寝入りだったのか?」
そう問えば、樹はすりすり、と、私の頬に顔をよせる。
全く…。
狸になったり、わんこになったり、忙しいやつだ。
樹は、上目づかいで、私を見つめながら、甘えたように、
「愛してるって言ってほしい」
と強請る。その口調が、まるで、玩具がほしいといっている、子供のような口調で。
いくつになっても、甘えたな樹にくすりと微笑む。
「甘えただな…」
そういいつつも、クスクスと笑いながら、樹の手を取り、唇を重ねる。
口づけた後、樹に視線をやると、樹は嬉しそうに私を見つめていた。
一生、私はこのわんこに叶いっこない。
愛している。
ほかの、誰よりも。
誰よりも、愛しすぎて、愛おしい。
私の息子で、恋人で、甘えたなわんこ。
「ね、公久さん、ちゅーしよ…」
「…ああ」
やんわりと手を握る。指までからめて。
そっと、キスを交わす。
キラリ、と樹と私の薬指にはめている指輪が視線に映った。
0
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ヤンデレのタグがあったので、読み始めてみたら見事にハマってしまって
1日で全部読んじゃいました笑
リクエストなのですが、蒼真がどタイプすぎて
蒼真と結ばれるifルートみたいなものをかいて欲しいです!
地雷だったら全然無視して下さって構わないです!