先行投資

槇村焔

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先行投資・俺だけの人。

3※

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「やめろ…樹、」
「嫌だよ」
「なに…」
「なんで、辞めなきゃいけないの?」
「…っ、」

私の言葉も聞かず、樹は私の服を脱がしにかかる。
ひょろひょろとした華奢な私だ。
樹は簡単に私を抑え込み、抵抗を封じる。

万歳のような両手をあげるポーズを作ると、私が着ていたシャツでひとくくりされ、ベッドの端にまとめられた。
樹を睨むと、樹はくすくすと、顎に手をあてて笑った。

「なにを…するんだ…」
「わからない?鈍感だね…。裸にしているんだよ?
お風呂じゃないんだから、犯すに決まっているじゃない…?今まで散々抱き合っているのに…、わからないの?」
「犯す…?」
「うん、犯すの。無理やり抱くんだよ。今から」
「そんな…馬鹿な」

そんな、出来るわけない。樹はそんな人間じゃない。そんな無理やり抱く、なんて。
私の反応を窺っているだけなんだろう?
浮気したと勘違いしているから…。

「樹、馬鹿なこと言うのは…」
「馬鹿なこと?俺が公久さん犯すのが馬鹿なことなの?出来ないと思っているの?」
「…ひゃっ…」

ごりごり…と、膝で私の下半身を刺激する樹。
びくん、と身体が大きく跳ねる。

「どうしたの…?公久さん…」
「―っ!」
「ここ…こんな風に膝でぐりぐりされて気持ちいいの…?ねぇ…」

にこにこと笑いながら、ぐりぐりとそこを撫でまわされる。
痛い…痛いのに…。
力を入れられれば潰されそうになる恐怖と相まって、切ないほどの甘い疼きが駆け巡る。
もどかしい感覚が、身体を伝っていく。


「ほら…たってきた…ねぇ、公久さん気持ちいいの…?こんな風にされて…」
「馬鹿な…ことは…、」
「そんなこといっても…公久さんだっていいんでしょ?虐められて嬉しいんでしょ?
じゃなかったら、ここをこんな風にしないもんねぇ…?」
「…っ!」
「ここ、ズボンからでも形がはっきりとわかるよ…?」

大きく膨らんだそこはもはや隠しようがない。
こんな苛まれて反応してしまうなんて…。
樹はしばらく膝でそこを撫でまわし、刺激を送り続けた。
こんな足でされたことなんかないのに…、わたしのものは、樹の刺激にゆるゆると熱を持つ。


「気持ち良い?公久さん」
「さいあく…だ…っ、」
「そう…じゃあ今度は直接弄ってみようか…?」
「え…な…」

大きく足を広げられる。樹は私の広げた足と足の間に陣取る。
これじゃあ樹がいて、足が閉じられない。

それどころか…反応したあれまでもまじまじと見られてしまう。
じたばた、と足を動かしてみたが、樹の拘束はとけない。

樹は私のズボンを下ろしていく。
下着までも一緒に脱がされ、既にダラダラと雫を流しているものが露わになった。

「ずくずくだね…」
「ふざけ…」
「ふざけるな…?なに、言ってんの?」

樹はそう呟きペニスをそっと愛撫する。
やんわりと、包み込んで、小さく動かす。

「っつ…」

いつも同じ愛撫。慣れ親しんだそれに、身体はあっという間に反応してしまう。
樹は私のそんな反応を見つつ、溢れるカウパーを指先に絡ませていく。

樹の長い指先が濡れる度、私の口からは喘ぎ声が漏れた。
こんな…したくないのに…。


「すっごい出るね…。浮気してたのに…」
「…してな…」
「キスしたところ、溟が見ているんだよ?」

冷ややかな視線で言い放つ樹。
結局、樹は進藤君のことばかり信じるんだな。
キスはされた。された…けど…。


「キスはされた。でも、それ以上はされていない」
「どうだか…。俺だって、百貨店で公久さんと男が連れ立っているのみたんだよ…、誕生日だったのに…。なのに…」
「お…まえだって、進藤君と…、」
「溟がなに?俺はなんにもないよ。公久さんと違って」

飄々と言う樹が憎らしい。
なにもない、だと?進藤君は、樹に抱かれたと言っていたぞ?
何もないなら、どうして私に宣戦布告なんかしてくるんだ…

それに、今まで樹は朝帰りばかりしていたし…。
ふあんになるな、という方がおかしいだろう?


「そもそも、お前が…、」
「もういいよ…お喋りは。それよりもお仕置き、しなきゃ…」

樹の視線はまた私のペニスに戻った。
きっとわざとだろう、くちゅくちゅと厭らしい粘着音をたてながら、刺激する。
耳を塞ぎたいほどの音に、羞恥で顔が真っ赤になる。


「いつ…や…ぁ…」
「いや?ここは嫌って言っていないよ?ほら…、」
「んっ…」
「いい、でしょ…?公久さん」
「っんぁ…」

息遣いが荒い。ペニスも限界を示している。
悔しいけれど…早くイキたい。
もどかしいほどの快楽が、早く解放されることを望む。

「駄目だよ…」
「んぁ…、」

あと少しでいける、一歩手前で樹は、ぎゅっとペニスを握った。
もう少しで解放されると思ったのに…。
じわり、と目頭に涙がにじむ。


「いかせないよ…」

私のもので濡れた手を見せ付けるようにペロリと舐める樹。
まるで、私で遊んでいるかのような様子にかっと怒りが湧きあがる。


「馬鹿にするな…」
「いかせてほしいの…?」
「…っ、」
「ならいってよ、俺にいかせてほしい、って。俺の手で、いかせてほしいって。啼かせてほしいっていえよ…」
「誰が…言うか…」

いかせてほしい。
いつもだったら、年甲斐もなく、樹に縋っていただろう。
でも、今はどうしても嫌だった。こんな樹に縋りたくない。

抱かれたいなどと…プライドが邪魔をして言えない。
こんな、樹に…。


「悔しい?息子にこんなことされて…ねぇ、公久さん」
「ふざける…」
「公久さん…いつも…俺ばっか、欲しがっているね」

ふと、一瞬樹は寂しげな表情を見せた。

「俺…ばっか…」
「樹…」
「俺って、公久さんのなんなんだろうね…」

なんなんだろうね…?
なんなんだ…?
私が、知りたい…。


「公久さん」

私の首筋に顔を埋める樹。
そのまま、舌でそこをなぞり、歯を立てる。

「いた…っ…」
「痛いの?」
「ふざけるな…、なにを…」
「なに、って、俺の痕。ちゃんと俺のものってつけないと。ねぇ、公久さん…もう、新しい彼氏のところに戻れないんだよ…。公久さんは、ずっと俺のものなんだから…」

樹は私の髪を一房掴んで、口づけを送る。


「戻れないんだよ…」

まるで自分にも言い聞かせるように放たれた言葉。
もう、戻れない。後戻りはできない。
そういっているようだった。

もう…樹とは元の関係に戻れない…。



絶望にも似た感情が、私を襲った。

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