槇村焔

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2章

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まりんだけしか、愛を捧げられないのなら。
まりんだけしか、狂えないのなら

「忘れなよ、僕で。僕の身体で」

 身につけていたネクタイを素早く外して、押し倒した仁さんの両手を縛ると、テーブルの端へとくくりつけた。
元気な仁さんであれば、僕を簡単に押し返すことは容易だったかもしれない。


しかし、、今の仁さんは病み上がりで体力もなく、非力な僕でも押し倒せた。
やるならば、今しかない。


僕は仁さんの身体に馬乗りになり、仁さんのズボンのチャックを開け、そこに眠っていた仁さんのものをとりだした。
まだ勃起していないなのに、それは大きく膨張しており、触ればどくどくと熱く脈打っていた。

まるで、生きている〝生物〟みたいだった。
普段見ている自分ものとは違う形状に、しばし目が奪われる。
そして意を決すると、僕は、仁さんの脈打つペニスをそのまま口へとふくんだ。

「…おいっ、」

ここまでくればさすがの仁さんもまずいと思ったのだろう。
ただごとでない状況に、ジタバタと病み上がりの体で精一杯抵抗しはじめた。

「駿っ」
「仁さんの…僕のと違うね。凄く…熱い……んっ…っ」
苦々しいものが口に広がる。

僕は男の性も不完全だから標準サイズはわからないが、男の身体って本当はこんなに逞しいんだろうか。
それとも、身体も大きい仁さんが特別なのだろうか。

仁さんのものを全部口に含むには、不馴れな僕にはなかなか難しかったけれど、一心不乱にそれを舐め続けた。

仁さんから溢れる白濁が、僕の手を汚していく。
次第に仁さんの身体は小刻みに揺れていった。

与えられる快感に耐えるように、きゅっと結ばれた口元は、とてもセクシーで男らしくて…。
こんな仁さんにとっては最悪な状況なのに、僕は興奮が収まらなかった。

心と身体は裏腹なのか、次第に仁さんのものは、僕の与える刺激を喜ぶかのように涙を零していた。
男だから刺激さえすれば感情を伴っていなくても反応する。愛してなくても反応する。
これは自然の生理現象なのである。
それでも、僕の愛撫に反応してくれたことが嬉しくて、舌で嘗め回すのを早くしてみる。

夢中で仁さんのものを刺激する僕と、腰を捻り逃げようとする仁さんの攻防戦が続く。

「ふん…んん…」
「やめろ…駿…」
「仁…さ…ん」
上目づかいで、仁さんを伺えば。

「…っ、」

仁さんが眉間に皺を寄せて、息を詰まらせる。
きつく瞳を閉じて、仁さんが大きく震えた。
と、同時に。
顔に熱いものが出された。
僕の顔を滑るように白濁が、落ちていく。


うっすらと唇を開きながら、仁さんを見あげた。
「仁さんの…」

ペロリ…と口端についていた白濁を舐め上げる。
仁さんは、そんな僕をじっと見つめていた。
何かを、観察するかのように。
それまで、拒絶し抵抗していたのをやめて、僕を見ていた。


「仁さん」
「駿」
「ちょっと、待ってて」

僕は一度、顔に出されたものを近くにあったティッシュでふいた。

そしてまた放心したままの仁さんの身体に跨り、羽織っていた上着を落としていく。

まりんのように柔らかな胸もない僕の身体を、仁さんはじっと見つめていた。


「あまり、見ないで・・・」
「駿」
「仁さん、あのね。僕の身体、女のようにも抱けるんだよ。目を瞑っていたら、女の子でも抱いているように抱けるんだよ」


 仁さんの着ていたシャツのボタンを外していく。
顕になった仁さんの肉体は、大人の男の身体をしていた。
胸元に耳をやれば、トクリトクリと、仁さんの心臓の音が聞こえてくる。

「まりんのように、抱けるんだよ」
「駿」

「僕を抱いて。僕を〝代わり〟にしてください。お願いだから…」


 この思いに気づかなくてもいいから。
今は、なにもかも忘れるくらい、めちゃくちゃに犯してほしい。
 


 仁さんのものが完全に勃起するのを確認し、仁さんを受け入れる部分に指を入れる。

「ーっ、」

初めてほぐすそこは、自分の指だというのに未知のものが侵入してくるようで怖かった。
それでもスムーズにここを使うには、ちゃんとここを柔らかくしないと僕も仁さんも気持ちよくなれないらしい。

 昨日買ったばかりの潤滑油がわりのクリームを持っていたバックから取り出し、恥部に塗る。
勝手に濡れてくれたらよかったのだが、あいにくそんな便利な身体ではなくて。
自分であらぬ場所を自分で解すという羞恥と戦いながら、仁さんを受け入れる準備をした。
一通り自分で中を弄った後、ゆっくりと仁さんのペニスを僕の奥まった場所に挿れた。

「…っ、」

圧迫感に、息が詰まる。
熱いどくどくと滾るペニスは、皮膚が火傷してしまうかのように熱く僕を蕩けさせる。

僕の中に仁さんがいる。そのことが嬉しくて、痛い筈なのに笑みが毀れた。
僕は慣れるまで、仁さんのものが、僕の中に馴染むまでまった。

「動く……ね…、んん…」
当然、じんさんからの返事も、突き上げもない。

「あ…、じんさん…じんさんっ」

それでも、僕は腰を動かし続け、初めての仁さんとのセックスに酔いしれた。



熱を二人でわけあうのが、こんなに熱くなるものであると初めて知った。

女のように抱いてほしかった。
まりんとの濡れ場をみたときから、ずっと思っていた。
仁さんが抱く相手が僕だったらいいのに…って。
そして、今僕は夢だった仁さんに抱かれている。


下からの突き上げがないことに目を瞑り、必死に快楽を追う。
夢がかなってうれしい筈なのに…何故だか、涙が一筋毀れてしまった。

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