また出会えたらその時は

華月

文字の大きさ
上 下
120 / 146
騒乱編

118.飛んで火に入る…③

しおりを挟む
※軽くですが襲われてる描写があります。苦手な方ご注意!



───────────────────


「防御系の魔法ですか? 解いては貰えないんですよね?」
「解くわけないでしょう」
「ですよね……。仕方ない。これはとっておきたかったんですが……」

 はぁ、とため息をついて胸元から取り出したのはペンダント状の魔石。大きめの石が、きらりと煌めいた。
 そのペンダントを首にかけると、再び俺に触れようとしてくる。動く足をバタつかせながら抵抗するけど、足を掴まれてしまった。

「!?」
「ふふ、これ、ロラン王子の魔力入りなんです。彼の魔力の性質に、私もあやかれるんですよ。」
「魔力の……性質……?……あ!」

 もしかして、あれか!? 魔法無効化されたアレ! あれが魔力の性質だとして、それをあやかるというなら……俺、ヤバいじゃん……
 さっと血の気が引く。これは本格的にまずい。まずいけど俺は身動きが取れない。

『レオ、やばい、ベルモンド伯爵にも魔法効かない……』
『ごめ、あと少しで着くから……!』

 場所は分かっているようだった。もう少しで着くって言葉を信じる他ない。 

「ああ、そんな怯えた顔をしないで……。私は貴方を愛したいだけなんですから。」
「俺はあんたに愛されたくない。ていうかそもそも目的はなんなんだ。当事者なんだから、それぐらい知りたいんだけど?」

 目的を知りたいのもあるけど、こうなりゃ引き伸ばし作戦だ! たぶんバレてるだろうけど!

「まぁ、そうですね……教えてあげましょうか。知っていただいた方が私の本気度が伝わるでしょうし。」

 そう言って俺の足を、膝を曲げてふくらはぎと太腿を合わせて固定するように片足ずつ縛り、伯爵はテーブルに座った。

「本当は貴方をこのままブランシャールへ連れて行って、ロラン王子と二人で貴方を愛そうと言う話だったんですけど……彼は牢ですし、どうしましょうかね。」
「え、ロラン王子と二人でって……」
「そのままの意味ですよ? 一妻多夫にて愛そうと計画していたんです。」
「それ、俺の気持ちは丸無視ってわけか。」
「幸せにしますから大丈夫ですよ。」

(何も全然大丈夫じゃねえ!!)

「さて、足も辛いでしょうしさっさと済ませましょうか。」

 伯爵は、ずい、と腕を伸ばして俺のボタンのない上着から覗いているシャツのボタンを一つ一つ外すと、するりと手を滑り込ませてきた。

「やめろ……!」
「滑らかな肌ですね。……殿下によく愛されておいでで。薄明かりでもわかるぐらいだ。」

 どうしよう、誰か、

「あ」

 そこでふと、馬車で言われたことを思い出した。


『俺は今、お前の幸せのためだけにここにいる』


 あ、桐矢! 桐矢はどこにいんだ!?
 レオも、桐矢なら俺を守ってくれるって言ってた。だったら、呼んでもいいか!?

「桐矢ぁ!!!!!!!」

 腹の底から思いっきり叫ぶ。


 しーん…

「……っ」
「どうしました? 殿下じゃない男の名を呼ぶなんて、貴方も中々魔性の男ですね。」

 そう言って俺の乳首をくにくにと弄んで、股間をふにっと触られた。

「ひ、っ」
「さすがにこれだけじゃ勃ちませんか。」

 今度は、乳首を舐めようとしているのか胸元に近づいてきた。

 嫌だ嫌だっ!! 気持ち悪い!!!
 誰がお前に触られて勃つかよ! 

「この……っバカ!!!」

────ゴッッッ

「いっ…………」

 渾身の力を込めて頭突きをすると、ものすごい音がして伯爵は頭を抱えて蹲った。俺もめちゃめちゃ痛かったけど、自分に回復魔法をかけたから平気だ。

 にじりにじりとソファの端によって伯爵から距離を取っていると、扉の外が騒々しい。何かなと顔を上げると、大きな音と共に扉が破壊された。

「海斗!」
「桐矢ぁ」
「ごめん、髭ジジイとその他殴ってたら遅くなった。」

 他にも手下がいたらしく、それをみんな殴って来たんだと言う桐矢はピンピンしていた。

「お前、こんな……っ!」

 桐矢は痛々しげに俺を見ると、足と手の縄を切って、自分の上着を着せてくれた。

「カイト殿……やんちゃもほどほどにしてください。こちらもあまり酷いことはしたくない。」
「げっ、復活した!」

 頭突きから復活した伯爵は、ピィッと指笛を吹くと、ニヤリと笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。 次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。 どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。 って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。

処理中です...