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騒乱編
97.生まれてきてくれて①
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それからの俺の行動は早かった。ジュリオやレオに助言を貰いながら、招待したい人間を選りすぐった。アヴィの助言を得たから準備も抜かりない。俺自身の交友関係を広げるための第一歩だからちょっと気合いが入っている。
そうして準備していたら目まぐるしく時間が過ぎていって、あっという間に当日……ではなく、レオの誕生日がやって来た。正直お茶会の準備で忘れかけていたのは内緒だ。忘れてないからセーフ。
「レオ誕生日おめでとう。」
「ありがとう。生まれてきてよかったと心底思うよ。」
レオはぎゅうぎゅうと俺を抱きしめている。……それはいいんだけど、今日俺は一体何をさせられるのかめちゃめちゃ気になるんだけど!
「レオ、今日はどうすんの……?」
「ふふ、気になる? 一日付き合ってね。」
にっこりとさわやかに笑うレオが、妙に印象的だった。
◆
「えーーい! 聖なる槍ッ!!」
空一杯に現れた槍達が、一斉に標的めがけて飛んでいく。土埃が舞った瞬間、標的である黒龍の断末魔の叫びが辺りに響いた。
『一日付き合って』と言われて来たのは、前に来た城の北西にある森だ。向かっている時点で察してはいたけど、魔物狩りをしようとのことだった。で、この黒龍に会ったのだ。
「はー……結構キツかったあぁ!」
「カイお疲れさま~!」
片手を上げて、レオとハイタッチをする。これは出会った頃から変わらず、魔物を倒した後に俺たちがやる一種のルーティンだ。
「はぁしかし、出来れば助けてやりたかったなぁ。」
「人を食いすぎたからね……味を覚えてしまったし、呪いが深く入り込みすぎてた。もっと苦しくなる前に死なせてやれたのが、せめてもの手向けになったんじゃないかな。」
「そうだといいけど……。ってか、こんな呪い掛けて本当に酷いわ。どこのどいつなんだか……ったく。」
今倒したのは、どこぞの誰かがかけた呪いのせいで人喰い龍になっていた黒龍だ。呪いが定着して膨張していたこともあって、浄化しても跳ね返されて逆に危ないかもしれないということで、殺すことが目標とされた。俺としては当然助けたかったんだけどね……。今回受けた依頼とは、無関係だし。まあ、さらに苦しむ前に逝けたというなら、それでよかったのかもしれないけど。
「でも久々の魔物狩りは、なんだかんだでやっぱり楽しいな!」
「ふふ、そうだね。よかった。あれ、あそこにもいるよ。」
「んぁ、ほんとだ。……行くよレオ!」
「ん♪」
なぜかレオも上機嫌で、今日のレオは驚くほど綺麗に舞った。剣舞でも見ているのかと思うくらいだ。
「あ、そうだ。レオ、剣を。」
「? ああ。」
レオが、俺に向けてすっと剣を差し出した。俺は剣に手をかざすと、聖魔法を纏わせる。リアル聖剣! なんてね。一回やってみたかったんだけど、俺では剣を振ることができないから、レオにやってもらったと言うわけだ。
「たぶんいけるはず。レオ、倒してみてよ~~!」
「いいよ!」
自分が作った聖剣がどんな感じかなと見たくなって、全部レオに丸投げしてしまった。最低野郎なのは自覚しているので言わないで欲しい。振り具合を見たいだけだから、もし危険になったら助けに入る準備はちゃんとできてる。
「はっ!!」
レオの見事な剣技で切り込まれていく。紛いなりにも聖剣、効き目はばっちりのようだ。すぐ作れるし、もしかしたら剣にとってもいいかもしれないからもう少し改良してみようかな。……なんて、敵と退治しているレオを前にもくもくと思案している俺であった。
そうして準備していたら目まぐるしく時間が過ぎていって、あっという間に当日……ではなく、レオの誕生日がやって来た。正直お茶会の準備で忘れかけていたのは内緒だ。忘れてないからセーフ。
「レオ誕生日おめでとう。」
「ありがとう。生まれてきてよかったと心底思うよ。」
レオはぎゅうぎゅうと俺を抱きしめている。……それはいいんだけど、今日俺は一体何をさせられるのかめちゃめちゃ気になるんだけど!
「レオ、今日はどうすんの……?」
「ふふ、気になる? 一日付き合ってね。」
にっこりとさわやかに笑うレオが、妙に印象的だった。
◆
「えーーい! 聖なる槍ッ!!」
空一杯に現れた槍達が、一斉に標的めがけて飛んでいく。土埃が舞った瞬間、標的である黒龍の断末魔の叫びが辺りに響いた。
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「はー……結構キツかったあぁ!」
「カイお疲れさま~!」
片手を上げて、レオとハイタッチをする。これは出会った頃から変わらず、魔物を倒した後に俺たちがやる一種のルーティンだ。
「はぁしかし、出来れば助けてやりたかったなぁ。」
「人を食いすぎたからね……味を覚えてしまったし、呪いが深く入り込みすぎてた。もっと苦しくなる前に死なせてやれたのが、せめてもの手向けになったんじゃないかな。」
「そうだといいけど……。ってか、こんな呪い掛けて本当に酷いわ。どこのどいつなんだか……ったく。」
今倒したのは、どこぞの誰かがかけた呪いのせいで人喰い龍になっていた黒龍だ。呪いが定着して膨張していたこともあって、浄化しても跳ね返されて逆に危ないかもしれないということで、殺すことが目標とされた。俺としては当然助けたかったんだけどね……。今回受けた依頼とは、無関係だし。まあ、さらに苦しむ前に逝けたというなら、それでよかったのかもしれないけど。
「でも久々の魔物狩りは、なんだかんだでやっぱり楽しいな!」
「ふふ、そうだね。よかった。あれ、あそこにもいるよ。」
「んぁ、ほんとだ。……行くよレオ!」
「ん♪」
なぜかレオも上機嫌で、今日のレオは驚くほど綺麗に舞った。剣舞でも見ているのかと思うくらいだ。
「あ、そうだ。レオ、剣を。」
「? ああ。」
レオが、俺に向けてすっと剣を差し出した。俺は剣に手をかざすと、聖魔法を纏わせる。リアル聖剣! なんてね。一回やってみたかったんだけど、俺では剣を振ることができないから、レオにやってもらったと言うわけだ。
「たぶんいけるはず。レオ、倒してみてよ~~!」
「いいよ!」
自分が作った聖剣がどんな感じかなと見たくなって、全部レオに丸投げしてしまった。最低野郎なのは自覚しているので言わないで欲しい。振り具合を見たいだけだから、もし危険になったら助けに入る準備はちゃんとできてる。
「はっ!!」
レオの見事な剣技で切り込まれていく。紛いなりにも聖剣、効き目はばっちりのようだ。すぐ作れるし、もしかしたら剣にとってもいいかもしれないからもう少し改良してみようかな。……なんて、敵と退治しているレオを前にもくもくと思案している俺であった。
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