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妖精編
83.恩を売ろう
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「はは、すまんすまん、この王子はからかいがいがあってなぁ」
「………………。」
レオの表情が絶対零度だよ!! 今夏だよ~~ッ!!
「レオも機嫌直せよ。な?」
「……あとで覚悟して?」
「ヒィ」
な、なんで、なんでだよ……舐められたからか? 不可抗力だよ……。もふもふ遊んでたのは事実だけど……。くそ、しょうがない、あとのことはあとで考えるとして、今はこいつ……ライだ。
「はぁ。で、ライはただ俺に会いに来ただけなの? なんか用事か?」
まあ一番の疑問はこれだよな。助けて貰って気に入ったからって、礼は愛し子認定で完了してるようなもんだし。だとしたらきっと、なんか用があるはずなんだよな。
「カイトに用があったわけではない。近くに用があって、ついでに癒されに寄ったんだ。」
「癒され……? は? さっきのもふもふ?」
「……まぁそうだな。」
「………………。」
「まあそう冷たい目を向けるな。癒されでもしなければやってられんのだ。」
ライは、はぁ~~っと長い溜息をついて頭を搔いた。よく見ると疲れた顔をしている。
「なんか疲れた顔してる。」
「わかるか? 疲れてるんだ。……そうだレオナルド、この件はお前にも関係ないわけではないから教えておいてやるが、近頃、この街の付近で妖精が消えている。……この意味がわかるか?」
急に真面目な声になったライが、レオに問いかける。妖精が……消えている?
「そ、れは……! この街の妖精は、多くが森の泉に住んでいるから……」
「ああ。すでに泉の淀みが始まっている。心しておけ。」
「はい、ご忠告痛み入ります。」
レオは居直って、腰を深く折った。さっきまでわちゃわちゃ言い合っていた奴らだとは思えない。すっかり蚊帳の外な俺だ。
「レオ、どゆこと?」
俺にも説明して欲しい、という顔をすると、レオはわかりやすく説明してくれた。
「この世界には妖精がいて、自然の深いところに集まるんだ。ガルダなら、森の中の泉に。そこで、泉の水を綺麗に保ってくれているんだけど……。そこの妖精が消えていると妖精王は仰った。数が減れば水の清潔さは保てなくなっていく。ガルダは家庭も田畑も泉から水を引いているから、このままだと淀んだ水が街に行くことになる。」
「それは……まずいだろ。ヘタすれば病気だって……」
「ああ。でもなぜ、突然妖精が消えるなどと……?妖精に何かあれば妖精王はわかるのではないのですか?」
ライは、わからない、といったように首を左右に振る。
「わかるにはわかるんだが……駆けつけた後にはもう遅くてな。よくわからんのだ。」
余りの情報の無さに、どうしようも無い感が漂う。行ってみたら何か分からないか……?
「レオ、街のことは放っておけないし、行ってみたら何かわからないか……?」
「カイ、でも……妖精のことにあまり首を突っ込んでは……」
レオは申し訳なさそうな顔をしている。妖精のごたごたには首突っ込んじゃダメなの?
「……俺は構わない。……というか、正直手詰まりだ。協力してもらえたら助かる。」
ライは意外にも、王なのにぺこりと頭を下げた。銀髪がさらりと零れる。
「俺、水を清潔にする魔法使えるかもしれないし。な? 行こ?」
「……あまり危険なことに首突っ込ませたくないんだけど。」
「……レオが守ってくれるんだろ?」
「上目遣いしてもダメ」
「ちっ…………てか、王様が頭下げてるんだぞ。行って恩売るのもアリだろ。」
レオはちょっと驚いて、少し考えると俺を見た。
「……アリだな。」
「おい、全部聞こえてるからな?」
ひとまず水質をどうにかしよう! あわよくば原因わかればいいな! というスタンスで、泉に向かうことになったのだった。
「………………。」
レオの表情が絶対零度だよ!! 今夏だよ~~ッ!!
「レオも機嫌直せよ。な?」
「……あとで覚悟して?」
「ヒィ」
な、なんで、なんでだよ……舐められたからか? 不可抗力だよ……。もふもふ遊んでたのは事実だけど……。くそ、しょうがない、あとのことはあとで考えるとして、今はこいつ……ライだ。
「はぁ。で、ライはただ俺に会いに来ただけなの? なんか用事か?」
まあ一番の疑問はこれだよな。助けて貰って気に入ったからって、礼は愛し子認定で完了してるようなもんだし。だとしたらきっと、なんか用があるはずなんだよな。
「カイトに用があったわけではない。近くに用があって、ついでに癒されに寄ったんだ。」
「癒され……? は? さっきのもふもふ?」
「……まぁそうだな。」
「………………。」
「まあそう冷たい目を向けるな。癒されでもしなければやってられんのだ。」
ライは、はぁ~~っと長い溜息をついて頭を搔いた。よく見ると疲れた顔をしている。
「なんか疲れた顔してる。」
「わかるか? 疲れてるんだ。……そうだレオナルド、この件はお前にも関係ないわけではないから教えておいてやるが、近頃、この街の付近で妖精が消えている。……この意味がわかるか?」
急に真面目な声になったライが、レオに問いかける。妖精が……消えている?
「そ、れは……! この街の妖精は、多くが森の泉に住んでいるから……」
「ああ。すでに泉の淀みが始まっている。心しておけ。」
「はい、ご忠告痛み入ります。」
レオは居直って、腰を深く折った。さっきまでわちゃわちゃ言い合っていた奴らだとは思えない。すっかり蚊帳の外な俺だ。
「レオ、どゆこと?」
俺にも説明して欲しい、という顔をすると、レオはわかりやすく説明してくれた。
「この世界には妖精がいて、自然の深いところに集まるんだ。ガルダなら、森の中の泉に。そこで、泉の水を綺麗に保ってくれているんだけど……。そこの妖精が消えていると妖精王は仰った。数が減れば水の清潔さは保てなくなっていく。ガルダは家庭も田畑も泉から水を引いているから、このままだと淀んだ水が街に行くことになる。」
「それは……まずいだろ。ヘタすれば病気だって……」
「ああ。でもなぜ、突然妖精が消えるなどと……?妖精に何かあれば妖精王はわかるのではないのですか?」
ライは、わからない、といったように首を左右に振る。
「わかるにはわかるんだが……駆けつけた後にはもう遅くてな。よくわからんのだ。」
余りの情報の無さに、どうしようも無い感が漂う。行ってみたら何か分からないか……?
「レオ、街のことは放っておけないし、行ってみたら何かわからないか……?」
「カイ、でも……妖精のことにあまり首を突っ込んでは……」
レオは申し訳なさそうな顔をしている。妖精のごたごたには首突っ込んじゃダメなの?
「……俺は構わない。……というか、正直手詰まりだ。協力してもらえたら助かる。」
ライは意外にも、王なのにぺこりと頭を下げた。銀髪がさらりと零れる。
「俺、水を清潔にする魔法使えるかもしれないし。な? 行こ?」
「……あまり危険なことに首突っ込ませたくないんだけど。」
「……レオが守ってくれるんだろ?」
「上目遣いしてもダメ」
「ちっ…………てか、王様が頭下げてるんだぞ。行って恩売るのもアリだろ。」
レオはちょっと驚いて、少し考えると俺を見た。
「……アリだな。」
「おい、全部聞こえてるからな?」
ひとまず水質をどうにかしよう! あわよくば原因わかればいいな! というスタンスで、泉に向かうことになったのだった。
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