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令嬢の恋編
71.アルマの家②
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「はぁ~~~~~……。もうそれは運命……ですわね……。なんて素敵なの。」
「来た瞬間殿下のお傍だっただなんて。しかも月の綺麗な晩に! 画になりますわねぇ。」
素を見せろ攻撃から一転、今度はやはり来たとしか言いようがないレオと俺の馴れ初めだ。言えそうなことだけ掻い摘んで話すと、この反応である。
「ほら、やっぱり夜会での直感は大当たりでしたわ。こりゃ無理だわって思いませんこと!?」
「「「誰でも思うはずですわ」」」
アルマもだいぶぶっちゃけている。いや俺は楽しいけれどね。アルマは傷自ら抉ってない? 吹っ切れてるなら大丈夫か?
「なんて顔されますの!? わたくし吹っ切れておりますから大丈夫です!」
ぷん! とそっぽを向いているけど楽しそうだ。それならなんも問題ない。よしよし。
「それにしても、今日のお衣装もこれまた……。噂には聞いていましたがすごいですわね。」
「この裏地、殿下の瞳のお色よね。すごい圧を感じますわ……。」
「上着の随所にも散りばめられていますね。カイト様、愛されておいでですね♡」
「う……。心配性なだけですよ、多分……。」
返答に困るからあんまり振らないで欲しいぞ。俺的にはこういうの全然気にならない……むしろこの独占欲みたいなの、嬉しく感じちゃうんだよね…惚気みたいだから言わないけど。
「あの浮いた話のなかった殿下がここまでなさるんですもの、相当愛されてますわよ。わたくしのところにも、ひょっこり誰か落ちて来ないかしら」
「いいですわね、突然始まる恋……! 本が一冊書けそうですわ。」
いや、俺達も出会ってすぐ恋……ってわけじゃないんだけどね? ん、いやでも、何も感じなかったわけではないから、恋に含まれるのかも?
ダリア嬢はアルマとシモーヌ嬢たちが話しているのをチラリと見てから、こそっと俺に話しかけてきた。
「いろいろお聞きしてごめんなさいカイト様。アルマ様からお話をお聞きして、どんな方なのかと気になってしまって。」
「アルマが……?」
「ええ、わたくしたちもアルマ様のことが心配だったのだけど、あの日、とてもスッキリしたお顔でわたくしに会いにいらして。カイト様に救われたのだと、お話をたくさんしていかれたわ。」
「救うだなんて、そんな大層なことは。ただ、話が出来るよう立ち回っただけで……。」
「彼女にとっては、それが重要だったということですわ。あれ以来、とても輝いていらして。わたくしも嬉しいのです。ありがとうございます。」
ダリア嬢は優しい目でアルマを見つめていた。きっと、ずっと支えていたんだろう。その横顔を見て、俺も嬉しくなった。
「でもやっぱり、彼女の力ですよ。城に来なかったら、私は気にもしていませんでしたから。」
「カイト様……。」
うん、やっぱりアルマの行動によるものだ。執念が彼女を城へ向かわせ、きっとそれに引き寄せられたんだろう。俺は。
「あ!」
ベルタ嬢が手をパンッと叩いて言った。
「ああ、そうでしたわ! お知らせしたいことがございましたの! ベルモンド伯爵が、カイト様にご執心らしいということを耳に挟みましたので、一応お知らせをば……と。」
「ベルモンド伯爵……。どこかで聞いたような。」
「あら、もしかしたらご存知かもしれませんね。夜会にいらしてましたから。」
夜会……そういえば、結構話した人がいたような。お酒飲んでたから曖昧な部分があるけど……
「夜会……。んん、もしかして、赤髪の……?」
「そうです、その方でおそらく合ってますわ。なんでも怪しげな連中といるのを目撃されているとか。カイト様絡みかは分かりませんが、用心くださいましね。」
確かあの時、俺口説かれてたよなぁ……レオが途中で割って入ってくれたんだっけ。人が良さそうな顔してたけど、見かけには寄らないってか。
「そうなんですか。ご親切にありがとうございます!」
「ウッ……笑顔がまぶしい……!」
「ベルタ様しっかり!」
「えっ、あの」
「なんでもございませんの! ほほほ!」
扇子で仰がれているベルタ嬢は、ほほほと笑っている。
結局根掘り葉掘り聞かれてしまったけれど、そんなに嫌な気持ちにはならなかった気がする。アルマの周りには、いい娘たちがいたんだな。
そんな雰囲気でお菓子をつまみつつ会話に花を咲かせる。太陽が沈み夕焼けに染まる頃、令嬢たちは皆揃って帰っていった。
(へえ、これくらいが大体帰りどきなんだ。そりゃ夜遊びみたいなことはしないか)
じゃあ、俺も帰るかと思った所へ、アルマが話しかけてきた。
「カイトさん」
「ん??」
なんだろう? やけに小声だ。
「あの……入口の騎士は、護衛の方?」
「そうですが……。彼が何か?」
チラチラとヴェネリオを見て、頬を染めたアルマは小さな声で言った。
「わたくし、彼に一目惚れしてしまったようなの……。」
一目惚れ。まさかの一言にヴェネリオを二度見してしまった。
「ええ!?!?」
「来た瞬間殿下のお傍だっただなんて。しかも月の綺麗な晩に! 画になりますわねぇ。」
素を見せろ攻撃から一転、今度はやはり来たとしか言いようがないレオと俺の馴れ初めだ。言えそうなことだけ掻い摘んで話すと、この反応である。
「ほら、やっぱり夜会での直感は大当たりでしたわ。こりゃ無理だわって思いませんこと!?」
「「「誰でも思うはずですわ」」」
アルマもだいぶぶっちゃけている。いや俺は楽しいけれどね。アルマは傷自ら抉ってない? 吹っ切れてるなら大丈夫か?
「なんて顔されますの!? わたくし吹っ切れておりますから大丈夫です!」
ぷん! とそっぽを向いているけど楽しそうだ。それならなんも問題ない。よしよし。
「それにしても、今日のお衣装もこれまた……。噂には聞いていましたがすごいですわね。」
「この裏地、殿下の瞳のお色よね。すごい圧を感じますわ……。」
「上着の随所にも散りばめられていますね。カイト様、愛されておいでですね♡」
「う……。心配性なだけですよ、多分……。」
返答に困るからあんまり振らないで欲しいぞ。俺的にはこういうの全然気にならない……むしろこの独占欲みたいなの、嬉しく感じちゃうんだよね…惚気みたいだから言わないけど。
「あの浮いた話のなかった殿下がここまでなさるんですもの、相当愛されてますわよ。わたくしのところにも、ひょっこり誰か落ちて来ないかしら」
「いいですわね、突然始まる恋……! 本が一冊書けそうですわ。」
いや、俺達も出会ってすぐ恋……ってわけじゃないんだけどね? ん、いやでも、何も感じなかったわけではないから、恋に含まれるのかも?
ダリア嬢はアルマとシモーヌ嬢たちが話しているのをチラリと見てから、こそっと俺に話しかけてきた。
「いろいろお聞きしてごめんなさいカイト様。アルマ様からお話をお聞きして、どんな方なのかと気になってしまって。」
「アルマが……?」
「ええ、わたくしたちもアルマ様のことが心配だったのだけど、あの日、とてもスッキリしたお顔でわたくしに会いにいらして。カイト様に救われたのだと、お話をたくさんしていかれたわ。」
「救うだなんて、そんな大層なことは。ただ、話が出来るよう立ち回っただけで……。」
「彼女にとっては、それが重要だったということですわ。あれ以来、とても輝いていらして。わたくしも嬉しいのです。ありがとうございます。」
ダリア嬢は優しい目でアルマを見つめていた。きっと、ずっと支えていたんだろう。その横顔を見て、俺も嬉しくなった。
「でもやっぱり、彼女の力ですよ。城に来なかったら、私は気にもしていませんでしたから。」
「カイト様……。」
うん、やっぱりアルマの行動によるものだ。執念が彼女を城へ向かわせ、きっとそれに引き寄せられたんだろう。俺は。
「あ!」
ベルタ嬢が手をパンッと叩いて言った。
「ああ、そうでしたわ! お知らせしたいことがございましたの! ベルモンド伯爵が、カイト様にご執心らしいということを耳に挟みましたので、一応お知らせをば……と。」
「ベルモンド伯爵……。どこかで聞いたような。」
「あら、もしかしたらご存知かもしれませんね。夜会にいらしてましたから。」
夜会……そういえば、結構話した人がいたような。お酒飲んでたから曖昧な部分があるけど……
「夜会……。んん、もしかして、赤髪の……?」
「そうです、その方でおそらく合ってますわ。なんでも怪しげな連中といるのを目撃されているとか。カイト様絡みかは分かりませんが、用心くださいましね。」
確かあの時、俺口説かれてたよなぁ……レオが途中で割って入ってくれたんだっけ。人が良さそうな顔してたけど、見かけには寄らないってか。
「そうなんですか。ご親切にありがとうございます!」
「ウッ……笑顔がまぶしい……!」
「ベルタ様しっかり!」
「えっ、あの」
「なんでもございませんの! ほほほ!」
扇子で仰がれているベルタ嬢は、ほほほと笑っている。
結局根掘り葉掘り聞かれてしまったけれど、そんなに嫌な気持ちにはならなかった気がする。アルマの周りには、いい娘たちがいたんだな。
そんな雰囲気でお菓子をつまみつつ会話に花を咲かせる。太陽が沈み夕焼けに染まる頃、令嬢たちは皆揃って帰っていった。
(へえ、これくらいが大体帰りどきなんだ。そりゃ夜遊びみたいなことはしないか)
じゃあ、俺も帰るかと思った所へ、アルマが話しかけてきた。
「カイトさん」
「ん??」
なんだろう? やけに小声だ。
「あの……入口の騎士は、護衛の方?」
「そうですが……。彼が何か?」
チラチラとヴェネリオを見て、頬を染めたアルマは小さな声で言った。
「わたくし、彼に一目惚れしてしまったようなの……。」
一目惚れ。まさかの一言にヴェネリオを二度見してしまった。
「ええ!?!?」
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