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神殿編
52.再・神殿訪問①
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神殿を訪問してからは、平和な日々が続いていた。いつも通り午前中は勉強、午後イチで昼寝。俺はこれでもかというほど、まったりスローライフを楽しんでいた。
……が、それも束の間の幸せだった。たったの二週間で、また教会からの書簡が届いたのだ……。
「婚約の前祝い、ねぇ。そう来たか、としか。」
公表すらしていないのにお祝いとか言われましてもね? なんと白々しいことか。『是非お二人で』じゃねーよッ!! レオの執務室で、つい書簡を睨みつけてしまった。
「カイ、顔こわ」
レオがくすくす笑っている。
「いや、逆にその余裕は何?」
「ふふ、ちょっといいこと思いついたんだよ。」
にこ、と貼り付けたような王子様スマイルを炸裂させて、レオは爽やかに紅茶を啜った。
「それじゃあ行こうか、カイ。」
停められた馬車から降りると、俺たちはまた神殿と対峙していた。今日のメンバーは、レオと俺、パオロと暗部のリエトさんだ。
前回と同じく、ドナート司教とグイド司祭の出迎えから始まった。この間と同じような文言をやりとりし、応接室へと通される。
「お二人、ご婚約されると伺いました。気が早くてすみません。まだ公式な発表はされていませんが、耳に挟んだものですから。」
「いや、特に内密にしていたわけではないので、構わないですよ。」
ドナート司教は、サイドテーブルに置いてあった煌びやかな箱を手に取ると、コトリと目の前のテーブルに置いた。
「では早速ですが……。こちら、お祝いにと思いまして。お受け取りください。」
「……これは?」
青を基調とした美しい箱。金で縁どりされており、大小の宝石が散りばめられている。すっごい……センス悪、ゴホン
「こちら、幸福のオルゴールと言いまして、紡がれるメロディーが安寧と幸福をもたらすと言われているのです。まぁ、お二人はこんなものなくとも常に幸せで溢れて居るでしょうけれども。ははは!」
「ふふ、その通りですが、お気持ちは有難く頂戴致します。」
普段なら、このような贈り物は受け取らない。多方面において関係が良好で、善良な団体であれば別だけど、現在の神殿は後暗い行いが多く不満を持つ者も多い。反王政派に目を付けられ、賄賂だなんだと騒がれると面倒なのだ。
箱をひとなですると、レオの手がピクリと止まった。鑑定魔法を使ったのだろう。
『カイ、これは幸福じゃなくて催眠のオルゴールだ。音を聞くと、催眠状態になる。』
は!? こっわ!!
ラニエロさんに作ってもらった、通信が行えるイヤーカフの魔道具を通じてレオの声が聞こえた。神殿へ出発するのにギリギリ間に合ったのだ。急がせてほんと申し訳ない。しかも念話仕様だ。すげぇ。
「これは君が持っていてくれ。」
「はい。」
手渡された箱に魔力を巡らせ、魔法解除を唱えると催眠魔法が解除された。どうやら、宝石から音に乗せて魔法をかける代物だったようだ。これでもう、音を聞いても大丈夫。
『解除した。もうただのオルゴールだよ。』
無事に解除出来たことを伝えて、ついでに鳴らさなくて良いのかと問う。
「音を聞かれなくてよろしいので?」
「ああ、そうだな。一度聞いてみても?」
「もちろんどうぞ。お気に召すとよいのですが。」
ぜんまいをキリキリと巻いてから箱を開けると、綺麗な音色が聞こえてきた。
「いい音ですね。ありがとうございます。」
微笑んでレオが言うと、手で『もう閉めて良い』と指示されたから箱を閉じた。
今日の要件はこれだけだったみたいで、少し話してから早々に帰る流れになった。……が、何やらドナート司教が彼に耳打ちをすると、彼が口を開いた。
「あの、すみません。少々相談したいことがございまして、少しだけお時間よろしいですか。」
「ええ、空いていますよ。どうなさいましたか?」
「ここではちょっと。場所を変えたいのですが……。」
「そうでしたか、お伺いしましょう。レオナルド殿下達はこちらでお待ちください。」
「ああ、わかった。カイ、ここで待っているから。」
「うん、行ってきます。」
ぞろぞろと皆が出て行き、扉が締められる。相談があると持ちかけられた司教だけではなく、司祭も同行だなんてこれはいよいよ……?
……が、それも束の間の幸せだった。たったの二週間で、また教会からの書簡が届いたのだ……。
「婚約の前祝い、ねぇ。そう来たか、としか。」
公表すらしていないのにお祝いとか言われましてもね? なんと白々しいことか。『是非お二人で』じゃねーよッ!! レオの執務室で、つい書簡を睨みつけてしまった。
「カイ、顔こわ」
レオがくすくす笑っている。
「いや、逆にその余裕は何?」
「ふふ、ちょっといいこと思いついたんだよ。」
にこ、と貼り付けたような王子様スマイルを炸裂させて、レオは爽やかに紅茶を啜った。
「それじゃあ行こうか、カイ。」
停められた馬車から降りると、俺たちはまた神殿と対峙していた。今日のメンバーは、レオと俺、パオロと暗部のリエトさんだ。
前回と同じく、ドナート司教とグイド司祭の出迎えから始まった。この間と同じような文言をやりとりし、応接室へと通される。
「お二人、ご婚約されると伺いました。気が早くてすみません。まだ公式な発表はされていませんが、耳に挟んだものですから。」
「いや、特に内密にしていたわけではないので、構わないですよ。」
ドナート司教は、サイドテーブルに置いてあった煌びやかな箱を手に取ると、コトリと目の前のテーブルに置いた。
「では早速ですが……。こちら、お祝いにと思いまして。お受け取りください。」
「……これは?」
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「こちら、幸福のオルゴールと言いまして、紡がれるメロディーが安寧と幸福をもたらすと言われているのです。まぁ、お二人はこんなものなくとも常に幸せで溢れて居るでしょうけれども。ははは!」
「ふふ、その通りですが、お気持ちは有難く頂戴致します。」
普段なら、このような贈り物は受け取らない。多方面において関係が良好で、善良な団体であれば別だけど、現在の神殿は後暗い行いが多く不満を持つ者も多い。反王政派に目を付けられ、賄賂だなんだと騒がれると面倒なのだ。
箱をひとなですると、レオの手がピクリと止まった。鑑定魔法を使ったのだろう。
『カイ、これは幸福じゃなくて催眠のオルゴールだ。音を聞くと、催眠状態になる。』
は!? こっわ!!
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「これは君が持っていてくれ。」
「はい。」
手渡された箱に魔力を巡らせ、魔法解除を唱えると催眠魔法が解除された。どうやら、宝石から音に乗せて魔法をかける代物だったようだ。これでもう、音を聞いても大丈夫。
『解除した。もうただのオルゴールだよ。』
無事に解除出来たことを伝えて、ついでに鳴らさなくて良いのかと問う。
「音を聞かれなくてよろしいので?」
「ああ、そうだな。一度聞いてみても?」
「もちろんどうぞ。お気に召すとよいのですが。」
ぜんまいをキリキリと巻いてから箱を開けると、綺麗な音色が聞こえてきた。
「いい音ですね。ありがとうございます。」
微笑んでレオが言うと、手で『もう閉めて良い』と指示されたから箱を閉じた。
今日の要件はこれだけだったみたいで、少し話してから早々に帰る流れになった。……が、何やらドナート司教が彼に耳打ちをすると、彼が口を開いた。
「あの、すみません。少々相談したいことがございまして、少しだけお時間よろしいですか。」
「ええ、空いていますよ。どうなさいましたか?」
「ここではちょっと。場所を変えたいのですが……。」
「そうでしたか、お伺いしましょう。レオナルド殿下達はこちらでお待ちください。」
「ああ、わかった。カイ、ここで待っているから。」
「うん、行ってきます。」
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