また出会えたらその時は

華月

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神殿編

44.腹を括るしかない!

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 ついにこの時が来てしまった。神殿への訪問だ。夜会から数週間。夜会でのお披露目があったのなら、是非神殿にも……と打診を受けた。正直怖いけど、ここで躱して拗れるのも嫌だ。なら、正式な手順で訪問するのが一番だなという結論に至った。結婚するにも神殿は関わってくるし、早期に良好な関係になりたい所ではある。

「まぁ渋れば渋るほど、こちらも『何か隠しているのでは』と思われるしね。ここら辺での訪問が妥当だと思う。」
「そうだな。変に期待されても困るしな。」

 レオの執務室で早速話し合いをしているけれど、もうほぼ決定事項のようだ。いくら気が進まなくても、切っても切れない関係だから邪険にもできない。
 頭では分かっちゃいるけど、行きたくはない。頑張れ俺……。

「当日は護衛も警備も増やすから、安心して欲しい。」
「うん。俺もちょっと自衛するから魔法ちゃんと調べる。」

 もう行かざるを得ないなら、準備をしっかりしよう。自意識過剰なくらい、ヤバい事態を想定しておこうと気合を入れた。





 城の図書室での魔法の勉強の合間に、俺はレオと休憩を合わせて歴代国王の肖像画を見に来ていた。

「ディオが初代国王とか……。あんなに可愛かったのに、こんなゴツくなったんだな。」

 初代国王クラウディオの肖像画を前に、しみじみと過去を思い出す。

「君が亡くなってすぐに稽古つけろとか言うくらいだしね。鍛錬バカだったな。まぁ俺も全力で指導したけど。……ねえカイ。俺が今、なんて言われてるか知ってる?」
「え、何? わかんないな。」

 レオはくすりと笑って優しい目で眺めながら言った。

「“先祖返り”。この目と魔力量が初代のそれと同等では? だって。その初代の目も魔力量も俺譲りだからなんだかおかしくってさ。」
「こんがらがっちゃうよ、あはは!」

 初代の父ちゃん生まれ変わってますよ~って言えたら滅茶苦茶面白そうだけどな! 今のところ言うつもりはない、かな。信じてもらえるかもわからないし。

「神力は継いでるの?」
「ほんの少しだけ、あるかな。ディオよりも少ない。」
「そっか。やっぱ薄まるよな、竜じゃないし。」

 あの時があったから、今俺もレオもここにいるんだ……。なんか、不思議な感覚。
 しばらく眺めたあと、ぐっと背伸びをして踵を返す。

「さーて休憩おわり! レオもあともーちょい、頑張ろうな。」
「ご褒美くれる?」
「んー、考えとく。」




 図書室までレオに送って貰ってまた続きを勉強する。最近、なんかレオがちょっと甘えるようになってきて可愛い。ご褒美ってなんだ……甘党だしなんかおやついるかな?

 重みのある扉を開けて、さっきまで使っていた席へと行く。立っているついでに、読み終わった本を戻してまた新しく本を持ってきた。端にドンッと積んでおく。

 席に着くと、読み途中の本を手に取ってぺらりとページをめくる。
 ここまで、先生の授業とも合わせて勉強してみて分かったのは、魔法には基本的に“詠唱”と“魔法陣”がいるということ。自然界に散らばる魔素や、自身のもつ魔力を詠唱という言葉の力をもって、より正確に練り上げながら魔法陣を組み、発動する。力のある魔法使いになってくると、詠唱よりも短い言葉の羅列で魔力を練ることが出来る短縮詠唱が使える者もいる。有事の際は刹那の時間で命を左右することもあるから、非常に重宝される。

 俺はといえば、そんなのは全く意識する必要が無くて、ノータイムで繰り出せてしまう。本を読んでわかったけれど、本当に破格だ。俺の魔法を初めて見た時のラニエロさんの顔が忘れられない。
 でも、いくらすぐ発動できるからと言っても、知識と経験が無ければ咄嗟に対応なんてできやしない。……となると、やっぱり特訓しかないのでは?? 騎士団のみなさんとか相手してくんないかなあ。

 ひとまず、俺が使える魔法で使えそうなやつを調べておく。

(……干渉魔法の、精神干渉は……あーやっぱ禁忌かぁ。強すぎるかぁ。)

 うんうん唸りつつ、良さそうな効果の魔法をつらつらと書き留めていく。ひとまず覚えないことには始まらない。

(大聖剣アイシスってめっちゃ強そう……。神殿では使いそうにないけど。)

 そのままもくもくと調べて、ひとまず終了。部屋に戻って一息ついた。はぁ疲れた。


 
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