また出会えたらその時は

華月

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記憶編

39.休日の始まり

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 翌朝、起きるとレオの綺麗な顔。あぁ、俺たち昨日……。思い出して、恥ずかしくなってシーツを引っ被った。

「……っくく、おはよう、カイ。かくれんぼ?」
「………………おはよ。……っ、けほ」

 目だけ出して答えると、レオはにこにこしていた。よ、余裕なのが腹立つ……!

「ああ、喉が……。身体はどう? 辛くない?」

 ちょっと覗き込んで、俺の丸まった身体を撫でてくる。ずるいぞ……。
 顔が近くにあったから、俺からちゅっとしてやると、レオが嬉しそうに目を細めた。

「レオ、昨日ありがと……最高の誕生日になったよ。でも、ごめん。俺すごいわがまま言った……。」

 俺のためを思ってくれてのことに泣いたりとか……。うっ、ないわ……。いたたまれなさすぎる。に、逃げたい!

 逃げたさに悶えていると、レオはきょとんとしている。

「あんな可愛いおねだり、何回されてもいいぐらいだけど? 俺、今世では甘やかすつもりでいるから全然気にしなくていいよ。」
「~~ッ! あ、甘すぎないか……。俺ダメ人間になっちゃうよ。俺は甘いだけじゃなくて、ちょっと厳しい顔してるレオも好きなんだけどな……。」
「…………。そうか、カイはそういう方面も好きなんだ……?」

 甘やかしすぎるなって言いたかったんだけど、なんか変な勘違いしてない? 大丈夫?

「まあ、甘やかしすぎないようにな? 飴と鞭ってやつだよ。あ、ちょっと俺、シャワー浴びてくる。」
「あっ危ないと思……」
「ふえっ」

 ベッドから降りようとしたら、俺の間抜けな声とともに崩れ落ちる身体……。こ、腰が!

「遅かったか。今日はベッドにいた方がいいと思うよ。」

 ふわりと抱えられ、ベッドに戻されてしまった。チリンとベルが鳴らされる。

「清めの魔法は掛けておいたから、気持ち悪さはないと思うけど……。あとは朝食か。すぐ用意させる。」
「はあ、無力……。泣ける。」

 少しするとジュリオが来た。

「おはようございます。朝食はこちらで?」
「おはよう。ああ。喉の通りがいいものと、冷たい果実水を。」
「かしこまりました。」

 ………………。
 あっ。朝から二人でいて、かつ俺の喉がやられてるって、しかも昨夜声出ちゃってた。あれ、致したことバレてるのでは?

「………………なあ、致したこと、皆にバレてるの?」
「まあ、察しが良ければ。」
「み、みんな良さそ~~……。」

 少しすると朝食が運ばれてきた。具がくたくたになるまで煮込まれたスープと、やわらかいパン。それとフルーツだ。さて食べようとスプーンを探すが見当たらない。あれ?

「はい、あーん。」
「じ、自分で食べるから!」

 レオがスプーンを構えている。いつの間に!!

「あれ、ケーキの時は食べてくれたのに?」
「うっ、あれは無意識というか……!」
「いいから、ほら。」

 口元にスプーンをちょんちょんとつけられる。

「甘い空気を楽しんでもいいだろう? 大人しくお世話されていなさい。」

 レオが嬉しそうにしてるから、俺はおずおずと口を開けるのだった……。

(俺、チョロすぎだろ!)

 結局全部あーんしてもらった。なんてことだ。今日だけだからな!

「ごちそうさまでした。レオは今日仕事は?」

 随分のんびりしているけど大丈夫なのかな。俺は夜会翌日だからってことでおやすみだ。

「ん、全部終わらせたから3日くらい休みだよ。」
「えっ、あんなに忙しかったのに??」
「ああそれは、休みを取るための忙しさだね。だいぶ詰め込んだからなぁ。」
「そっかぁ。お疲れさま! 休み満喫できるといいな。時々俺も構ってくれよ?」

 レオって休日何してんのかな。読書しながら優雅に紅茶啜ってそう(偏見)。最近王子様の顔しか見てないから妄想が偏る。

「時々も何も、休日は全部カイに使うつもりなんだけど……。」
「えっ? そうなの?」
「カイのしたいこと、全部聞いてあげられたらって思って。」

 えっえっ、何それ聞いてないよ。

「ほら、慣れない世界で目まぐるしい生活だったろ? だから息抜き……うーん気晴らし? 出来ればいいなと。」
「そんなこと考えてくれてたの……。」
「うん。何かしたい事ある? なんでもいいから言ってみて。」

 そこまで考えてくれてるとは思わなくて、固まってしまった。やりたいこと……やりたいこと、ある。

「えっと……。レオとたくさん話がしたい、レオと魔物狩りに行きたい、んーと、レオとどこかに行きたい。」

 指を折りながら一つずつあげていくと、レオが優しい声で言った。

「全部、俺と一緒がいいの?」
「あっ! …………うん、だめ?」

 ほんとだ、全部に『レオと』ってつけてた……。恥ずかしい……。

「だめなわけない。むしろ、カイが俺を求めてくれて嬉しいよ。……じゃあ今日は、たくさん話をしようか。」
「ん。……レオ、ありがと……。」
「いや、このために寂しい思いさせちゃったから、お礼言われるようなことはないよ。」

 レオは俺の後ろに回ると、俺を自分に寄りかからせた。レオの手は、俺の腹の上で組まれている。

(俺をダメにするソファの完成じゃないか……)

 そのままたくさんたくさん話をした。



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