また出会えたらその時は

華月

文字の大きさ
上 下
6 / 146
記憶編

6.いろいろ冴えてる俺

しおりを挟む
 本日はお日柄もよく。俺はレオの家から少し北に行ったところにある森に来ている。そして目の前には……

「かわいいッッ」

 うさぎのような見た目の魔物が五匹。うさぎと違うところは、額に角があるということとちょっと大きめというところだろうか。昨日受けた依頼の食材だ。レッツハンティング!

「かわいくて攻撃できない…ッ」

 きゅるきゅるしたでっかいおめめが俺を見つめてるぅ…

「まぁ見た目はかわいいけれど、その子、角に電気集めて雷撃飛ばしてくるからね。結構危ないよ?」

「ヒッ…恐ろしい子…!」

 レオさんの言葉に危機感を持った俺は考える。ここは心を鬼にして倒すしかない。
 うーんどうすればいいかな。俺には魔法しか武器がないから魔法で倒すわけだけど、どんな風に使ったらいいのかいまいちわからんのよね。
 まぁそれは場数踏まないと掴めない感覚なんだろうな。

 うーん、魔物にも属性ってあるのかな…でも魔物ってからには、たぶん聖属性魔法は抜群に効くよな。ああぁでも、どの魔法使ったらいいんだろう!? 多すぎて思い出せないやばい。とりあえずあれだ、聖なる光の槍が、ガガガガッて空から降ってきて───……


 空に突如、スッと光り輝く槍が五本現れ、魔物めがけ一直線!見事に急所を貫いて魔物が次々と倒れた。

「え、あ? あれ? や、やったぁ初狩り!」

 嬉しくて、よっしゃ!とガッツポーズを決める俺。横でレオさんがポカーンとしている。

「いや、待って? これなんの魔法…?」
「いや、俺にもよくわかんなくて……どの魔法使ったらいいか分からなくて、聖なる光の槍が魔物貫くイメージしたら、できてました。」
「は…? イメージ???」
「はい……。ちょっと俺にもよくわからないんですけど……へへ。」

 えへへと笑う俺とポカーンなレオさん。ギルドに提出するために魔物の一部を切り取り、いろいろと使えるらしい魔物の核である魔石を回収しながら、レオさんにどうだったかと初戦についての感想を求めた。

「結果的には上々過ぎると思うよ。レベル1の初心者とは思えないよ、あんな的確な魔法は。でも、魔法を全てイメージだけで発動していくのは限界がありそうだから、既存の魔法もちゃんと覚えた方がいいと思うけど。あとこれはお願いだけど、急に槍とか出ると驚くから、不意打ち以外は魔法名か掛け声かなにかくれない?」
「あ、あぁ…そっかそれはそうだよな…気をつけます。うーん、確かにこの魔法の使い方だと、俺の想像力頼りになっちゃうよなぁ…威力の調節とか難しそうだし。」

使いやすそうなのから覚えます! と気合いを入れたとこで思いついた。

「レオさん……魔法って複合することも出来ます…? たとえば、阻害魔法の一つの拘束の鎖ですけど、聖属性纏わせて”聖なる鎖“みたいにしたら、魔物の捕縛にうってつけじゃないですか?」
「複合魔法か…二種類ぐらいの複合なら使える人は多いかな。魔力を制御しながら数種類を練り合わせるのが難しいから何種類も、っていうのは余りやらないね。そうか、カイの場合は、イメージとしてもっていればあれこれやらなくても魔法として発動するのか…。うん、試してみる価値はあると思う。」

 魔法についてあれこれ話していると、突然強い風とガサガサと木が葉を揺らす音。何事かと上を見上げると——

「なっ…ワイバーン!? カイ、どこかに隠れて!」

 俺たちのすぐ上空に、小型のドラゴンみたいな魔物が来ていた。小さく旋回したかと思うと、じっとこちらを伺うように見ている。えっやばくない? 隠れるとこなくない!? 木の影でいい!?
 動きを注視しながら移動する。ワイバーンはゆるりゆるりとこちらに近づき、次の瞬間。猛スピードでこちらに迫ってきた!

やばいやばいやばい!

聖なる鎖ホーリーチェーン!!」

 丁度妄想していた複合魔法を使ってみた。わかりやすいかな、と思ってちゃっかり名前をつけてみたけど若干厨二臭がするのは見逃して欲しい。

 光り輝く鎖がワイバーンを縛り上げていく。翼ごと縛ったので、身動きが取れなくなったワイバーンはズドーン!!! と落ちてきた。

「レオさん!!!」
「ああ!」

 レオさんは腰に下げていた長剣をすらりと抜き、ワイバーンに思いっきり突き立てた。力強い、洗練された動きに目を奪われる。いつもと違う気迫に、空気がびりびりした気がした。めちゃめちゃかっこいい……!
 わずかに声を上げると、ワイバーンは沈黙した。

 ワイバーン登場から討伐まで本当に一瞬のできごとで、夢じゃないかと思うくらいだった。その一瞬の中での連携とも見える行動に、俺は感動していた。

「…わ、わっ、すごい! レオさん、今のすごいなんか…よくなかったですか!? すごい気持ちよかった!」

 興奮してつい早口になってしまった。

「あぁ…こんな一瞬で片付くと思ってなかった! さっきの魔法、つい今しがた話してたやつだな? よく咄嗟に使えたね」

 レオさんはにっこり笑うと、俺の頭をぽんぽんしてきた。いや、いくつになっても褒められるのは嬉しいもんだな…レオさん手暖かいなぁ。

「しかし…ワイバーンはこんな木が密集したところには来ないはずなんだけど…小さかったし迷ったのか…。まぁいずれにせよ、ギルドで換金ついでに報告しておくか。ってことで任務完了でギルド行くか」

 魔物たちを倒したその足でギルドに向かい、回収した魔物の一部と魔石の一部を渡して換金してもらう。ワイバーンの件を伝えるのも忘れない。
 チャリ、とお金が入った袋を受け取った。手伝ってもらったとはいえ、初めて自分で稼いだお金だ。感慨深いものがある。




 今日はせっかくだし、と街でそのまま夕食をとった。初めての外食! 地球の飲食店とそんなに変わらない感じ。味もおいしくて、味覚が合うようでもりもり食べられる。
 たわいない話をしながら食べ進める。と、不意にレオさんが言った。

「ああ、暫く一緒にいることだし、そんなかしこまらずに呼び捨てにしてくれ。話すのも敬語とかいらないから。ね? 普段通りのカイが見たい。」

 実はそれが気になってたんだ、とレオさんはエールをあおる。
 え、え、なんか緊張するけどそれがご希望なら聞かないわけにいかないよな。

「え、じゃあ…わかったよレオ。………はは、なんか照れるね」

 あー少し赤面してるかんじする! 恥ずかしい! これしきの事で!

「ん、よくできました」

 レオは酔いが回ってきたのか、少し上気した顔で言うもんだからもうほんと色気がやべーーーから! 振りまかないで! 俺男なのにどきどきしちゃってるよ…きっと当てられたんだ! そうだ!

 楽しい夕食の時間はあっという間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異界娘に恋をしたら運命が変わった男の話〜不幸の吹き溜り、薄幸の美姫と言われていた俺が、英雄と呼ばれ、幸運の女神と結ばれて幸せを掴むまで〜

春紫苑
恋愛
運命の瞬間は早朝。 泉から伸びる手に触れたことが、レイシールの未来を大きく変えた。 引き上げられた少女は、自らを異界人であると告げ、もう帰れないのかと涙をこぼした。 彼女を還してやるために、二人は共に暮らすこととなり……。 領主代行を務めるレイシールの、目下の課題は、治水。毎年暴れる河をどうにかせねば、領地の運営が危うい。 だが、彼の抱える問題はそれだけではない。 妾腹という出自が、レイシールの人生をひどく歪なものにしていた。 喪失の過去。嵐中の彼方にある未来。二人は選んだ道の先に何を得るのか!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

会社一のイケメン王子は立派な独身貴族になりました。(令和ver.)

志野まつこ
恋愛
【完結】以前勤めていた会社で王子と呼ばれていた先輩に再会したところ王子は案の定、独身貴族になっていた。 妙なところで真面目で所々ずれてる堀ちゃん32歳と、相変わらず超男前だけど男性だらけの会社で仕事に追われるうちに38歳になっていた佐々木 太郎さんこと「たろさん」の物語。 どう上に見ても30過ぎにしか見えないのに、大人の落ち着きと気遣いを習得してしまった男前はもはや無敵だと思います。 面倒な親や、元カノやら元カレなどが出ることなく平和にのほほんと終わります。 「小説家になろう」さんで公開・完結している作品を一部時系列を整え時代背景を平成から令和に改訂した「令和版」になります。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

婚約破棄と言われても・・・

相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」 と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。 しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・ よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。 *********************************************** 誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

処理中です...