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18. 思わぬ再会

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 二週間後に行われるのは、四ノ宮家主催のパーティーだそうだ。朔埜は宴会と言っていたけど、パーティーだ。規模的にあれは、多分。
 東京を拠点にしている朔埜の父が息子を連れてこの地で要人たちをもてなす。朔埜の父は東京を居住としているから、実家と疎遠なんて言われているから、それを否定する意味合いもあるのかもしれない。

 それにしても、その規模といったら。
 どうやら国際的なもののようで、この日の為に外国語を話せるスタッフを手配したり、会場担当者と打ち合わせしたり……その作業の多さに、旅館てこんな事するんだ? と連日のように驚いている。

「ここで結婚式や披露宴を挙げるお客様もいますからね。パーティーを催す事も多いのですよ」
 そう教えてくれたのは辻口だ。
 
 史織が凛嶺旅館に来てから一週間。
 三芳指導の元、史織は旅館勤めのイロハから礼儀作法のあれこれから旅館のルールまで幅広く学んでいる。スマホの使い方講座まであるのだから徹底したものだ。
 今は忙しいのもあり、僅かに時間が短縮されているが。その短い時間でも三芳の教育的指導は恐ろしく厳しい。

「そうなんですね」
 史織も結婚式き参加した事はあるが、その時は都心の一等地にある今風のチャペルだった。タイトな時間で式場を貸切り、退室すると次のカップルがドアの前で待機していて……とにかく慌ただしい上き人が多い印象の場所だ。
 そこはその真逆だ。

 ──雄大な景観。趣ある建物。
 こんな景色を眺めながら永遠を誓えたら、良い思い出に残るだろうなあと思う。
 
「西野さん、ぼけっとしてる時間ありませんよ。今日からお客様が増えますからね」
「あ、はい」

 紅葉の時期は一般客も訪れる繁忙期だ。
 宿泊とイベントの手配で、旅館内はてんやわんやしていた。
 正直言って史織が見習いを許されたのは、猫の手も借りたい程忙しかったかはではないかと、今なら思う。
 それにしても本来の目的である、朔埜の調査だが……残念ながら今はそんな隙は無い。
 まあ、朔埜もパーティーの準備で忙しそうなので、恋人とゆっくりデートなんて時間は無さそうだけど。
(結局、恋人いるのかな? どうなんだろ……)

 朔埜はいつも不機嫌そうな顔だが、お客様の前では上手に仮面を被る。その変わりようたるや……史織はその決定的瞬間を目撃したとき、辻口の背中を思い切り叩いて怒られたくらいだ。

 ついでに、たまたまそれを見ていたらしい朔埜にも睨まれた。
 ……もしかしたら既に目をつけられているかもしれない、気をつけよう。

 仕事を始めて一週間。
 言いつけられた通りに動ければいい方で、メモが手放せない日々を送っている。立ち仕事と言うより、歩き仕事というか走り仕事というか、時間も無くて目まぐるしい。二週間後には体力がついていそうである。

 今日は、初めてお客様の案内を言いつけられており、史織はエントランスへと急いだ。

「あれ、千田さん……?」
「え?」
 振り返った先を見て、史織はさぁっと青褪める。
 気を抜いていた訳では無いけれど、こんな所で知り合いに会うなんて思っていなかった。

 頭の中で今日の宿泊状況を確認する。
 会社の研修で予約のあった、二十人の団体さんだ。流石にその名簿に目を通すなんてしなかった、けれど。今はしておけば良かったと後悔してる。

(藤本君?! ……ど、ど、どうしよう!)

 その中にいたのは史織の学生時代の知り合いだった。
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