6 / 11
6. サリーシェは……
しおりを挟む
ですが次の日の晩、ルアジェ陛下の寝室でサリーシェは殺されてしまいました。
冷たい瞳で刃物を向けるルアジェ陛下に、サリーシェは涙ながらに訴えます。
「どうして……どうしてこんな事をするのよ! ルアジェ!」
「……どうしてだって? 君は母親から何も聞いていないんだな。君の母がルェイン国から出たのは私から逃げる為だった。彼女の家族も、使用人も、婚約者も全て私が殺した。彼女が国民人気の高い女性だったからだ。ルェインにはまだ女王制度は無かったが、それすら時間の問題な程に……あの人が姉で無ければ結婚して私の横に置いて置きたいと思う程、良い女だったよ」
……そうなんですか、私もお母様から何も聞いておりません。お母様は急死でしたし、そもそもそんな話、怖くて出来なかったのかもしれません。
「なのにお前を見てガッカリした」
「えっ、えっ?」
ルアジェ陛下の目が冷たく眇まります。
「男の誘いに簡単に乗り、全てを捧げるのにも時間が掛からなかったな。加えて未通でも無かった。私の子だと? 本当は誰の子だ!?」
えっ?
「そ、そんな……あなたの子でしょう? 私、私は……」
「……覚えがあるのは私だけでは無いという事だ」
「何よそれ! 横暴だわ!」
そうでしょうか……
「私はお前を知れば知るほど余りにも姉上とかけ離れている事に失望していった」
「そ、そんなの仕方がない、じゃない」
サリーシェの声が引き攣ります。
流石に激昂しているルアジェ殿下に、命乞いの為に本物に成り代わったと言う気は無いのでしょう。ルアジェ陛下は愛より血を重んじていたようですから、罪が深まるばかりです。
「そうだな、お前は偽物だものな」
あ、知っていましたか……
「外見だけならず、内面も姉上とそこまで違えば疑いもするさ」
ルアジェ陛下の怒気を孕む言葉にサリーシェはヒッと悲鳴を上げて後退ります。
「お前は私を謀ったばかりでなく、私と姉上の子の邂逅をも邪魔をした……よくも私にどこの馬の骨とも知れない女の身体などに触れさせてくれたな!」
「いやあ! 許して! 許して下さい!!」
サリーシェの声を無視し、陛下は逃げようと身を捩るサリーシェに剣を振るい黙らせました。
動かなくなった彼女を部下に命じて処分を言い渡し、陛下は血濡れた寝室を後にします。
私は陛下に会わなくて良かったと思いました。
会ったところでサリーシェと同じように因縁をつけられて殺されていたのかもしれませんしね。
私の人生の岐路は死亡フラグばかり転がっていたようです。
それにしてもサリーシェが死んでしまった今、私は何処へ行きましょうか。もうルアジェ陛下に着いてルェイン国へ行く気は無くなってしまいました。
「アリア……」
名を呼ばれて振り返ります。
ルアジェ陛下は月を見上げて私への冥福を祈っているように見えました。
ごめんなさい陛下……文化や法律の違いはあるかもしれませんが、正直姪と関係を持つことを厭わない人に少しばかり嫌悪感を抱いておりました。
でも私が死んで初めて祈りを捧げてくれたのは、ルアジェ陛下なんですよね。────ありがとうございます。そしてさようなら陛下。
私は陛下に向かい丁寧にカーテシーを取りました。
そして顔を上げるとそこは見知らぬ場所……いえ、知っています。そこはレアンドロ様の邸、ウォッズ侯爵邸でありました。
冷たい瞳で刃物を向けるルアジェ陛下に、サリーシェは涙ながらに訴えます。
「どうして……どうしてこんな事をするのよ! ルアジェ!」
「……どうしてだって? 君は母親から何も聞いていないんだな。君の母がルェイン国から出たのは私から逃げる為だった。彼女の家族も、使用人も、婚約者も全て私が殺した。彼女が国民人気の高い女性だったからだ。ルェインにはまだ女王制度は無かったが、それすら時間の問題な程に……あの人が姉で無ければ結婚して私の横に置いて置きたいと思う程、良い女だったよ」
……そうなんですか、私もお母様から何も聞いておりません。お母様は急死でしたし、そもそもそんな話、怖くて出来なかったのかもしれません。
「なのにお前を見てガッカリした」
「えっ、えっ?」
ルアジェ陛下の目が冷たく眇まります。
「男の誘いに簡単に乗り、全てを捧げるのにも時間が掛からなかったな。加えて未通でも無かった。私の子だと? 本当は誰の子だ!?」
えっ?
「そ、そんな……あなたの子でしょう? 私、私は……」
「……覚えがあるのは私だけでは無いという事だ」
「何よそれ! 横暴だわ!」
そうでしょうか……
「私はお前を知れば知るほど余りにも姉上とかけ離れている事に失望していった」
「そ、そんなの仕方がない、じゃない」
サリーシェの声が引き攣ります。
流石に激昂しているルアジェ殿下に、命乞いの為に本物に成り代わったと言う気は無いのでしょう。ルアジェ陛下は愛より血を重んじていたようですから、罪が深まるばかりです。
「そうだな、お前は偽物だものな」
あ、知っていましたか……
「外見だけならず、内面も姉上とそこまで違えば疑いもするさ」
ルアジェ陛下の怒気を孕む言葉にサリーシェはヒッと悲鳴を上げて後退ります。
「お前は私を謀ったばかりでなく、私と姉上の子の邂逅をも邪魔をした……よくも私にどこの馬の骨とも知れない女の身体などに触れさせてくれたな!」
「いやあ! 許して! 許して下さい!!」
サリーシェの声を無視し、陛下は逃げようと身を捩るサリーシェに剣を振るい黙らせました。
動かなくなった彼女を部下に命じて処分を言い渡し、陛下は血濡れた寝室を後にします。
私は陛下に会わなくて良かったと思いました。
会ったところでサリーシェと同じように因縁をつけられて殺されていたのかもしれませんしね。
私の人生の岐路は死亡フラグばかり転がっていたようです。
それにしてもサリーシェが死んでしまった今、私は何処へ行きましょうか。もうルアジェ陛下に着いてルェイン国へ行く気は無くなってしまいました。
「アリア……」
名を呼ばれて振り返ります。
ルアジェ陛下は月を見上げて私への冥福を祈っているように見えました。
ごめんなさい陛下……文化や法律の違いはあるかもしれませんが、正直姪と関係を持つことを厭わない人に少しばかり嫌悪感を抱いておりました。
でも私が死んで初めて祈りを捧げてくれたのは、ルアジェ陛下なんですよね。────ありがとうございます。そしてさようなら陛下。
私は陛下に向かい丁寧にカーテシーを取りました。
そして顔を上げるとそこは見知らぬ場所……いえ、知っています。そこはレアンドロ様の邸、ウォッズ侯爵邸でありました。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
妹に婚約者を寝取られましたが、私には不必要なのでどうぞご自由に。
酒本 アズサ
恋愛
伯爵家の長女で跡取り娘だった私。
いつもなら朝からうるさい異母妹の部屋を訪れると、そこには私の婚約者と裸で寝ている異母妹。
どうやら私から奪い取るのが目的だったようだけれど、今回の事は私にとって渡りに舟だったのよね。
婚約者という足かせから解放されて、侯爵家の母の実家へ養女として迎えられる事に。
これまで母の実家から受けていた援助も、私がいなくなれば当然なくなりますから頑張ってください。
面倒な家族から解放されて、私幸せになります!
王子と公女の婚約破棄騒動 その結末を誰も知らない
ミカン♬
恋愛
王子と公女の婚約破棄の話です。
ルシアン王子は矜持の高い公女カシアを学園追放してやろうと断罪を始めた。
愛する子爵令嬢のユリアをいじめて悲しませるカシアを絶対に許せなかった。
だが生意気なカシアは自分の非を絶対に認めない。
「婚約は破棄する!」怒りに任せて叫ぶと、なぜか二人は入れ替わってしまった。
後半はほんの少しBL要素があるので苦手な方は*****まで読んで頂けると内容は分かって頂けると思います。
小説家になろう様にも投稿中です。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。
和泉 凪紗
恋愛
伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。
三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。
久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる