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6. サリーシェは……

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 ですが次の日の晩、ルアジェ陛下の寝室でサリーシェは殺されてしまいました。
 冷たい瞳で刃物を向けるルアジェ陛下に、サリーシェは涙ながらに訴えます。

「どうして……どうしてこんな事をするのよ! ルアジェ!」

「……どうしてだって? 君は母親から何も聞いていないんだな。君の母がルェイン国から出たのは私から逃げる為だった。彼女の家族も、使用人も、婚約者も全て私が殺した。彼女が国民人気の高い女性だったからだ。ルェインにはまだ女王制度は無かったが、それすら時間の問題な程に……あの人が姉で無ければ結婚して私の横に置いて置きたいと思う程、良い女だったよ」

 ……そうなんですか、私もお母様から何も聞いておりません。お母様は急死でしたし、そもそもそんな話、怖くて出来なかったのかもしれません。

「なのにお前を見てガッカリした」

「えっ、えっ?」

 ルアジェ陛下の目が冷たく眇まります。

「男の誘いに簡単に乗り、全てを捧げるのにも時間が掛からなかったな。加えて未通でも無かった。私の子だと? 本当は誰の子だ!?」

 えっ?

「そ、そんな……あなたの子でしょう? 私、私は……」

「……覚えがあるのは私だけでは無いという事だ」

「何よそれ! 横暴だわ!」

 そうでしょうか……

「私はお前を知れば知るほど余りにも姉上とかけ離れている事に失望していった」

「そ、そんなの仕方がない、じゃない」

 サリーシェの声が引き攣ります。
 流石に激昂しているルアジェ殿下に、命乞いの為に本物に成り代わったと言う気は無いのでしょう。ルアジェ陛下は愛より血を重んじていたようですから、罪が深まるばかりです。

「そうだな、お前は偽物だものな」

 あ、知っていましたか……

「外見だけならず、内面も姉上とそこまで違えば疑いもするさ」

 ルアジェ陛下の怒気を孕む言葉にサリーシェはヒッと悲鳴を上げて後退ります。

「お前は私を謀ったばかりでなく、私と姉上の子の邂逅をも邪魔をした……よくも私にどこの馬の骨とも知れない女の身体などに触れさせてくれたな!」

「いやあ! 許して! 許して下さい!!」

 サリーシェの声を無視し、陛下は逃げようと身を捩るサリーシェに剣を振るい黙らせました。
 動かなくなった彼女を部下に命じて処分を言い渡し、陛下は血濡れた寝室を後にします。

 私は陛下に会わなくて良かったと思いました。
 会ったところでサリーシェと同じように因縁をつけられて殺されていたのかもしれませんしね。
 私の人生の岐路は死亡フラグばかり転がっていたようです。

 それにしてもサリーシェが死んでしまった今、私は何処へ行きましょうか。もうルアジェ陛下に着いてルェイン国へ行く気は無くなってしまいました。

「アリア……」

 名を呼ばれて振り返ります。
 ルアジェ陛下は月を見上げて私への冥福を祈っているように見えました。
 ごめんなさい陛下……文化や法律の違いはあるかもしれませんが、正直姪と関係を持つことを厭わない人に少しばかり嫌悪感を抱いておりました。
 でも私が死んで初めて祈りを捧げてくれたのは、ルアジェ陛下なんですよね。────ありがとうございます。そしてさようなら陛下。

 私は陛下に向かい丁寧にカーテシーを取りました。
 そして顔を上げるとそこは見知らぬ場所……いえ、知っています。そこはレアンドロ様の邸、ウォッズ侯爵邸でありました。
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