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第一章
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森は息苦しいほどに深く、下草も長く、くるぶしまでがすっかり埋まってしまった。茂る枝をかき分けて進むも、ゆけどもゆけども噎せ返るような緑ばかり。
「まったく、何だってこんな……」
朴文秀はぼやいた。枝をかき分けた拍子に尖ったところに短衣のめくれた腕を引っかかれ、白く皮が剥けた。痛い、とひとりで文句を言いながら傷を撫で、大きく息をつく。
「急に、こんなに深くなって。さっきまで草も木もこんなに生えてなかったのに、急にこんな……」
文秀の鞋は太い木の根を踏み、転びそうになって慌てる。慌てて掴んだ目の前の枝は対照的に細くて、掴むとぽきりと折れてしまった。
「うわ、わぁっ!」
折れた枝を掴んだまま、文秀は転んだ。しかし深い下草が体を支えてくれて、痛みはそれほどではない。背負った雑嚢も、落とさずに済んだ。
「いたた……」
しかし、転んだことには変わりない。薄汚れた脚衣に緑の沁みがつく。ぶつけた膝を撫でながら、文秀は立ち上がった。
「本当に、何なんだこの森は……?」
まわりを見回す。文秀が歩いていたのは、緑豊かとはいえ歩くのに支障ない森だったはずだ。それなのに、ひとつ細い川をまたいで越えたところから急に緑が深くなった。あの川のあちらとこちらでは、緑を育てる大地の滋養が違うとでもいうようだ。下草は長く、這う木の根は太く、木は見上げても先端が見えず、目の前の葉もより多く水分を含んでいるかのように厚く大きい。
そのうちのひとつをちぎってみようとする。しかし葉はしっかりと枝にくっついていて、なかなかちぎれない。それだけでも、こちら側の緑の深さがよくわかる。
「あの川は、何かの境なのかな? あちらとこちらでは、違う山から水が沁み出しているとか? こちらの山のほうが、栄養のある土でできているとか?」
文秀がしきりにひとりで話しながら歩くのは、心細いからだ。彼はもともと呑気な性質だが、川ひとつ挟んでの森の変化のほど、さらにはこの緑の深さに太陽の陽も充分届かないとあっては不安にもなる。どこからどんな動物が出てくるかもわからないし、このような場所では幽鬼や妖怪変化の類が現われても不思議ではない。
いやむしろ、出て来るほうが自然なのではないだろうか。ここは人間のための場所ではない。体を失い恨を抱いてさまよう魂魄や、長く生きたものや動物が変化した幻妖たちが徘徊する場所。
そう考えると、ぞくりとした。あの川は、人の世と人ならぬものをわける境界線だったのではないのだろうか。越えてはいけないものだったのではないのだろうか。文秀は来てはいけないところに来てしまい、だからこれほどに不安なのではないのだろうか。
「……戻ったほうがいいかもな」
ひとり、震えながらつぶやく。しかし周りを見回しても、どちらが自分の来た方向なのかわからない。きょろきょろと見回して、せめて少しでも下草の短い方、伸びた枝の短い方へ進もうとした。それでも、鞋は緑に埋まってしまう。
ゆけどもゆけども、どの方向もあふれんばかりの緑でいっぱいだ。ともすればこの緑の深さは、妖魔の術なのではないだろうか。人ならぬものが文秀の目に術をかけて、行くべき方向さえ見失わせているのではないだろうか。
「どっち、行ったらいいんだ……」
文秀は視線をうろうろとさまよわせる。この森の深さが妖怪変化の仕業かもしれないと考え始めると、まわりの緑が恐ろしいものに見えてくる。今にも大きな虎でも出てきて、牙の生えた巨大な口を開けてぱくりと文秀を呑み込んでしまいそうな、そんな錯覚にとらわれた。
「いったい、どこに……」
焦燥に、足取りが覚束なくなる。また木の根に足を取られて転びかけ、慌てて手もとの木の枝を掴んで、今度は枝は折れなかったがぬかるみになったところに鞋の裏がすべり、したたかに臀を打った。
「い、ってぇ……」
地面に座り込んだ文秀は、痛みに顔を歪めながら視線をあげる。顔を上げた向こう、がさり、と緑が動くのが見えた。
「わ、あああっ!」
妖怪変化か、妖魔か。人ならぬものか。文秀の頭にはそれしかなかった。懸命に教典の言葉を思い出そうとするのだが、もともと信心深くない文秀は神事である八関会にも熱心ではなく、とっさに天の神の言葉ひとつも思い出せない。
「ああぁぁっ……!」
文秀の悲鳴は、口の中で消えた。現われたのは、文秀が四つ足で立ったよりもずっと大きな虎だった。虎というだけでも充分恐ろしい。しかもそれが年振りて変化した妖怪であったとしたら。単に食われて終わりではないかもしれない。体だけではなく魂まで食われて、恨を抱いてさまよう死霊にさえなれないかもしれない。
文秀は胸の前で両手を組んだ。ほとんど無意識の行動だったが、今までないがしろにしてきた天の神にすがろうとした。持っている武器らしい武器は、小刀ひとつ。しかもそれは雑嚢の中に入っているとあっては、今の文秀にはほかになにもすがれるものがなかったから。
「……ぁあああっ?」
咽喉を嗄らす悲鳴の語尾が上がったのは、こちらに向かって歩んでくる虎以外の、新たな影を見たからだ。それが、人の形をしていたからだ。
大きな虎の背には、人が乗っていた。鮮やかな樺色の短衣と、真紅の裳をまとった女性だった。
「あ……っ……?」
その場に座り込んだまま、文秀の目は女性に釘づけられた。編んだ髪は艶やかに長く、顔は陽の光など受けたことがないかのように白く、小さく丸い。眉は柳の葉のようで、目は大きく黒目がち。すっと通った鼻梁に、小さい唇は紅などには表せない、深い、不思議な艶やかさをもった赤だった。
「あぁ、あああ?」
虎の上に、美しい女性が乗っている。その手は虎の首にかけられていて、その柔らかそうな毛並みに白く小さな手が埋まっている。
「ああああ……?」
文秀はただ声を上げるばかりだ。死霊や妖怪変化の出そうな深い森の中、現われた大きな虎。黄色と黒の模様も鮮やかに、その毛並みも艶やかな虎は、黒い瞳で文秀を見ている。その背に乗る女性も文秀を見ていて、しかしその表情は驚いていた。どうして人間がここにいるのかというようだ。
「あああ、あぁぁ……?」
文秀の言葉は震えてしまう。下草の上に座り込んだまま、大きく目を見開いて女性と虎を見ている。唇はわななき開いた目の縁も震えて、しかし動くのはそこだけ。文秀は石像のようになって、目の前の光景を見ていた。
これほどに美しい女性が、人間であり得るのだろうか。彼女こそ、妖魔かもしれない。美しい女に化け、人を惑わせ死に導くという。
女性の、赤い唇が開く。文秀は、びくりと震えた。
「人間か?」
女性の第一声は、それだった。いきなり問われるには不可解な質問だ。文秀が、人間以外の何に見えるというのだろう。そう言う彼女こそ、人間なのだろうか。
しかしその声は澄んで高く、彼女の容姿を裏切らない。その鈴のような声を前に、文秀の口は動かなかった。女性に何かを問い返すという思考さえも働かないまま、ただこくこくと頷いた。
「お前、なぜこんなところに?」
訝しいという表情を隠しもしない女性は、問いを重ねる。
「なぜ、ここに立ち入ることができる? 術者か? それとも男巫か?」
文秀は、今度は首を左右に振った。黒髪が、頬を打った。
女性は虎の背に座ったまま、文秀を見つめている。その美しすぎるほどに美しい相貌がまっすぐ自分の方に向いていることに、仮に彼女が妖魔だとしても、胸を掴まれないはずはない。文秀はどきどきと胸を高鳴らせたまま、なおも目を見開いて女性を見ていた。
虎の首に置いた手に力を込め、女性はひらりとその背から降りた。真紅の裳がふわりと舞う。それを見つめる文秀の前、女性はひざまずき、じっと文秀の額あたりを見た。
「ふむ、なるほど。わずかながらに術師の気が」
「へ?」
彼女の言葉の意味がわからなくて、文秀はきょとんとする。それでいて同時に、直感した。
彼女は人間だ。その直感の根拠はよくわからない。しかし文秀を貫くようにとおりに抜けたのは、彼女が『同族』であるという感覚で、それは本能のように文秀を捉えた。
女性はすぐに立ち上がり、文秀の前、裳をさばいて踵を返す。
「あ、の……!」
女性は裳を翻しながら、虎のもとへ戻る。白い手をその毛並みに置き、再び飛び乗ろうとするすっと伸びたまっすぐな背に向かって、文秀は声をあげた。
「わ、私は、姓は朴、名は文秀! 見てのとおり、あてのない旅人です!」
女性は振り返る。いきなり何だ、とでもいうようだ。
「お嬢さん、あなたの、お名前をお聞かせください!」
彼女は訝しげに文秀を見ている。その厳しい表情に、文秀はますます声をあげる。
「ここでお会いしたのも、何かのご縁。ぜひとも、お名前をお聞かせください!」
食い下がる文秀に、女性はますます訝しげな顔を見せている。しかしややあって、口を開いた。
「……柳華虹だ」
「素敵なお名だ」
恐怖も忘れて、文秀は思わずそう言っていた。
「あなたにふさわしい。ぴったりのお名ですね」
「……それは、どうも」
なおも訝るような表情のまま、華虹は文秀を一瞥して、そして再び踵を返す。虎の背に乗りかけた華虹を追って文秀は慌てて立ち上がり、彼女を追った。
「その虎は、あなたの……飼い虎ですか?」
飼い犬や飼い猫という言葉はあるが、飼い虎という言葉は寡聞にして聞かない。しかしそれ以外に言いようがなくて、虎の首に手を這わせる華虹に文秀はそう問う。虎の頸を撫でながら、華虹は言った。
「順興だ」
「順興?」
何のことかと首をかしげ、それが虎の名であることに気がついた。
「何だか、普通の名前ですね」
「何だ、普通だとは」
「動物につける名前にしては、まるで人間のような……」
華虹は、わずかに顔を歪めた。彼女の気分を害したかと焦ったが、美女は、顔を歪めても美しい。文秀は思わず、華虹に見とれる。
しかし華虹は何も言わず、順興を撫でる。そうやって撫でられていると、虎はまるで大きな猫のようだ。思わず手を伸ばした文秀に順興がぐるる、と唸らなければ、本当に大きな猫なのではないかと思ってしまうくらいだ。
「慣れているのですね」
「長いつきあいだからな」
言って、華虹はひらりと順興に飛び乗る。よく見れば、順興の背には雑嚢がくくりつけてある。再び順興の上に乗った華虹は、先を行けというようにぽんぽんと首筋を叩いた。
順興は歩き出す。大きな足が下草を踏むのを、文秀は慌てて呼び止めた。
「あの、華虹さま!」
華虹は、首をだけを回して振り返る。文秀は、声をあげた。
「先ほども申しましたが、私はあてのない旅人。よろしければ、ご一緒させてくださいませ!」
じっと華虹の返事を待つ文秀を、華虹は見つめる。彼女は目をすがめ、言った。
「我々の旅は、居場所をなくした者の流浪の旅。困難な道を行くことを宿命づけられている。そのような道のりに、お前程度の術師が耐えられるとは思えないが」
「流浪の旅なら、私も一緒です!」
文秀は、今にも華虹の手を掴みそうな位置で言った。華虹が、警戒するようないやがるような、複雑な表情を見せる。
「あなたのような方とご一緒できたら、どれほど幸福なことでしょう。ぜひ、ご一緒させてください!」
「……なぜお前は、旅を?」
問われて、文秀は頭を掻いた。肩をすくめて苦笑いを見せる。
「お恥ずかしい話です。亡くなった親に譲られた家屋敷、財産をすべて失ってしまいましてね。居場所もなく、生まれ故郷を出てきたわけなんです」
「それは……」
その話に、華虹は眉根を寄せた。気の毒だと言わんばかりにせつなげな表情をする華虹に、しかし文秀は苦笑いを濃くする。
「いやまぁ、自業自得なのですけれどね」
言いながら、右手で何かを握る形を作って、くいっとひねってみせた。
「なに……?」
「まぁ、そういうことです」
文秀は、ぽりぽりと頭を掻いた。華虹は、いったんは見せたせつなげな表情をぐいと歪める。顎を引き、同情から一転、軽蔑するような顔をした。
「愚か者が」
「まぁ、そう言われると痛いですが」
苦笑いする文秀の取った手の動きは、賭けごとを表わすものだ。つまり親から譲られた財産をすべて賭けごとで失ったという文秀に背を向けた華虹が虎の頸を叩くと、虎が駆け出す。
「あ、待ってくださいよ~!」
文秀は華虹たちを追いかけて走り出し、下草に隠れた木の根につまずいて、転ぶ。痛っ、と声をあげながらも、華虹のほうに手を伸ばす。
「華虹さまぁ~」
地面に倒れ伏しながら、情けない声をあげる文秀の足もと、きゅっと巻きついてきたものがあった。
「……ん?」
転んだまま、文秀は自分の足もとを見る。しかし草に埋まった足がどうなっているのか、目が届かない。
「な、に……」
巻きついてきたものは、足首を締めつける。強く締めつけられて、転んだ痛みよりそちらのほうがひどくなり、文秀は強く顔をしかめた。
「な、なんなんだ……?」
と、何かが巻きついた片足がひょいと宙に浮く。文秀は片足を何かに掴まれたまま、宙に逆立ちすることになった。
「うわ、わぁぁ!」
短衣がめくれて腹が丸出しだ。いや、それどころではない。文秀の足には植物の蔓が巻きついていて、それが文秀を持ち上げたのだ。
「うわあぁ、何だこれはー!」
蔓には意志があるかのように文秀を宙につり上げ、左右にゆらゆらと揺らしている。まるで獲物を見つけたと言わんばかりだと感じた。どこかでぱっくりと開いた口が待っていて、ごくりと呑み込まれてしまうのではないかという想像が、脳裏を横切った。
「助けて、助けて~!」
情けない声をあげる文秀を前に、華虹が順興から飛び降りる。彼女は素早く、腰に手をやった。
そこから現われたのは、輝く刃だ。華虹は、剣など身につけていただろうか。不思議に思う間もなく文秀はつり下げられたまま、ぶんぶんと振り回される。
「わぁ、ああ!」
「――やっ!」
華虹が、気合いの声とともに剣を振るう。剣が蔓を切り裂き、文秀は地面にどさりと落ちた。
「ぎゃっ!」
いきなり地面に叩きつけられて、悲鳴を上げる。華虹が駆け寄ってきた。
「大丈夫か!」
「ど、どうにか、大丈夫ですぅ……」
文秀は、情けない声をあげた。ぶつけた腰を撫でる文秀の前に、白い手が差し出される。
「立てるか」
「あ、ありがとうございます……」
思わぬ機会に、華虹の手に触れることができた。手は意外に固く、それが剣胼胝であることに気がついた。
美女に、剣胼胝。その不釣り合いは妙に艶めかしく感じられ、そのことに文秀はどぎまぎした。剣胼胝のできた手は冷たく、その冷ややかさにも胸を掴まれた文秀は手を力を込め、華虹の手に引き上げられる。
「どうも……」
宙づりになっていたところを地面に落とされたのだ、衝撃はひどかった。しかし華虹の手に触れられたという僥倖に、痛みなど忘れてしまう思いだ。
それでも、叩きつけられた痛みに少しよろよろしながら、文秀は立ち上がった。
「何だったんですか、あれは」
「妖魔だ」
腰の鞘に剣を収めながら華虹がさらりとそう言ったので、文秀は大きく目を見開いた。
「よ、妖魔……?」
「ああ」
思わず自分の足もとを見る。そこには叩き切られた植物の蔓があった。そうしてみるとただの蔓なのに、しかしそれは確かに文秀の足に巻きつき、宙につり下げたのだ。
「本物なんて、初めて見ました……」
妖魔というものの存在を知らないわけではない。しかしそれは死霊に妖怪変化と同じく、普通に生きている人間が出くわすことはないものだ。文秀にとっては、その存在を恐れこそすれ、実際に会うことなど考えてもいないものだ。
そんな文秀を、華虹は少し困ったように見た。見れば彼女の腰の鞘は、そこにそれがあるということを知らなければ見つけられないほどに小さい。先ほど見た剣はもっと大きくて、文秀の腕ほどの長さがあったと思うのに。
「それに、その剣も……さっきはもっと大きかったですよね。いったい、なぜ……」
疑問符を頭にぐるぐると巡らせる文秀は、さらなる驚きに大きく目を見開いた。
「わぁ……あ、あぁ!?」
目の前に、男がいたのだ。背は文秀より拳ふたつぶんほど大きい。きっちり髷を結った艶やかな髪、鋭い瞳、整った鼻梁。薄い唇にすらりとした体躯。しかし短衣と脚衣の上からも、彼が鍛え抜かれた武人であることがわかる。
「だ、誰……」
「順興」
華虹は言って、少し微笑んだ。今まで固い表情を崩さなかった華虹が微笑んだということにも驚いたが、何よりも、その男だ。
「順興? 順興って……」
それは、虎の名ではなかったか。そういえば、虎はどこにもいない。あれほど大きな虎なのだ、いくら緑が深くても身を隠すことなどできようはずもないのに。
「あの、いったい……どういう……」
文秀の頭には、疑問符ばかりが浮かんでいる。目の前の不思議への混乱に、足もとがよろりとよろめいた。
「気がつかなかったのか? ここまで入り込んできておいて……おかしな男だ」
「華虹さま」
そう言ったのは、男――華虹の言葉を信じるとすれば、順興だ。その声は低く落ち着いていて、耳に心地いい美声だった。その整った容姿のほども、美しい声のほども、男として嫉妬を覚えずにはいられない。美丈夫を前に文秀は彼を睨みつけたが、男は文秀のほうなど見てはいなかった。
「朴氏は、わずかでも術師の気のある方。その術師の才が、今まで妖魔を遠のけていたのではないでしょうか」
文秀を名字で呼んで、男は言った。文秀の名を知っているということは、やはり彼は順興なのだろうか。
「お前もそう思うか……?」
そう言って、華虹は文秀をじっと見やる。美しい黒い瞳で見つめられ、文秀はたじろいだ。
華虹は言った。
「ここは、妖魔の森だ」
「妖魔の、森……?」
聞かされた言葉を繰り返す文秀に、華虹も順興も頷いた。
「ここに来るまでに、川を越えただろう」
川。ひょいとまたげるほどの川を、文秀は確かに越えた。あれを越えてから急に森が深くなった。あれが何か、ただの細い川ではないのではないかと思ったことを思い出す。
「あの川……! やはり、何かの境界だったのですか!」
勢いづく文秀に、華虹は頷いた。
「あれは、人間の森と妖魔の森をわける仕切りだ。通常の人間に、あれを越えることはできない。普通は、見ることもできない――」
そう言って、華虹はじっと文秀を見る。まるで試されているような視線に、文秀は思わず一歩後ずさりをした。
「お前の術師の気は、本物のようだ。たとえ、弱く細いものであってもな」
「待ってください、待ってください!」
文秀は声をあげる。何だ、というように華虹は少し首をかしげる。
「妖魔の森とか、術師の気とか、おかしな蔓とか境界の川とか、虎がいなくなって男が現われたとか……いったい何なんですか!?」
尋ねる文秀に、華虹はそんなことを言う彼こそ不思議だというように眉根を寄せる。
「お前、まったく心当たりがないのか」
「ありませんよ!」
わめくように文秀は言った。
「私の人生に、今までこんなことはなかった……今までおかしなことなんて、一回もなかったのに!」
思わず頭を抱える。そんな文秀を困ったように見やっていた華虹は、ひとつ息をついた。
「ここは、妖魔の支配する森。ここでは人間の常識は通用しない。ここに入ってこられる人間は、術師や巫人
ムーダン
だけだ。お前には、わずかながらに術師の気がある。今までに、そんな自覚はなかったか?」
「術師の、自覚……?」
術師とは、人ならぬ力を使って不思議な技を使う者たちのことだ。そういう者たちがいるということは知っている。困ったことがあるとき、そういう者たちを訪ねる人々もいるということを。しかし文秀はそういう者たちを訪ねたこともなければ見たこともなく、根本的に存在を信じてもいなかった。
「そもそも、術師って何なんですか」
文秀の質問に、華虹は少し目を見開き面白そうな顔をした。華虹のそんな表情は意外で、文秀は目を見開いた。笑うと、普通の娘のようにかわいらしい。そう思ったことは、もちろん口には出さなかったけれど。
華虹は言った。
「術師とは、天の神の力を借りて技をなす者のことだ。呪語を唱え、水や風を操ったり、妖魔と戦うなどということをする」
「じゃあ、華虹さまもそうなのですか?」
文秀の問いに、華虹はまた薄く微笑む。ずっと笑っていればいいのに、と文秀は思った。厳しい顔をしている彼女も美しいが、笑うと角が取れてかわいらしくなる。初めて会ったときもそう思ったが、今の彼女は飛び抜けた美女だ。
「そうだな。私も術師だ」
「では、その……」
恐る恐る、文秀は華虹の傍らを見る。虎であった青年――順興だという彼を、目だけを動かして見やる。
「私は、術師ではありません」
順興は言った。文秀は、目をぱちくりとさせる。
「では……?」
文秀の質問に、順興は少し視線を泳がせた。言いにくそうにする彼に、それはなぜなのかと考えた。
「そもそも私は、人ではありませんから」
「人で、ない……」
不思議なものなら見た。自分を足を絡めとり、つり下げた蔓だ。しかし、人の姿を取っていながら人でないという彼を前に、にわかにはその言うことが信じられない。
「では、なに……」
はっと気がついた文秀は、思わず身構え握った拳を胸の前に突き出す。
「妖魔……!?」
いや、妖魔なら華虹に付き従っているはずはない。それとも華虹は強力な術師のようだから、華虹が従えたのだろうか。華虹の眷属として仕えているのかもしれない。
身構える文秀に、順興は笑った。肩をすくめ、困ったような苦笑だ。その笑いは文秀にではない、自分自身に向けられているように感じた。なぜ自嘲するのだろうと、文秀は身構えを解く。
華虹は眉をひそめ、順興を見やる。自嘲する彼を労るような表情だ。彼女は文秀の方に顔を向け、少し苦しげに言った。
「順興は、精霊だ。虎のな」
「精霊……」
また、耳慣れない言葉が出てきた。もちろん聞いたことはあるが、身近に感じたことなどない言葉だ。
「妖魔と精霊は、どう違うのですか」
そう尋ねると、今度苦笑したのは華虹のほうだ。順興と同じような、自嘲的な笑み。何か悪いことを言っただろうかと、文秀は焦る。
少し考えた華虹は、唇を歪めたままつぶやいた。
「そうだな、どうも違わない……我々人間に味方するものか、敵対するものか。それだけの違いだ」
華虹の苦笑は、妖魔と精霊の違いが自分たち人間の基準に置かれたものだからなのだろう。しかし、華虹も文秀も人間なのだ。自分たちを世界の中心ととらえるのは、無理もないことだろう。
「人間も、妖魔の一種。そう考えるものもある。ただ少し、数が多いだけのな」
「えぇぇ?」
先ほどのうごめく蔦のようなものと、人間を一緒にされてはかなわない。そう考え顔を歪めた文秀に、華虹は少し笑った。しかし再び、厳しい表情をする。
「お前は術師とはいえ、その気は薄いうえに訓練もしていない。その身でこのまま妖魔の森を抜けるのは難しいだろう。森の外まで送ってやる。お前は、人の道を行け」
「いえ、いいえっ!」
文秀は叫んだ。
「一緒に行きます、行かせてください! 言いましたでしょう、私はあてのない旅人! どこへ行こうと構う者はありませんし、待っている者もおりません!」
「なぜ、行きたがる。先ほどのような目に遭うかもしれないのだぞ?」
「……それは」
文秀は、思わず視線を逸らせる。そんな文秀の心のうちに、順興は気がついたのだろうか。色だけは虎の姿の時と同じその目を、じろりと向けてくる。
「……あの、珍しいものが見られそうですし」
このような美女と一緒に旅できる僥倖など、そうそうあるものではない。それを逃す気などさらさらないし。
「私が術師だというのも、気になりますし」
このような美女を見ていられるのなら、多少の危険などどうだというのだ。虎の精霊だという順興と彼女がどのような関係なのかは気になるが、見たところ恋人同士だというようではなさそうだし。
「ここでお目にかかったのも、ご縁という以外ありますまい。ぜひとも、お供させてくださいませ」
それなら、文秀が口説いてもいいのではないか。先がない旅だというのなら、一緒にいられる時間にも先はない。その間に恋仲になることだってできるのではないか。
「お願いします、華虹さま!」
華虹は、やや難しい顔をして立っていた。腕を組み、じっと文秀を見やる。その瞳が文秀の心のうちを見抜こうとしているようで文秀は下心を見抜かれたかと身をすくめる。
術師だという彼女に、文秀の下心を見抜く力が宿っているのかどうかはわからない。ただ彼女はじっと文秀を見つめ、ちらりと順興を見やり、再び文秀を見やって、言った。
「先ほどのような目に、また遭うぞ? あの程度で済めばいい、しかしもっと強力な――狐や鼬、狼や熊の妖魔など、お前の手には負えまい」
「熊なんて、それが妖魔じゃなくったって負えません」
華虹の言葉に頷きながら、文秀は言った。
「でも、恐ろしくはありません。だって、華虹さまがお救いくださるでしょう?」
「……はぁ?」
そう言った文秀に、華虹は呆れたような顔をした。その後ろに立つ順興も、同じく呆れて文秀を見ている。
「だって、華虹さまはあんなに立派な剣をお持ちじゃないですか。しかも、その剣胼胝! 並の剣士ではない。しかも術師となれば、狼だろうが熊だろうが、恐るるものなし、というところでしょうに!」
「何を言う」
冷ややかに、華虹は言った。
「私は、助けん。自分の身は、自分で守れ」
「えぇ、そんなぁ!」
文秀の上げた情けない声に、華虹は笑う。小さく噴き出しただけの笑いだったけれど、その笑顔に文秀は、彼女が同行を許してくれたのだということを知った。
そんな華虹の心は、順興にも伝わったらしい。順興はむっとした顔をしている。華虹の決断が気に入らないらしいが、彼には華虹の決定に口を差し挟む力はないらしい。
(このふたりは、いったいどういう関係なのだろう)
恋人同士でないということは、文秀の直感が告げている。主従なのだろうが、人間である華虹と精霊である順興が、どういういきさつでともに旅をしているのか。
聞いても答えてはくれないだろうというのが、文秀の直感だ。となればそれは、この先探っていくべき謎になるだろう。
(まぁ、旅は長くなりそうだし)
そしてまた恐ろしい目に遭うかもしれない。しかし何がおかしかったのか、文秀の言葉に笑っている華虹の笑顔に、先ほど蔓につかまったときの恐ろしさは、すっかり消えてしまった。
(楽しくなりそうだ)
鼻歌でも歌い出したい気分で、文秀は華虹のもとに歩み寄る。そして先を指差して言った。
「さ、まいりましょうか。華虹さま」
華虹はまた、堪えきれないというような小さく噴き出す笑顔を見せた。
「まったく、何だってこんな……」
朴文秀はぼやいた。枝をかき分けた拍子に尖ったところに短衣のめくれた腕を引っかかれ、白く皮が剥けた。痛い、とひとりで文句を言いながら傷を撫で、大きく息をつく。
「急に、こんなに深くなって。さっきまで草も木もこんなに生えてなかったのに、急にこんな……」
文秀の鞋は太い木の根を踏み、転びそうになって慌てる。慌てて掴んだ目の前の枝は対照的に細くて、掴むとぽきりと折れてしまった。
「うわ、わぁっ!」
折れた枝を掴んだまま、文秀は転んだ。しかし深い下草が体を支えてくれて、痛みはそれほどではない。背負った雑嚢も、落とさずに済んだ。
「いたた……」
しかし、転んだことには変わりない。薄汚れた脚衣に緑の沁みがつく。ぶつけた膝を撫でながら、文秀は立ち上がった。
「本当に、何なんだこの森は……?」
まわりを見回す。文秀が歩いていたのは、緑豊かとはいえ歩くのに支障ない森だったはずだ。それなのに、ひとつ細い川をまたいで越えたところから急に緑が深くなった。あの川のあちらとこちらでは、緑を育てる大地の滋養が違うとでもいうようだ。下草は長く、這う木の根は太く、木は見上げても先端が見えず、目の前の葉もより多く水分を含んでいるかのように厚く大きい。
そのうちのひとつをちぎってみようとする。しかし葉はしっかりと枝にくっついていて、なかなかちぎれない。それだけでも、こちら側の緑の深さがよくわかる。
「あの川は、何かの境なのかな? あちらとこちらでは、違う山から水が沁み出しているとか? こちらの山のほうが、栄養のある土でできているとか?」
文秀がしきりにひとりで話しながら歩くのは、心細いからだ。彼はもともと呑気な性質だが、川ひとつ挟んでの森の変化のほど、さらにはこの緑の深さに太陽の陽も充分届かないとあっては不安にもなる。どこからどんな動物が出てくるかもわからないし、このような場所では幽鬼や妖怪変化の類が現われても不思議ではない。
いやむしろ、出て来るほうが自然なのではないだろうか。ここは人間のための場所ではない。体を失い恨を抱いてさまよう魂魄や、長く生きたものや動物が変化した幻妖たちが徘徊する場所。
そう考えると、ぞくりとした。あの川は、人の世と人ならぬものをわける境界線だったのではないのだろうか。越えてはいけないものだったのではないのだろうか。文秀は来てはいけないところに来てしまい、だからこれほどに不安なのではないのだろうか。
「……戻ったほうがいいかもな」
ひとり、震えながらつぶやく。しかし周りを見回しても、どちらが自分の来た方向なのかわからない。きょろきょろと見回して、せめて少しでも下草の短い方、伸びた枝の短い方へ進もうとした。それでも、鞋は緑に埋まってしまう。
ゆけどもゆけども、どの方向もあふれんばかりの緑でいっぱいだ。ともすればこの緑の深さは、妖魔の術なのではないだろうか。人ならぬものが文秀の目に術をかけて、行くべき方向さえ見失わせているのではないだろうか。
「どっち、行ったらいいんだ……」
文秀は視線をうろうろとさまよわせる。この森の深さが妖怪変化の仕業かもしれないと考え始めると、まわりの緑が恐ろしいものに見えてくる。今にも大きな虎でも出てきて、牙の生えた巨大な口を開けてぱくりと文秀を呑み込んでしまいそうな、そんな錯覚にとらわれた。
「いったい、どこに……」
焦燥に、足取りが覚束なくなる。また木の根に足を取られて転びかけ、慌てて手もとの木の枝を掴んで、今度は枝は折れなかったがぬかるみになったところに鞋の裏がすべり、したたかに臀を打った。
「い、ってぇ……」
地面に座り込んだ文秀は、痛みに顔を歪めながら視線をあげる。顔を上げた向こう、がさり、と緑が動くのが見えた。
「わ、あああっ!」
妖怪変化か、妖魔か。人ならぬものか。文秀の頭にはそれしかなかった。懸命に教典の言葉を思い出そうとするのだが、もともと信心深くない文秀は神事である八関会にも熱心ではなく、とっさに天の神の言葉ひとつも思い出せない。
「ああぁぁっ……!」
文秀の悲鳴は、口の中で消えた。現われたのは、文秀が四つ足で立ったよりもずっと大きな虎だった。虎というだけでも充分恐ろしい。しかもそれが年振りて変化した妖怪であったとしたら。単に食われて終わりではないかもしれない。体だけではなく魂まで食われて、恨を抱いてさまよう死霊にさえなれないかもしれない。
文秀は胸の前で両手を組んだ。ほとんど無意識の行動だったが、今までないがしろにしてきた天の神にすがろうとした。持っている武器らしい武器は、小刀ひとつ。しかもそれは雑嚢の中に入っているとあっては、今の文秀にはほかになにもすがれるものがなかったから。
「……ぁあああっ?」
咽喉を嗄らす悲鳴の語尾が上がったのは、こちらに向かって歩んでくる虎以外の、新たな影を見たからだ。それが、人の形をしていたからだ。
大きな虎の背には、人が乗っていた。鮮やかな樺色の短衣と、真紅の裳をまとった女性だった。
「あ……っ……?」
その場に座り込んだまま、文秀の目は女性に釘づけられた。編んだ髪は艶やかに長く、顔は陽の光など受けたことがないかのように白く、小さく丸い。眉は柳の葉のようで、目は大きく黒目がち。すっと通った鼻梁に、小さい唇は紅などには表せない、深い、不思議な艶やかさをもった赤だった。
「あぁ、あああ?」
虎の上に、美しい女性が乗っている。その手は虎の首にかけられていて、その柔らかそうな毛並みに白く小さな手が埋まっている。
「ああああ……?」
文秀はただ声を上げるばかりだ。死霊や妖怪変化の出そうな深い森の中、現われた大きな虎。黄色と黒の模様も鮮やかに、その毛並みも艶やかな虎は、黒い瞳で文秀を見ている。その背に乗る女性も文秀を見ていて、しかしその表情は驚いていた。どうして人間がここにいるのかというようだ。
「あああ、あぁぁ……?」
文秀の言葉は震えてしまう。下草の上に座り込んだまま、大きく目を見開いて女性と虎を見ている。唇はわななき開いた目の縁も震えて、しかし動くのはそこだけ。文秀は石像のようになって、目の前の光景を見ていた。
これほどに美しい女性が、人間であり得るのだろうか。彼女こそ、妖魔かもしれない。美しい女に化け、人を惑わせ死に導くという。
女性の、赤い唇が開く。文秀は、びくりと震えた。
「人間か?」
女性の第一声は、それだった。いきなり問われるには不可解な質問だ。文秀が、人間以外の何に見えるというのだろう。そう言う彼女こそ、人間なのだろうか。
しかしその声は澄んで高く、彼女の容姿を裏切らない。その鈴のような声を前に、文秀の口は動かなかった。女性に何かを問い返すという思考さえも働かないまま、ただこくこくと頷いた。
「お前、なぜこんなところに?」
訝しいという表情を隠しもしない女性は、問いを重ねる。
「なぜ、ここに立ち入ることができる? 術者か? それとも男巫か?」
文秀は、今度は首を左右に振った。黒髪が、頬を打った。
女性は虎の背に座ったまま、文秀を見つめている。その美しすぎるほどに美しい相貌がまっすぐ自分の方に向いていることに、仮に彼女が妖魔だとしても、胸を掴まれないはずはない。文秀はどきどきと胸を高鳴らせたまま、なおも目を見開いて女性を見ていた。
虎の首に置いた手に力を込め、女性はひらりとその背から降りた。真紅の裳がふわりと舞う。それを見つめる文秀の前、女性はひざまずき、じっと文秀の額あたりを見た。
「ふむ、なるほど。わずかながらに術師の気が」
「へ?」
彼女の言葉の意味がわからなくて、文秀はきょとんとする。それでいて同時に、直感した。
彼女は人間だ。その直感の根拠はよくわからない。しかし文秀を貫くようにとおりに抜けたのは、彼女が『同族』であるという感覚で、それは本能のように文秀を捉えた。
女性はすぐに立ち上がり、文秀の前、裳をさばいて踵を返す。
「あ、の……!」
女性は裳を翻しながら、虎のもとへ戻る。白い手をその毛並みに置き、再び飛び乗ろうとするすっと伸びたまっすぐな背に向かって、文秀は声をあげた。
「わ、私は、姓は朴、名は文秀! 見てのとおり、あてのない旅人です!」
女性は振り返る。いきなり何だ、とでもいうようだ。
「お嬢さん、あなたの、お名前をお聞かせください!」
彼女は訝しげに文秀を見ている。その厳しい表情に、文秀はますます声をあげる。
「ここでお会いしたのも、何かのご縁。ぜひとも、お名前をお聞かせください!」
食い下がる文秀に、女性はますます訝しげな顔を見せている。しかしややあって、口を開いた。
「……柳華虹だ」
「素敵なお名だ」
恐怖も忘れて、文秀は思わずそう言っていた。
「あなたにふさわしい。ぴったりのお名ですね」
「……それは、どうも」
なおも訝るような表情のまま、華虹は文秀を一瞥して、そして再び踵を返す。虎の背に乗りかけた華虹を追って文秀は慌てて立ち上がり、彼女を追った。
「その虎は、あなたの……飼い虎ですか?」
飼い犬や飼い猫という言葉はあるが、飼い虎という言葉は寡聞にして聞かない。しかしそれ以外に言いようがなくて、虎の首に手を這わせる華虹に文秀はそう問う。虎の頸を撫でながら、華虹は言った。
「順興だ」
「順興?」
何のことかと首をかしげ、それが虎の名であることに気がついた。
「何だか、普通の名前ですね」
「何だ、普通だとは」
「動物につける名前にしては、まるで人間のような……」
華虹は、わずかに顔を歪めた。彼女の気分を害したかと焦ったが、美女は、顔を歪めても美しい。文秀は思わず、華虹に見とれる。
しかし華虹は何も言わず、順興を撫でる。そうやって撫でられていると、虎はまるで大きな猫のようだ。思わず手を伸ばした文秀に順興がぐるる、と唸らなければ、本当に大きな猫なのではないかと思ってしまうくらいだ。
「慣れているのですね」
「長いつきあいだからな」
言って、華虹はひらりと順興に飛び乗る。よく見れば、順興の背には雑嚢がくくりつけてある。再び順興の上に乗った華虹は、先を行けというようにぽんぽんと首筋を叩いた。
順興は歩き出す。大きな足が下草を踏むのを、文秀は慌てて呼び止めた。
「あの、華虹さま!」
華虹は、首をだけを回して振り返る。文秀は、声をあげた。
「先ほども申しましたが、私はあてのない旅人。よろしければ、ご一緒させてくださいませ!」
じっと華虹の返事を待つ文秀を、華虹は見つめる。彼女は目をすがめ、言った。
「我々の旅は、居場所をなくした者の流浪の旅。困難な道を行くことを宿命づけられている。そのような道のりに、お前程度の術師が耐えられるとは思えないが」
「流浪の旅なら、私も一緒です!」
文秀は、今にも華虹の手を掴みそうな位置で言った。華虹が、警戒するようないやがるような、複雑な表情を見せる。
「あなたのような方とご一緒できたら、どれほど幸福なことでしょう。ぜひ、ご一緒させてください!」
「……なぜお前は、旅を?」
問われて、文秀は頭を掻いた。肩をすくめて苦笑いを見せる。
「お恥ずかしい話です。亡くなった親に譲られた家屋敷、財産をすべて失ってしまいましてね。居場所もなく、生まれ故郷を出てきたわけなんです」
「それは……」
その話に、華虹は眉根を寄せた。気の毒だと言わんばかりにせつなげな表情をする華虹に、しかし文秀は苦笑いを濃くする。
「いやまぁ、自業自得なのですけれどね」
言いながら、右手で何かを握る形を作って、くいっとひねってみせた。
「なに……?」
「まぁ、そういうことです」
文秀は、ぽりぽりと頭を掻いた。華虹は、いったんは見せたせつなげな表情をぐいと歪める。顎を引き、同情から一転、軽蔑するような顔をした。
「愚か者が」
「まぁ、そう言われると痛いですが」
苦笑いする文秀の取った手の動きは、賭けごとを表わすものだ。つまり親から譲られた財産をすべて賭けごとで失ったという文秀に背を向けた華虹が虎の頸を叩くと、虎が駆け出す。
「あ、待ってくださいよ~!」
文秀は華虹たちを追いかけて走り出し、下草に隠れた木の根につまずいて、転ぶ。痛っ、と声をあげながらも、華虹のほうに手を伸ばす。
「華虹さまぁ~」
地面に倒れ伏しながら、情けない声をあげる文秀の足もと、きゅっと巻きついてきたものがあった。
「……ん?」
転んだまま、文秀は自分の足もとを見る。しかし草に埋まった足がどうなっているのか、目が届かない。
「な、に……」
巻きついてきたものは、足首を締めつける。強く締めつけられて、転んだ痛みよりそちらのほうがひどくなり、文秀は強く顔をしかめた。
「な、なんなんだ……?」
と、何かが巻きついた片足がひょいと宙に浮く。文秀は片足を何かに掴まれたまま、宙に逆立ちすることになった。
「うわ、わぁぁ!」
短衣がめくれて腹が丸出しだ。いや、それどころではない。文秀の足には植物の蔓が巻きついていて、それが文秀を持ち上げたのだ。
「うわあぁ、何だこれはー!」
蔓には意志があるかのように文秀を宙につり上げ、左右にゆらゆらと揺らしている。まるで獲物を見つけたと言わんばかりだと感じた。どこかでぱっくりと開いた口が待っていて、ごくりと呑み込まれてしまうのではないかという想像が、脳裏を横切った。
「助けて、助けて~!」
情けない声をあげる文秀を前に、華虹が順興から飛び降りる。彼女は素早く、腰に手をやった。
そこから現われたのは、輝く刃だ。華虹は、剣など身につけていただろうか。不思議に思う間もなく文秀はつり下げられたまま、ぶんぶんと振り回される。
「わぁ、ああ!」
「――やっ!」
華虹が、気合いの声とともに剣を振るう。剣が蔓を切り裂き、文秀は地面にどさりと落ちた。
「ぎゃっ!」
いきなり地面に叩きつけられて、悲鳴を上げる。華虹が駆け寄ってきた。
「大丈夫か!」
「ど、どうにか、大丈夫ですぅ……」
文秀は、情けない声をあげた。ぶつけた腰を撫でる文秀の前に、白い手が差し出される。
「立てるか」
「あ、ありがとうございます……」
思わぬ機会に、華虹の手に触れることができた。手は意外に固く、それが剣胼胝であることに気がついた。
美女に、剣胼胝。その不釣り合いは妙に艶めかしく感じられ、そのことに文秀はどぎまぎした。剣胼胝のできた手は冷たく、その冷ややかさにも胸を掴まれた文秀は手を力を込め、華虹の手に引き上げられる。
「どうも……」
宙づりになっていたところを地面に落とされたのだ、衝撃はひどかった。しかし華虹の手に触れられたという僥倖に、痛みなど忘れてしまう思いだ。
それでも、叩きつけられた痛みに少しよろよろしながら、文秀は立ち上がった。
「何だったんですか、あれは」
「妖魔だ」
腰の鞘に剣を収めながら華虹がさらりとそう言ったので、文秀は大きく目を見開いた。
「よ、妖魔……?」
「ああ」
思わず自分の足もとを見る。そこには叩き切られた植物の蔓があった。そうしてみるとただの蔓なのに、しかしそれは確かに文秀の足に巻きつき、宙につり下げたのだ。
「本物なんて、初めて見ました……」
妖魔というものの存在を知らないわけではない。しかしそれは死霊に妖怪変化と同じく、普通に生きている人間が出くわすことはないものだ。文秀にとっては、その存在を恐れこそすれ、実際に会うことなど考えてもいないものだ。
そんな文秀を、華虹は少し困ったように見た。見れば彼女の腰の鞘は、そこにそれがあるということを知らなければ見つけられないほどに小さい。先ほど見た剣はもっと大きくて、文秀の腕ほどの長さがあったと思うのに。
「それに、その剣も……さっきはもっと大きかったですよね。いったい、なぜ……」
疑問符を頭にぐるぐると巡らせる文秀は、さらなる驚きに大きく目を見開いた。
「わぁ……あ、あぁ!?」
目の前に、男がいたのだ。背は文秀より拳ふたつぶんほど大きい。きっちり髷を結った艶やかな髪、鋭い瞳、整った鼻梁。薄い唇にすらりとした体躯。しかし短衣と脚衣の上からも、彼が鍛え抜かれた武人であることがわかる。
「だ、誰……」
「順興」
華虹は言って、少し微笑んだ。今まで固い表情を崩さなかった華虹が微笑んだということにも驚いたが、何よりも、その男だ。
「順興? 順興って……」
それは、虎の名ではなかったか。そういえば、虎はどこにもいない。あれほど大きな虎なのだ、いくら緑が深くても身を隠すことなどできようはずもないのに。
「あの、いったい……どういう……」
文秀の頭には、疑問符ばかりが浮かんでいる。目の前の不思議への混乱に、足もとがよろりとよろめいた。
「気がつかなかったのか? ここまで入り込んできておいて……おかしな男だ」
「華虹さま」
そう言ったのは、男――華虹の言葉を信じるとすれば、順興だ。その声は低く落ち着いていて、耳に心地いい美声だった。その整った容姿のほども、美しい声のほども、男として嫉妬を覚えずにはいられない。美丈夫を前に文秀は彼を睨みつけたが、男は文秀のほうなど見てはいなかった。
「朴氏は、わずかでも術師の気のある方。その術師の才が、今まで妖魔を遠のけていたのではないでしょうか」
文秀を名字で呼んで、男は言った。文秀の名を知っているということは、やはり彼は順興なのだろうか。
「お前もそう思うか……?」
そう言って、華虹は文秀をじっと見やる。美しい黒い瞳で見つめられ、文秀はたじろいだ。
華虹は言った。
「ここは、妖魔の森だ」
「妖魔の、森……?」
聞かされた言葉を繰り返す文秀に、華虹も順興も頷いた。
「ここに来るまでに、川を越えただろう」
川。ひょいとまたげるほどの川を、文秀は確かに越えた。あれを越えてから急に森が深くなった。あれが何か、ただの細い川ではないのではないかと思ったことを思い出す。
「あの川……! やはり、何かの境界だったのですか!」
勢いづく文秀に、華虹は頷いた。
「あれは、人間の森と妖魔の森をわける仕切りだ。通常の人間に、あれを越えることはできない。普通は、見ることもできない――」
そう言って、華虹はじっと文秀を見る。まるで試されているような視線に、文秀は思わず一歩後ずさりをした。
「お前の術師の気は、本物のようだ。たとえ、弱く細いものであってもな」
「待ってください、待ってください!」
文秀は声をあげる。何だ、というように華虹は少し首をかしげる。
「妖魔の森とか、術師の気とか、おかしな蔓とか境界の川とか、虎がいなくなって男が現われたとか……いったい何なんですか!?」
尋ねる文秀に、華虹はそんなことを言う彼こそ不思議だというように眉根を寄せる。
「お前、まったく心当たりがないのか」
「ありませんよ!」
わめくように文秀は言った。
「私の人生に、今までこんなことはなかった……今までおかしなことなんて、一回もなかったのに!」
思わず頭を抱える。そんな文秀を困ったように見やっていた華虹は、ひとつ息をついた。
「ここは、妖魔の支配する森。ここでは人間の常識は通用しない。ここに入ってこられる人間は、術師や巫人
ムーダン
だけだ。お前には、わずかながらに術師の気がある。今までに、そんな自覚はなかったか?」
「術師の、自覚……?」
術師とは、人ならぬ力を使って不思議な技を使う者たちのことだ。そういう者たちがいるということは知っている。困ったことがあるとき、そういう者たちを訪ねる人々もいるということを。しかし文秀はそういう者たちを訪ねたこともなければ見たこともなく、根本的に存在を信じてもいなかった。
「そもそも、術師って何なんですか」
文秀の質問に、華虹は少し目を見開き面白そうな顔をした。華虹のそんな表情は意外で、文秀は目を見開いた。笑うと、普通の娘のようにかわいらしい。そう思ったことは、もちろん口には出さなかったけれど。
華虹は言った。
「術師とは、天の神の力を借りて技をなす者のことだ。呪語を唱え、水や風を操ったり、妖魔と戦うなどということをする」
「じゃあ、華虹さまもそうなのですか?」
文秀の問いに、華虹はまた薄く微笑む。ずっと笑っていればいいのに、と文秀は思った。厳しい顔をしている彼女も美しいが、笑うと角が取れてかわいらしくなる。初めて会ったときもそう思ったが、今の彼女は飛び抜けた美女だ。
「そうだな。私も術師だ」
「では、その……」
恐る恐る、文秀は華虹の傍らを見る。虎であった青年――順興だという彼を、目だけを動かして見やる。
「私は、術師ではありません」
順興は言った。文秀は、目をぱちくりとさせる。
「では……?」
文秀の質問に、順興は少し視線を泳がせた。言いにくそうにする彼に、それはなぜなのかと考えた。
「そもそも私は、人ではありませんから」
「人で、ない……」
不思議なものなら見た。自分を足を絡めとり、つり下げた蔓だ。しかし、人の姿を取っていながら人でないという彼を前に、にわかにはその言うことが信じられない。
「では、なに……」
はっと気がついた文秀は、思わず身構え握った拳を胸の前に突き出す。
「妖魔……!?」
いや、妖魔なら華虹に付き従っているはずはない。それとも華虹は強力な術師のようだから、華虹が従えたのだろうか。華虹の眷属として仕えているのかもしれない。
身構える文秀に、順興は笑った。肩をすくめ、困ったような苦笑だ。その笑いは文秀にではない、自分自身に向けられているように感じた。なぜ自嘲するのだろうと、文秀は身構えを解く。
華虹は眉をひそめ、順興を見やる。自嘲する彼を労るような表情だ。彼女は文秀の方に顔を向け、少し苦しげに言った。
「順興は、精霊だ。虎のな」
「精霊……」
また、耳慣れない言葉が出てきた。もちろん聞いたことはあるが、身近に感じたことなどない言葉だ。
「妖魔と精霊は、どう違うのですか」
そう尋ねると、今度苦笑したのは華虹のほうだ。順興と同じような、自嘲的な笑み。何か悪いことを言っただろうかと、文秀は焦る。
少し考えた華虹は、唇を歪めたままつぶやいた。
「そうだな、どうも違わない……我々人間に味方するものか、敵対するものか。それだけの違いだ」
華虹の苦笑は、妖魔と精霊の違いが自分たち人間の基準に置かれたものだからなのだろう。しかし、華虹も文秀も人間なのだ。自分たちを世界の中心ととらえるのは、無理もないことだろう。
「人間も、妖魔の一種。そう考えるものもある。ただ少し、数が多いだけのな」
「えぇぇ?」
先ほどのうごめく蔦のようなものと、人間を一緒にされてはかなわない。そう考え顔を歪めた文秀に、華虹は少し笑った。しかし再び、厳しい表情をする。
「お前は術師とはいえ、その気は薄いうえに訓練もしていない。その身でこのまま妖魔の森を抜けるのは難しいだろう。森の外まで送ってやる。お前は、人の道を行け」
「いえ、いいえっ!」
文秀は叫んだ。
「一緒に行きます、行かせてください! 言いましたでしょう、私はあてのない旅人! どこへ行こうと構う者はありませんし、待っている者もおりません!」
「なぜ、行きたがる。先ほどのような目に遭うかもしれないのだぞ?」
「……それは」
文秀は、思わず視線を逸らせる。そんな文秀の心のうちに、順興は気がついたのだろうか。色だけは虎の姿の時と同じその目を、じろりと向けてくる。
「……あの、珍しいものが見られそうですし」
このような美女と一緒に旅できる僥倖など、そうそうあるものではない。それを逃す気などさらさらないし。
「私が術師だというのも、気になりますし」
このような美女を見ていられるのなら、多少の危険などどうだというのだ。虎の精霊だという順興と彼女がどのような関係なのかは気になるが、見たところ恋人同士だというようではなさそうだし。
「ここでお目にかかったのも、ご縁という以外ありますまい。ぜひとも、お供させてくださいませ」
それなら、文秀が口説いてもいいのではないか。先がない旅だというのなら、一緒にいられる時間にも先はない。その間に恋仲になることだってできるのではないか。
「お願いします、華虹さま!」
華虹は、やや難しい顔をして立っていた。腕を組み、じっと文秀を見やる。その瞳が文秀の心のうちを見抜こうとしているようで文秀は下心を見抜かれたかと身をすくめる。
術師だという彼女に、文秀の下心を見抜く力が宿っているのかどうかはわからない。ただ彼女はじっと文秀を見つめ、ちらりと順興を見やり、再び文秀を見やって、言った。
「先ほどのような目に、また遭うぞ? あの程度で済めばいい、しかしもっと強力な――狐や鼬、狼や熊の妖魔など、お前の手には負えまい」
「熊なんて、それが妖魔じゃなくったって負えません」
華虹の言葉に頷きながら、文秀は言った。
「でも、恐ろしくはありません。だって、華虹さまがお救いくださるでしょう?」
「……はぁ?」
そう言った文秀に、華虹は呆れたような顔をした。その後ろに立つ順興も、同じく呆れて文秀を見ている。
「だって、華虹さまはあんなに立派な剣をお持ちじゃないですか。しかも、その剣胼胝! 並の剣士ではない。しかも術師となれば、狼だろうが熊だろうが、恐るるものなし、というところでしょうに!」
「何を言う」
冷ややかに、華虹は言った。
「私は、助けん。自分の身は、自分で守れ」
「えぇ、そんなぁ!」
文秀の上げた情けない声に、華虹は笑う。小さく噴き出しただけの笑いだったけれど、その笑顔に文秀は、彼女が同行を許してくれたのだということを知った。
そんな華虹の心は、順興にも伝わったらしい。順興はむっとした顔をしている。華虹の決断が気に入らないらしいが、彼には華虹の決定に口を差し挟む力はないらしい。
(このふたりは、いったいどういう関係なのだろう)
恋人同士でないということは、文秀の直感が告げている。主従なのだろうが、人間である華虹と精霊である順興が、どういういきさつでともに旅をしているのか。
聞いても答えてはくれないだろうというのが、文秀の直感だ。となればそれは、この先探っていくべき謎になるだろう。
(まぁ、旅は長くなりそうだし)
そしてまた恐ろしい目に遭うかもしれない。しかし何がおかしかったのか、文秀の言葉に笑っている華虹の笑顔に、先ほど蔓につかまったときの恐ろしさは、すっかり消えてしまった。
(楽しくなりそうだ)
鼻歌でも歌い出したい気分で、文秀は華虹のもとに歩み寄る。そして先を指差して言った。
「さ、まいりましょうか。華虹さま」
華虹はまた、堪えきれないというような小さく噴き出す笑顔を見せた。
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