吸収

玉城真紀

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薄い上着から、厚手の上着に変わる頃。行平邸ではいつもの朝を迎えていた。
「行ってきま~す!」
香織は朝から元気いっぱいに玄関から飛び出していた。
「子供は元気でいいな」
行平は、嬉しいような呆れたような様子で香織を見送った。
「そうね。本当に元気」
明子も行平に笑いかける。
「そうだ。確か来週の木曜は香織の誕生日だったよな」
「そうよ。ケーキはもう予約してあるから大丈夫。あの子の好きなチョコレートケーキ」
「あれ?香織はチョコより生クリームのケーキが好きじゃなかったのか?」
「成長と共に好みは変わるのよ」
「ふ~ん。プレゼントは?」
「それも買ってある」
「用意がいいな。何買ったの?前に「かっこいい靴があるから欲しい」とか言ってたなぁ。その靴を履くと速く走れるらしいぞ。ハハハ」
「ううん。靴じゃないわ」
「じゃあ何買ったの?」
「着せ替えが出来るお人形よ。沢山の洋服付きでね」
「着せ替え人形?そんなの香織が喜ぶかな」
「女の子はね
明子は行平の目を探るように見ながら静かに笑った。
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