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5章
小人の鍛冶屋と火の精霊②
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道案内には七人のドワーフが名乗りを上げてくれました。それぞれ鎧をつけ、戦斧や戦鎚を手に持ちます。
「ワシらは鍛治も好きだが戦士でもある」
「魔王軍の兵隊が出ても任せておれ!」
と心強いこと。
フォノンは気になることを聞いてみました。
「魔王軍の武器だけれど、どのくらい作ったの?」
ドワーフは言いました。
「なーに、ワシらもイヤイヤ作っておったからな。数はせいぜい百本ばかりさ。ただし奴らが持って行ったのは、見てくれだけのなまくらばかりだがな」
「作りかけの武器は全部溶鉱炉で溶かしてしまうつもりじゃ」
「そっか。そうしてくれると嬉しい」
そうこう話しているうちに、洞穴内の気配が騒がしくなって来ました。フォノン達を探しているようです。
「後少しで出口じゃ」
とドワーフが言いました。松明ではない陽の光が前方から漏れてきています。
「走り抜けよう!」
とフォノンは言い、走り出しました。
ハッカもドワーフ達も鎧をカシャカシャいわせながらついてきます。
洞窟の中とは違った新鮮な空気を感じます。
出口を出ました。
外にはもう陽が出ています。
「抜けたー」
とハッカが言った時、ザザザと影が出てきました。
魔王軍の兵隊達です。どうやら待ち伏せされていたようです。三十人はいるようです。
「何者だ!スパイか!!」
と兵隊達の隊長格はフォノンに問いました。
兵隊達は油断なく輪になってフォノン達を囲います。
逃げ道はなく、もはや戦うしかありません。
フォノンは背の剣に手をやりました。
ドワーフ達も武器を構えます。
「答えぬか!では死んで後悔するがいい!」
フォノンは瞬時に考えました。ハッカは数から外すとして、八対三十です。一人当たり約四人倒さなければなりません。できるか?
するとハッカが言いました。
「フォノン!少し時間を稼いでくれ!」
何か考えがあるようです。
「わかった!」
フォノンは答え、ついに剣を抜きました。
魔法剣ガリアンの刀身は妖しく光ります。
「かかれ!」
隊長格の命令に一斉に兵隊達が向かってきます。
「行くぞ!」
とフォノンも叫び、戦いは始まりました。
まずは一人目。
突いてくる剣先をガリアンでそらし、横に抜けざま胴を払います。
次、二人目。
背後から斬りかかってくる剣よりも早く、逆手に持ち替えた剣先を鳩尾に叩き込みます。そして剣に絡ませて武器の取り上げ
三人目は槍を突いてきました。なかなかの速さです。
フォノンは一旦間合いを取り、正対します。
相手が槍を突いてくる瞬間、前に飛び込み伸びきった相手の腕を片手で押さえながら、首筋に剣を叩き込みました。相手は呻いて倒れます。
フォノンはまだ誰も斬ってはいませんでした。
フォノンは動き回りながらも、冷静に戦況を確認していました。ローランドに教えてもらった極意の一つです。ドワーフ達もまだ無事に元気に戦っています。ハッカは呪文を唱えているようです。
三人目を倒した段階でかなり時間が経ったようにも思えましたが、実際は数十秒くらいだったようです。
「やるな!小僧!」
そう言って隊長格が剣を抜きました。
さすが隊長格だけあって、かなりの手練れのようです。
「だが、斬らぬとあってはお前に勝ち目はない!」
そう言って襲いかかってきました。
フォノンは動きません。
一振り二振り。
相手の攻撃を最小限の動きでかわします。
そして頭上に剣が降りかかってきたその時、フォノンは魔法剣ガリアンを振り上げました。
ギン!
と音を立てて、隊長格の剣は半ばから斬られていました。
斬りたいものは岩でも斬るが、斬りたくないものは紙でも斬らないという魔法剣ガリアンの真骨頂です。
隊長格は剣が斬られたことに気づき呆然としています。
「まだやるか!」
とフォノンは隊長格の喉元に剣を突きつけ言いました。
敵はまだ十五人ほどいます。
隊長格は叫びました。
「構うな!やれ!」
フォノンは剣柄で隊長格のこめかみを殴って気絶させると、次の攻撃に備えて身構えました。
その時、ハッカの口から最後の呪文が唱えられました。
「開放!」
するとどうでしょう。黒猫のミントの姿がムクムクと大きくなり、獰猛に兵隊達に襲いかかりました!
ミントの大きさは大きな雄牛ほどもあり、颶風のように駆け巡ります!
「僕のミントは怪物だ!降伏しないと全滅するぞ!」
そうハッカが叫ぶと、兵隊達は気絶していた者達も助け起こし這々の体で逃げて行きました。
「すごいや!」
とフォノンもビックリしてハッカを見ました。
「この姿は五分しか保たないんだけれどね」
「五分過ぎたらどうなるの?」
「制御できずに暴走する」
「えええ!でも助かったよミント。ありがとう」
そう言ってフォノンがミントをなでようとすると、シュルシュルとミントの体は小さくなりました。
「まだ元に戻る呪文唱えてないのに、自分で元に戻るなんて珍しい。はっはーん照れてるな!」
とハッカが言うと、ミントは「うっさい、バーカ」と言って走って行ってしまいました。
七人のドワーフ達も全員無事のようです。
さすが戦士というだけあって、皆勇敢でした。
ドワーフ達も皆口々にフォノンの剣の腕前を褒めてくれました。
そしてフォノン達をモート湖に続く道まで送ってくれました。
「ありがとう!」
と言ってフォノンとハッカは手を振り、ドワーフ達と別れるとモート湖に向かって歩き出しました。
ミントは既に道の先で座って待ってました。
「ワシらは鍛治も好きだが戦士でもある」
「魔王軍の兵隊が出ても任せておれ!」
と心強いこと。
フォノンは気になることを聞いてみました。
「魔王軍の武器だけれど、どのくらい作ったの?」
ドワーフは言いました。
「なーに、ワシらもイヤイヤ作っておったからな。数はせいぜい百本ばかりさ。ただし奴らが持って行ったのは、見てくれだけのなまくらばかりだがな」
「作りかけの武器は全部溶鉱炉で溶かしてしまうつもりじゃ」
「そっか。そうしてくれると嬉しい」
そうこう話しているうちに、洞穴内の気配が騒がしくなって来ました。フォノン達を探しているようです。
「後少しで出口じゃ」
とドワーフが言いました。松明ではない陽の光が前方から漏れてきています。
「走り抜けよう!」
とフォノンは言い、走り出しました。
ハッカもドワーフ達も鎧をカシャカシャいわせながらついてきます。
洞窟の中とは違った新鮮な空気を感じます。
出口を出ました。
外にはもう陽が出ています。
「抜けたー」
とハッカが言った時、ザザザと影が出てきました。
魔王軍の兵隊達です。どうやら待ち伏せされていたようです。三十人はいるようです。
「何者だ!スパイか!!」
と兵隊達の隊長格はフォノンに問いました。
兵隊達は油断なく輪になってフォノン達を囲います。
逃げ道はなく、もはや戦うしかありません。
フォノンは背の剣に手をやりました。
ドワーフ達も武器を構えます。
「答えぬか!では死んで後悔するがいい!」
フォノンは瞬時に考えました。ハッカは数から外すとして、八対三十です。一人当たり約四人倒さなければなりません。できるか?
するとハッカが言いました。
「フォノン!少し時間を稼いでくれ!」
何か考えがあるようです。
「わかった!」
フォノンは答え、ついに剣を抜きました。
魔法剣ガリアンの刀身は妖しく光ります。
「かかれ!」
隊長格の命令に一斉に兵隊達が向かってきます。
「行くぞ!」
とフォノンも叫び、戦いは始まりました。
まずは一人目。
突いてくる剣先をガリアンでそらし、横に抜けざま胴を払います。
次、二人目。
背後から斬りかかってくる剣よりも早く、逆手に持ち替えた剣先を鳩尾に叩き込みます。そして剣に絡ませて武器の取り上げ
三人目は槍を突いてきました。なかなかの速さです。
フォノンは一旦間合いを取り、正対します。
相手が槍を突いてくる瞬間、前に飛び込み伸びきった相手の腕を片手で押さえながら、首筋に剣を叩き込みました。相手は呻いて倒れます。
フォノンはまだ誰も斬ってはいませんでした。
フォノンは動き回りながらも、冷静に戦況を確認していました。ローランドに教えてもらった極意の一つです。ドワーフ達もまだ無事に元気に戦っています。ハッカは呪文を唱えているようです。
三人目を倒した段階でかなり時間が経ったようにも思えましたが、実際は数十秒くらいだったようです。
「やるな!小僧!」
そう言って隊長格が剣を抜きました。
さすが隊長格だけあって、かなりの手練れのようです。
「だが、斬らぬとあってはお前に勝ち目はない!」
そう言って襲いかかってきました。
フォノンは動きません。
一振り二振り。
相手の攻撃を最小限の動きでかわします。
そして頭上に剣が降りかかってきたその時、フォノンは魔法剣ガリアンを振り上げました。
ギン!
と音を立てて、隊長格の剣は半ばから斬られていました。
斬りたいものは岩でも斬るが、斬りたくないものは紙でも斬らないという魔法剣ガリアンの真骨頂です。
隊長格は剣が斬られたことに気づき呆然としています。
「まだやるか!」
とフォノンは隊長格の喉元に剣を突きつけ言いました。
敵はまだ十五人ほどいます。
隊長格は叫びました。
「構うな!やれ!」
フォノンは剣柄で隊長格のこめかみを殴って気絶させると、次の攻撃に備えて身構えました。
その時、ハッカの口から最後の呪文が唱えられました。
「開放!」
するとどうでしょう。黒猫のミントの姿がムクムクと大きくなり、獰猛に兵隊達に襲いかかりました!
ミントの大きさは大きな雄牛ほどもあり、颶風のように駆け巡ります!
「僕のミントは怪物だ!降伏しないと全滅するぞ!」
そうハッカが叫ぶと、兵隊達は気絶していた者達も助け起こし這々の体で逃げて行きました。
「すごいや!」
とフォノンもビックリしてハッカを見ました。
「この姿は五分しか保たないんだけれどね」
「五分過ぎたらどうなるの?」
「制御できずに暴走する」
「えええ!でも助かったよミント。ありがとう」
そう言ってフォノンがミントをなでようとすると、シュルシュルとミントの体は小さくなりました。
「まだ元に戻る呪文唱えてないのに、自分で元に戻るなんて珍しい。はっはーん照れてるな!」
とハッカが言うと、ミントは「うっさい、バーカ」と言って走って行ってしまいました。
七人のドワーフ達も全員無事のようです。
さすが戦士というだけあって、皆勇敢でした。
ドワーフ達も皆口々にフォノンの剣の腕前を褒めてくれました。
そしてフォノン達をモート湖に続く道まで送ってくれました。
「ありがとう!」
と言ってフォノンとハッカは手を振り、ドワーフ達と別れるとモート湖に向かって歩き出しました。
ミントは既に道の先で座って待ってました。
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