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第二章 水源浄化の旅

異世界の摂理とラッキースケベ

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 リーン、ユーディアル、ファイはあたりを一望出来る小高い山にいた、見つめるのは城壁で守られ門も閉められた大国スイレン。

 これまでは城壁があっても城門が開放され誰もが行き来する温かい国だったのに、今は冷たく閉鎖された国になっていた。

 城が城壁から飛び出て見えて、一番高い塔は見張り台にも見えるが誰もおらずさみしく見える。

「こんなに冷たい国だったんだ」
「すべて今の女王のせいだろうな」

 ファイが呟くと続けてユーディアルが答えた、少なくとも一年前はこんなに冷たい国ではなかったと二人は言う。

 その寂しそうな背中をリーンはしばらく見つめることしかできなかった。



「女王の目的って何なんでしょう・・・悪魔との入口を開放するだけが目的なのでしょうか」

 しばらくしてリーンは口を開く、にっくき悪魔の所業について疑問を口にした。

「おそらくですが、悪魔は人間を奴隷のように扱うので、人間の支配が目的ではないでしょうか」
「人間を支配するのに勇者は邪魔だろうね」

 人々を信じ無償で助ける勇者の存在は、確かに悪魔にしてみれば邪魔でしかないだろう。

 女王の思惑通り、民に邪険にされ自分の心が揺れている事を感じているユーディアルは不甲斐なくてしょうがなかった。



 この世界の移動方法は通常徒歩か馬だ、しかし勇者御一行であるユーディアルとファイは聖獣のユニコーンを出す事ができる。

 人や馬よりも早く移動ができたが、ファイは魔法力が低くなっており聖獣を出すことができない上二人までしか乗れない。

 そこでリーンは一つの提案を出した。

「ファイさんはこのまま中間世界の部屋にいてください、私しかこの扉を開ける事ができないのでユーディアルさんにユニコーンに乗せてもらいます。目的地についてからまたこの部屋に戻ってきますので、一緒に外に出たら移動できていると思います」
「よかったぁ、僕はてっきり置いていかれるのかと」
「まさか、リーン様がそんなことするわけないだろう」

 笑いながらファイ以外は中間世界の部屋から出て、ユーディアルがリーンをお姫様抱っこをするように抱え白い聖獣に乗せて、ルーン・リバーを目指すこととなった。


 リーンは成獣に跨がず横に座るとがっしりとしたユーディアルの手で肩を抱かれる、自然と彼の胸に寄せられる形となり逞しい胸板がリーンを包んだ。

 自分で提案したことではあるが、ガッシリとした男性に肩を抱かれ密着されたら緊張しないわけがない。錦も含めて男性と裸で触れ合うことは仕事上よくあるが、こんなに鼓動が早くなることは今までなかった。

「リーン様、シールドがありますので力を抜いて大丈夫ですよ。ユニコーンは絶対人を落とさないよう魔法がかかっていますので心配しなくて大丈夫です。」

 ユーディアルはそう言うが彼女が緊張しているのは別の所にある、それを口には出せず「お、おかまいなく」と呟くのがリーンの精一杯だ。

 しかし言われてみれば確かにユニコーンの走りは早いが風は全く感じない、二人の周りをシャボン玉のような虹色の膜が二人を包む。

 それをユーディアルが難なくこなしているように見えるが、聖獣を走らせながら魔法を使うなんて高等な技術だとリーンはすぐ察した。

「ごめんなさい、私がいるせいでシールドを出させるなんて余計な負担を」
「全然負担じゃないです、それにリーン様は俺の恩人ですから」
「そんな、たいしたことじゃ」
「リーン様、たいしたことあります・・・貴方はとても素晴らしい方だ、出会ったばかりですがわかります」
「それは、この世界では聖女だから・・・」
「いえ、貴方は女性として素晴らしい・・・魅力的です」

 目の前にある真剣な眼差し、ユーディアルが嘘をついているとは思えないが・・・。

「それは、私の裸を見たからじゃないですか? 体だけの、女なんで」

 自分でつぶやいて泣きそうになる、愛する人にそんな言い方されて傷付かないわけがない。今まで気丈に振る舞い、異世界に来てからは慌ただしさで考えないようにしていたが。

(私は錦君と生涯愛し合って生きていくと、思っていたから)

『体だけの女』

 そう思われていた事がショックでたまらない、今でも思い出し押し寄せてくる悲しさに涙が溢れそうになった。

「そんなことないですよ、ファイが俺に攻撃しようとした時に初めて出会った俺を信じてくれました。洗脳効果が水に入っていることだって、今回の移動手段も俺とファイだけじゃ思いつかなかった・・・リーン様は優しくて頭のいい、料理が上手な素晴らしい女性です」
「ユーディアルさん・・・」

 優しいとか頭がいいとか料理上手とか、少なくとも錦から言われた事はなかった。食事は毎回作っていたが最近ではお礼どころか急に外食に行かれて食べてくれない日もあった。

 こんなに直接言われる事が嬉しいなんて今まで気が付かなかった、それほ自分は酷い状況にいたんだと初めて気がつく。

「ありがとう、ユーディアルさん、お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないですよ」

 彼の呟きでリーンの気持ちは温かくなっていく、いつの間にか力を抜いてユーディアルに体を預けていた。

「この世界はリーン様がおっしゃった通り、気持ちが力となって現れる世界です。愛が一番強いともずっと言われていました」

 ふとユーディアルが話し始めるその内容は、近衛が話していたこの世界の力の源の話だった。

「この世界の摂理で愛が一番強い・・・実は信じている人はあまりいないんです」
「え? そうなんですか?」
「はい、今は迷信扱いしている人のほうがおおいでしょう・・・愛は目に見えないのでなかなか信じられないという人のほうが多い」
「・・・・・・」
「だけど俺は信じてます、というかファイが証明してくれたんです。エミーというのはファイの恋人で、彼女と恋人同士になった途端魔法力が上がった瞬間をこの目で見たので」

 ファイの恋人はユーディアルも含めて三人幼馴染だった。二人が両片思いだった事を知っていたユーディアルがそれぞれの背中を押して晴れて恋人となり、次の瞬間勇者の相棒として力を発揮していた。

「だから俺は信じています、愛はこの世界で一番強いって・・・俺自身も実感したと、いうか」
「実感?」
「・・・いえ、何でも、ないです」

 そう答えるユーディアルは少し恥ずかしそうにはにかんでおり、リーンは意味はわからなかったがその表情が少しだけかわいいな、と思うのだった。



「もう少しでルーン・リバーの村です」

 ユーディアルはユニコーンを止め、リーンを下ろした。

「ありがとうございます」

 丁寧に礼を言うリーンにユーディアルは嬉しそうに微笑んだ、キラキラと眩しいその笑顔に思わずくるりと背を向けると

 ドン

 いきなり何者かに背中を押される。

「きゃっ」

 思わず倒れるっと目を瞑った瞬間だった。

「危ないっ」

 スポッ

「あ」

 むにゅっ

「あぁんっ」

 ユーディアルの焦った声の後に似つかわしくない感触と思わず色っぽい声を出してしまうリーン。理由は倒れそうなリーンに手を伸ばしたユーディアルの手がローブの脇に動きやすくするために入っているスリットに手が入り、胸を直に揉んでしまった。

 どうやら聖獣がリーンの背中を押してしまったようだ。

「ももも申し訳ございませんっ!」

 モニュモニュ

「はぁん、ダメェ、そんな、あんっ、優しく揉まれたらぁ」
「あわわわ、す、すみませんっ、す、すぐ離しますからっ」

 逞しい体で本気で焦るユーディアル、動かしているつもりはなくてもその柔らかい胸を愛でたくてしょうがない欲望が素直に手に現れていた。

「あふぅん、こす、れるぅ」
「くっ、はぁはぁ」

 流石に大慌てでかつ優しく手を服から引き抜く、しかしどうしても逞しい手がリーンの乳首を擦り彼女の喘ぎ声は漏れてしまう。

 バッ

「あぁん、イィッ」
「リ、リーン様っ、も、申し訳ありませんんんっ」
「はぅ、ん、ぁ、だ、大丈夫です」

 そう言いながらも顔を真っ赤にさせ体をぴくぴくふるわせている姿は大丈夫なようには見えない。

「ちょ、っ、と、腰に、力が、入らないくらいです」
「っ、すみませんでしたーっ」

 へたり込むリーンにこれでもかと頭を深く下げ謝るユーディアルだが、手に残る彼女の柔らかい胸と感じているの主張する乳首の硬さが忘れられないでいた。
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