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後編 儀式の真実

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大学の講義が終わり、オカルトサークルの部室へと向かう。

「こんにちは~」

「あれ?田中くんじゃん。なんか隈ひどくない?」

「そうなんすよ~昨日藤田と飲み過ぎて。」

サークル部長の小山さんだ。
結構オカルトに詳しく、話が面白い。

「酔った勢いで降霊術してみたんすけど、なんもなかったっすわ。」

「へぇ~、こっくりさんとか?」

「いや、なんか~。しょん君?とかいうやつです。」

軽い世間話のつもりで、小山さんに話しかける。

「え!?しょん君!?」

小山さんは血の気の引いた顔で俺の肩を掴んだ。
一緒にホラー映画を見ていても見たことのない青白い小山さんの顔。何か不味いことを言っただろうか。

「ど、どうしたんすか?何か…「何もない!?大丈夫!?」

「はい…全然。」

「そ、そっかぁ…はぁ…」

しょん君って、そんなにやばい儀式なのだろうか。今更になって汗が噴きだす。

「ごめんね、突然取り乱しちゃって…」

「いえ…それで、しょん君って…」

「あまり、口にしないほうがいい。」

「え?」

「その儀式は、ある村に伝わるものなんだ。」

村…?

「華租村っていう…中国の村なんだけどね、今はどうなっているのかよくわからないんだけど、あまり栄えていない村があったんだ」

小山さんは語る。
その華租村は、天候によって生産される作物の量が変動する村で、政府からの重い税に困窮していたそうだ。

「そこで、華租村の村長は政府へ税金の代わりに、労働力を送ることにしたんだ。若かったら、男でも女でも関係なく。」

「うわぁ…」

労働力として連れられた人々で、村に帰れた人は1人もいなかった。過酷な労働環境に心折れ自殺する人や、逃げ出して殺される人が後を絶たなかったんだとか。

「仕方ないよ。過酷な労働に、10代かそこらの少年少女が耐えられるわけない。それに、労働力と言っても、生贄となんら変わらないよ。」

「それで、その村は…」

「その労働者に、お供えものをすることにしたんだ。数少ない果物や特産品と一緒に、祀ったんだ」

大量のお香に村の人々の髪の毛。数少ない食料。
村の人々の飢え死にしてしまうかもしれない中で、労働者のために。

「髪の毛…っすか?」

「そう、田中くんもしただろう?華租村の村長は髪にまで人々の心が宿ると考えた。だから、髪の毛もお供えしたんだよ。」

「そうなんすね…」

「この話、ずっとずっと昔の話だと思ってたけど…」

「え、違うんすか?」

「田中くんは、どこでこの儀式を知ったの?」

「藤田がサイト見つけて…」

「ちょっと、見せてもらってもいい?」

「はい」

そう言って俺はスマホを操作して、『恐怖体験~降霊術~あなたは恐怖だろう』というサイトを見せた。

「いや~酔ってたから気づかなかったすけど、誤字多すぎっすね」

「やっぱり…」

そうして小山さんはまた、青白い顔で語り始めた。

「誤字が多いのって…多分、日本人がこのサイトを作ったからじゃないと思う。」

「え?それって…」

「きっと、華租村の人…中国人だよ。現代でも、その生贄は続いているんだ。そして、お供えの量をもっと増やそうと思ったに違いない。」

「つまり…サイトで拡散して、日本でもお供えをしてもらおうと思ったってことっすか?」

「多分ね。お香に髪の毛。しゅん君って、多分、こっくりさんに似せた名前じゃないかな。さんを、くんにしたんだ。それでより、浸透させようとしたんだろう。」

「しょんって、どういう意味がなんだろう…それに、儀式中のすいちぇあも…」

なんの意味もないと思っていた言葉だけれど、この儀式の真実を知ったからには突き止めずにいられない。
早速ネットの中国翻訳サイトで調べてみる。


「え…!?」

「どうだった…?」

「しゅんは、お香って意味で…」

震えが止まらない。カタカタと震える手を押さえながら、小山さんに話す。

「すいちぇあは、死者って意味でした…」

「やっぱり。その儀式は華租村のお供えで間違いなさそうだね」

「はぁ…俺もう、こういう儀式するのやめます…」

「うん。それがいいよ」

ネットで調べた儀式をするのは、やめてもいた方が身のためだとゾッとした出来事だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

明かされなかった秘密

・しょん君の君は、こっくりさん的なものでつけられていたと2人は考察していたけれど、中国では君は故人につけるものでもあるよ。

お供えしてたお香に、君…?
お香って、もしかしたら、人だったのかもしれないね。

・華租村では、お香と髪の毛の他に、果物や特産品もお供えしていたよ。
特産品って、とっても甘いお菓子だったんだって。
あれ…?作中で、甘いものを買っていた人がいたね。
お供え物として見られても仕方ないかも。もしその場で食べていたら、“食べた人”までお供え物として見られていたかも…
どうなったんだろう?

・小山さん、オカルトサークルの部長ってだけで、そんなに詳しくなるものかな…?
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