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河童
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花木山公園の川には河童がいるらしい。
そんな噂が流れ始めたのは今年の4月にあった遠足以降のことだ。
花木山とは、私が通っている高校からも見える、誰でも簡単に登れるようになっている山だ。
標高100mほどの頂上にはちょっとした展望台があるような。うちの高校では遠足のコースとしてその山を登っている。
1時間もかからず登れる上に展望台からの景色もまずまずなので遠足などにもってこいなのだろう。
そして、その山を下山したところにちょっとした川が流れている。足首が浸かるくらいだろうか。場所によれば腰が浸かるくらいの深さがあるかもしれない。
そんな川だ。
その川に沿って目的地に向かう途中、男子生徒がふざけて川に入っていった。
「うわっ、つめて~」
「おい、お前濡れるって!!」
そんな声とともに何人かの笑い声がする。
そんなときだった。
「危ないから入るな!!」
和やかな遠足中に担任の怒号が響き渡り、皆驚いていた。普段怒るような先生ではないこともあり、余計不思議に思ったのを覚えている。
そんなに怒るほど、あの川は危険だろうか。
その後の遠足はひどいもので、どんよりとしたまま目的の公園に到着した。
この遠足があってからだ。
「あの川には河童がいる」そんな噂話が流れ始めたのは。
「俺見たんだって、顔がぶくぶくしててさぁ…」
「それ、私も見たかも、緑じゃなくて、青白いんでしょ」
「なんか寝てるみたいでさ、河童も昼寝とかすんだね」
「不気味~」
「結構キモいらしい」
「髪みたいなの生えてるんでしょ」
クラスでは河童の話でもちきりだ。
どうして急に河童だなんて…
もう高校生だ。妖怪に興味をもつ年頃でもない。
それは本当に河童なのだろうか…
いいや、河童なんかいるわけがない、馬鹿げている。
そう思った私は、放課後に花木山へ行ってみることにした。ちょっとした好奇心と期待が入り混じり気分は探偵である。
花木山を過ぎ、川を沿って歩いていく。
何もいない…
やっぱり、ただの噂話にしかすぎないのか。
少しがっかりして踵を返そうとすると…
足に何かがあたった感触がする。
石とか、葉っぱとか、そういった類ではない気がする。
おそるおそる、下に目線を向ける。
本当に河童だったらどうしよう…そんな思いとは裏腹に、足には水でぐちょぐちょになった帽子があたっていた。
ほっと胸を撫で下ろす。なんだ、帽子か…
拍子抜けし、今日はさっさと帰ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
河童の正体は、川で溺れた水死体だという説がある。
そんな噂が流れ始めたのは今年の4月にあった遠足以降のことだ。
花木山とは、私が通っている高校からも見える、誰でも簡単に登れるようになっている山だ。
標高100mほどの頂上にはちょっとした展望台があるような。うちの高校では遠足のコースとしてその山を登っている。
1時間もかからず登れる上に展望台からの景色もまずまずなので遠足などにもってこいなのだろう。
そして、その山を下山したところにちょっとした川が流れている。足首が浸かるくらいだろうか。場所によれば腰が浸かるくらいの深さがあるかもしれない。
そんな川だ。
その川に沿って目的地に向かう途中、男子生徒がふざけて川に入っていった。
「うわっ、つめて~」
「おい、お前濡れるって!!」
そんな声とともに何人かの笑い声がする。
そんなときだった。
「危ないから入るな!!」
和やかな遠足中に担任の怒号が響き渡り、皆驚いていた。普段怒るような先生ではないこともあり、余計不思議に思ったのを覚えている。
そんなに怒るほど、あの川は危険だろうか。
その後の遠足はひどいもので、どんよりとしたまま目的の公園に到着した。
この遠足があってからだ。
「あの川には河童がいる」そんな噂話が流れ始めたのは。
「俺見たんだって、顔がぶくぶくしててさぁ…」
「それ、私も見たかも、緑じゃなくて、青白いんでしょ」
「なんか寝てるみたいでさ、河童も昼寝とかすんだね」
「不気味~」
「結構キモいらしい」
「髪みたいなの生えてるんでしょ」
クラスでは河童の話でもちきりだ。
どうして急に河童だなんて…
もう高校生だ。妖怪に興味をもつ年頃でもない。
それは本当に河童なのだろうか…
いいや、河童なんかいるわけがない、馬鹿げている。
そう思った私は、放課後に花木山へ行ってみることにした。ちょっとした好奇心と期待が入り混じり気分は探偵である。
花木山を過ぎ、川を沿って歩いていく。
何もいない…
やっぱり、ただの噂話にしかすぎないのか。
少しがっかりして踵を返そうとすると…
足に何かがあたった感触がする。
石とか、葉っぱとか、そういった類ではない気がする。
おそるおそる、下に目線を向ける。
本当に河童だったらどうしよう…そんな思いとは裏腹に、足には水でぐちょぐちょになった帽子があたっていた。
ほっと胸を撫で下ろす。なんだ、帽子か…
拍子抜けし、今日はさっさと帰ることにした。
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河童の正体は、川で溺れた水死体だという説がある。
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