サーベイランスA

淀川 大

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第1部

2038年4月15日(木) 

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 ここは新首都の西部に位置する旧市街にある蕎麦屋「八重天やえてん」である。新首都は旧市街と新市街に分かれている。旧市街は、かつてこの地域の中心部であった都市で、新首都としての機能都市である新市街が建設される以前から存在している古い街である。遷都以前は政令指定都市の一であった旧市街は、それなりに栄えてはいたが、昭憲田しょうけんた池の周囲に新市街が建設されると、地元企業は次々に新市街へと移転していき、産業と労働人口の空洞化を招いた。旧市街に残ったのは街で生活する人々に直接必要な物を売る小売業、流通業、サービス業と、漁業を中心とする一次産業のみであったが、人々はその古い街で、隣の新しい町と往復しながら、従来どおりの「普通の生活」を送っていた。
 旧市街の漁港町である梨花りか種田たねだ町には、美味い寿司屋や天ぷら店が多い。その中の、ここ「八重天」は、看板はとなっていたが、知る人ぞ知る「の名店」である。秘伝のタレが最高に美味しい天丼を目当てにわざわざ新市街から通う者も多い。新日の記者たちも車を乗り合わせてやってきた。打合せと称していたが、しっかりと昼食を兼ねていた。
 店の奥の六畳間で新日ネット新聞社の記者たちと新日風潮社の記者たちが机を囲んで座っていた。上座の小さな床を背にして上野秀則が座っている。その左の壁際には重成直人が座っていた。重成の向かいには神作真哉が座り、その隣に山野紀子、山野の向かいには永山哲也が座っていて、その隣に永峰千佳が座っている。春木陽香は、永峰の向かいの末席に座っていた。一人俯いていて元気がない。皆、「八重天」名物の天丼を頬張っていたが、山野紀子と春木陽香の前には掛け蕎麦しか置かれていなかった。黙々と食べる記者たちと違い、春木陽香の箸は進んでいない。
 天丼を平らげた上野秀則が、爪楊枝を咥えながら言った。
「いやあ、こうして大人数での昼飯も、たまにはいいもんだな」
 天丼をかき込みながら、神作真哉が上野に言う。
「だからって、なんでわざわざ旧市街なんだよ。こんな遠くまで」
 蕎麦を飲み込んだ山野紀子が、口元をハンカチで拭きながら言った。
「そう遠くもないじゃない。社員食堂は混んでるし、かと言って、うちのビルの近くの店だと、他社の同業者や関係当事者の昼食とバッティングすることがあり得るでしょ。その辺を考えたのよ。ね、うえにょデスク」
 上野秀則は爪楊枝を動かしながら答えた。
「そういうこと。でも、『上野』だ。それに、話が話だからな。政治部や科学部の奴らにも聞かれたくないし」
 下座から永峰千佳が言った。
「しかも、ここの天丼は美味しいですもんね。うえにょデスク、ご馳走様でーす」
「馬鹿、俺は奢らんぞ。自分で払え。ていうか、上野だ!」
「――ケチ」
 上野の返事に、永峰千佳は口を尖らせた。
 神作の向かいでお茶を飲んでいた重成直人が、山野と春木を見て尋ねた。
「紀子ちゃんとハルハルちゃんは蕎麦でいいのかい。ハルハルちゃん、若いのにそれじゃ足りんだろ」
「私も若いです」
 山野紀子が呟くと、隣から神作真哉が言った。
「四十六じゃねえか」
 春木陽香は青白い顔で答える。
「私はこれで大丈夫です。バス酔いしたばかりですから」
 隣の山野紀子が鼻を摘まみながら春木の方を見て、言った。
「それより、ハルハル、さっきから言おうと思ってたんだけど、あんた、何かちょっと生臭いわよ」
 春木陽香は慌てて自分のリクルートスーツに鼻を近づけた。
「ええ! そうですか。くんくん。――やっぱり、あの『お土産』のせいかな。どうしよう、これ、一張羅なのに」
 山野の向かいの席で天丼の器に蓋を乗せた永山哲也が、湯飲みに手を伸ばしながら春木に尋ねた。
「お土産? ハルハル、出張に行って、お土産まで買ってきたの」
 春木の向かいの席からも永峰千佳が呆れ顔で言う。
「まだ初任給も出ていないのに。相変わらず律儀ねえ」
 春木陽香とあまり面識が無かった上野秀則は、口の前で湯飲みを傾けながら、視線だけを春木に向けていた。
 山野紀子がニヤニヤしながら言った。
「そ。今頃、別府君がその『お土産』と格闘してるわよ」
「なに買ってきたんだ」
 お茶を飲みながら怪訝な顔で尋ねた神作の方を見て、春木陽香は即答した。
「生きた鯉です」
「ブッ」
 神作と永山と上野は、お茶を噴いた。
 永峰千佳が再度呆れた顔で春木に言った。
「あんたね、いくら鯉料理の美味しい町に行ったからって、職場のお土産に『生きた鯉』を買ってきてどうするのよ」
 春木陽香は、麺をすくいながら答えた。
「丸ごと一匹買った方が安かったので……生きたままの方が新鮮ですし……」
 テーブルの上をお絞りで拭きながら、永山哲也が言う。
「だからって……」
 山野紀子が春木を庇うように言った。
「ま、せっかくハルハルが大きなバケツに入れて運んでくれたんだから。今度、そこの那珂世なかよ港近くの寿司屋でさばいてもらって、皆で頂きましょうよ。鯉コクとかアライとかさ、美味しいじゃない。精が付くわよお、きっと」
 じっと春木の顔を見ていた神作真哉が、少し考えてから言った。
「じゃあ、それまでは一階ロビーの水槽で泳いでおいてもらうか。うえにょ、頼んだぞ」
「何で俺なんだよ。それに、上野だし」
 神作真哉は上野に後頭部を向けて、春木に尋ねた。
「それで、どうだったんだ。高橋諒一が民間実験時代に住んでいたマンションの方は」
 春木陽香は箸を止めて、横に置いていた鞄の中を覗きながら神作に答えた。
「はい。高橋諒一博士も、その家族も、昨日私が訪ねた一軒家に引っ越してからは、その町に来た形跡はありませんでした」
 神作真哉が更に尋ねる。
「マンションから引っ越したのは、いつだ」
 春木陽香は答えた。
「あの核テロ爆発の直後だそうです」
 神作真哉は眉間に縦皺を刻んだ。
 永山哲也が春木に言った。
「まあ、あの爆発の近くの町なら、引っ越すのは当然かあ。彼と田爪博士が取り組んでいたタイトラベルの基礎実験施設が核テロ攻撃の標的になった訳だしね。それに、そのテロ攻撃が南米ゲリラの仕業だと判明するまでは、二人の実験の失敗で大爆発が起きたと思われていたのも事実だ。世間からの風当たりも、いろいろと大変だったはずだよね。ご家族は奥さんの高橋千保さんと娘の千景ちゃん、息子の諒太くんの三人だったよね」
 春木陽香は頷いた。永山哲也は首を傾げながら続ける。
「でも、なんだか少し妙だね。せっかくそこから一軒家に引っ越したのに、高橋博士が第一実験で失踪した途端、残された家族はその一軒家を処分して、新首都内に転居したんだろ。まるで前もって準備していたように、手際よく身を隠したと」
 神作真哉が山野の後ろで春木から書類を受け取りながら、意見を述べた。
「といっても、その頃の高橋諒一の職場は、今の司時空庁のタイムマシン発射施設がある場所にあった実験管理局じゃないか。その家からだと、車で一時間ってところだろ。家族も新首都には頻繁に来ていただろうし、地理にも詳しいはずだ。第一実験の後、マスコミの取材から逃れるために都内に引っ越しても、別に不思議じゃないよな」
 上野秀則が腕組みをして言った。
「それに、高橋博士と田爪博士は、上級研究員として特別待遇の高給取りだったしな。もともと都内にも別の持ち家があった可能性もあるんじゃないか。そっちに身を移しただけかもしれんぞ」
 山野紀子も腕組みをして言った。
「だけど、NNJ社が絡んでいるってのは、妙じゃない。前にも話した、ウチで追っている時吉前長官のスキャンダル、あれにもNNJ社が絡んでいるかもしれないし。これ、おかしいと思わない?」
 上野秀則は眉間に皺を寄せる。
「二股不倫か。そもそも不倫自体が二股なのに、さらに不倫で二股すんなよ。あのスケベ爺、アホか」
 ハルハルが渡した登記記録の全部事項証明書に目を通しながら、神作真哉が言った。
「確かにな。NNJ社が自分たちの存在を公簿上に残さないようにしようとしたのは、妙だよな。奴らがパパ時吉のスキャンダルにも絡んでいたとなると、やはり何か臭うな」
 春木陽香は、自分の服の臭いを嗅いだ。
 永山哲也が向かいの山野に言った。
「ノンさんの方で、その高橋博士の二人の子供の転校先を探ったんですよね」
「うん。都内の小学校に片っ端から電話してみたけど、駄目だった。どこの学校にも、それらしき人物がその当時に転校してきた形跡は無いわ」
 神作真哉が隣から言った。
朝美あさみみたいに、旧姓に戻った母親と同じ姓になっているのかもしれんぞ。高橋博士は事実上失踪しているから、家裁で失踪宣告をとって離婚が成立した可能性があるだろ」
 山野紀子は姿勢を正して言う。
「それは、ちゃんと念頭に置いて調べました。お蔭様で良い経験をさせてもらいましたから。でも、ウチの朝美の時もそうだったけど、子供に関しては戸籍に記載された元の姓、つまり親の離婚前の姓も学校では把握しているのよ。前の親が子をさらって行くなんてことが起きないように」
「ゲッ。そうなのか」
 下唇を出した神作に山野紀子が言った。
「あんたのことは、担任のリカコ先生も、ちゃんと顔まで知っているわよ。朝美、今年もリカコ先生のクラスだからね。あんた、今年は家庭訪問の時くらい横に居なさいよ。あの子、今度は受験なんだから」
「そうだな……でも、俺、あの先生どうも苦手なんだよな」
 永山哲也が驚いた顔で山野に言った。
「リカコ先生って、『山東さんとうリカコ先生』ですか。あの、目のパチッとした、声の高い」
「――うん、そうね。哲ちゃん、知ってるの」
「僕、その先生に習ったんですよ。中三の時のクラスの副担でした」
 今度は山野紀子が驚いて言った。
「ええ! ホント。こりゃ、朝美に教えなきゃ」
「ゴホン」
 春木陽香は、大きく脱線した話題に終止符を打つべく咳払いをした。そして、一言だけ意見を述べる。
「引っ越したとは限らないですよね」
「ん? どういうことだ」
 神作の問いに春木陽香は答えた。
「NNJ社に誘拐されたとか」
「誘拐? 動機は」
 今度は上野が尋ねた。
 春木陽香は少し考えて、言った。
「――分かりません」
 春木陽香は口を尖らせて、首を竦める。神作も上野も小さく首を傾げてから、しかめた。
 山野紀子が腕組みをして、少し大げさに顔を曇らせた。
「でも、確かにその線も否定は出来ないわよね。あの家の近所では誰も、高橋博士の家族の本人たちが引越しの挨拶に来たところは無い訳でしょ」
「ええ」
 春木陽香が小声で答えると、山野紀子は大きな声で言った。
「じゃあ、ハルハルの言うとおり、大掛かりな誘拐って線は拭えないわよ」
 上野秀則がさらに深く首を傾げた。
「あのNNJ社がかあ? するかね。大企業だそ」
 重成直人がお絞りで老眼鏡を拭きながら言う。
「誘拐されたのなら、他の親族から失踪届けか何かが警察に出されているだろう」
 神作真哉が困った顔で呟いた。
「高橋諒一と高橋千保の他の親戚関係は分からんかな」
 山野紀子は涼しい顔で答える。
「こっちは警察じゃないからね、勝手に他人の戸籍関係までは調べられないわよね」
 神作真哉は両眉を寄せて腕組みをしながら下を向いた。
「うーん。そうなると……アレを使うしかないかあ……」
 永山哲が頷く。
「ですね」
 上野秀則が尋ねた。
「アレ? なんだよ、アレって」
 神作真哉がすぐに言った。
「いや、何でもない。それより、田爪健三の線はどうなったんだ」
 山野紀子が答えた。
「まだこれから。ただ、真ちゃんや哲ちゃんが言うとおり、田爪博士の唱えていたパラレル・ワールド否定説が正しいのだとしたら、彼が生きている可能性は低いわよね。彼が第二実験で行き先に設定した日時と場所は、第一実験の発射の日時と場所だったのよね」
 神作真哉は山野に問われたが、回答に窮して永山の顔を見た。
 永山哲也は掌を山野の方に見せて言った。
「ちょっと待って下さい」
 彼はその手をズボンのポケットに入れると、何やら親指ほどの大きさの物を取り出した。
「あれ、永山さん、何です、それ」
 隣から見ていた永峰千佳が永山に尋ねた。
 永山哲也は、その小さな機械を自慢気に操作しながら、答えた。
「イヴフォン(EV‐phone)。ケータイを買い換えたんだ。今月、ES社から発売されたばかりの新型機種さ」
 春木陽香は、斜め向いから興味深そうに視線を向けて言った。
「すごーい。最新式じゃないですか」
「うん。本来は音声登録して、声で使うやつらしいんだけど……まだ登録してないものだから、この小さなパネルとボタンで……」
 永山哲也はそう言いながらその小さな機械のボタンを押すと、それをワイシャツの胸ポケットに挿んだ。少し間を置いて、永山哲也は言った。
「よし。あ、見えた、見えた」
 永山哲也は顔の前で空中の物を払うように手を動かした。彼の左目は赤く光っている。
 向かいの席の山野紀子が思わず言った。
「うわ、何それ。気持ち悪い。左目が赤く光ってる」
 永山哲也は自分の左目を指差しながら言った。
「ええ。色は好みで変えられるんです。量子波動伝送だったかな、その技術を用いて、ここから直接、脳に対して脳波に似た信号を送るんですよ。去年、『ソウル9』っていう脳内干渉波が発見されたでしょ、あれをどうにかするみたいです。で、映像は、僕の記憶から探って明確に復元した通話相手のイメージを僕の視界に映し出すんです」
「じゃあ、話している『今の相手』の様子じゃない訳だ」
 山野紀子の理解は早かった。
 永山哲也は頷きながら言った。
「そうなります。でも、音声に合わせてスムーズにイメージが動きますし、その人の像以外は普通に目の前の視界が見えるんですよ。だから、目の前にいる感じです」
 春木陽香が永山に尋ねた。
「ウェアフォンの立体動画通信みたいな感じですか」
「そうだね。でも、ホログラフィーだと、周りの人からも見えちゃうだろ。それに、ハンズフリー通話だから、別売りのイヤホンマイクを接続しないと、会話も回りに聞こえちゃう。この前、資料室でのノンさんの指導みたいに。耳の下に当てて通話しながら、下からホログラフィーを前に映し出すタイプ、僕がこの前に使ってたのがそれだったんだけど、あれは角度を変えないようにウェアフォンを持っておかないといけないから、肩が凝るんだよね。まあ、大抵の人は手からの骨伝導で使っているんだろうけど、それだと、どうも聞き取り難いでしょ。その点、このイヴフォンは、こうやって胸のポケットとかに入れておくだけで、音声は聴覚野に直接届くから、すごくクリア。相手のイメージは僕にだけしか見えないし、音声も僕にしか聞こえない。音波じゃないから、絶対に他人には聞こえない訳さ。しかも、首を動かしても、一定の位置にイメージが見えている。だから、すごく楽だよ」
 春木陽香は更に尋ねた。
「じゃあ、誰と話しているか回りに知られることは無い状態で、立体動画通信みたいなことができるんですね」
「そ。まあ、僕の声はマイクで拾わないといけないから、こっちは声を出さないといけないけどね」
 また春木陽香が尋ねた。
「脳波とかで、声っていうか、考えている言葉を伝えて通信できないんですか」
「技術的には可能なのかもしれないけど、自分が考えていることが全部相手に伝わる通信機なら、ハルハルは買うか?」
 春木陽香はチラリと横の山野を見てから答えた。
「ぜったい買いません」
 プルプルと首を横に振っている春木を見ながら、神作真哉が言った。
「紀子と通話できないもんな」
 コクコクと首を縦に振っている春木を見ながら、山野紀子が低い声で言う。
「ん。どういうことよ」
 春木陽香は首を窄めて蕎麦を吸った。
 永山哲也は、その最新式の携帯電話機の説明を続けた。
「それに、ホログラフィー通話は電池を食うでしょ。これは僕の脳の中の記憶情報をいじるだけだから、ほとんど電力は使わない……らしいけどね」
 横から永峰千佳が永山の胸元を覗き込みながら尋ねた。
「それもO2オーツー電池内蔵タイプなんですか。取替えは?」
「メーカーに頼めば、一応は出来るみたいだよ。でも、O2電池だから、ほとんど電池切れになることは考えられないって、販売店のお姉ちゃんは言ってた。なんてったって、O2電池は百二十年持つそうだからね」
 すると横の重成直人がボソリと言った。
「どうかねえ、O2電池を使ったレーザーカメラとか、すぐに電池切れするって、前にライトちゃんが言ってたぞ」
 山野紀子が人差し指を振りながら重成に同調する。
「そうそう。結局、ちょっと長持ちする電池が発売になったら、すぐに、大量に電力を消費する商品が出てくるんですよね。自分でO2電池を交換できるタイプって、大抵はそうなのよ。O2電池って高いし、なんか騙されてる気がして、頭に来るわよねえ」
 永峰千佳は永山のワイシャツの胸ポケットを指しながら言った。
「でも、そのイヴフォンって、相手が3Dカメラの前に居なくても、立体通話通信みたいなことが出来るんですよね。それ、いいですね」
「だろ。なんか、立体動画通信に慣れちゃうと、音声通信だけじゃ会話しづらくないか? 実際に相手の像を見てないと、こう、言葉が出てこないって言うかさ。その点、このイヴフォンは立体動画通信みたいな感じで通話できるし、しかも、こうして両手が空くから、すごく便利なんだよ」
 永山哲也は両手を振って見せる。
 神作真哉と上野秀則は顔を見合わせて、首を傾げた。
 春木陽香がもう一度尋ねた。
「他の機能はどうなんですか。ネット通信とか」
「だいたい一緒だね。複雑なものじゃなければ、ネットの画像も脳内で見れるし、アプリのダウンロードもできる。外部端末との非接触式通信とか、キーロックとかの機能も付いているよ。十分だろ」
 神作真哉は心配そうな顔で永山に言った。
「でもよ、それ、脳に悪くねえか。大丈夫なのか」
「説明書に、使い過ぎに注意とか、通話しながら運転するなとか、歩行中に使用するなとか、色々書いてありますけど、脳に影響が出るとまでは書いてないです。まあ、気になるようなら、自分で設定すれば、使用時間を制限したりできるみたいですし、大丈夫じゃないですか」
 永山の説明を聞いた神作真哉は、腕組みしながら疲れたように言った。
「なんか、あれだな。永山たちより下の若い世代には受け入れられても、俺たちにはなんか……な」
 彼は同意を求めて隣の山野の顔を見た。山野紀子は手を上げて言う。
「はーい。私はいいと思いまーす。買い替えちゃうかも」
 ぶりっ子ポーズをとって、左右の神作と春木から冷ややかな視線を浴びている山野の前で、永山哲也は説明を続けた。
「その他にも、この本体に記憶させた文書画像とか、写真とか、電話帳なんかを頭の中に映し出すことが出来ます。今、僕の視界には、この天丼のどんぶりの前に資料室でトレースした資料文書が見えてるんですよ。あ、シゲさんも使ってみます?」
 重成直人は手を振った。
「いいよ。記憶を探られると、要らん物が色々見えちまうそうだから。千佳ちゃんに使わせてやりなよ」
 永山哲也は反対を向いて永峰にイヴフォンを差し出した。それを受取り、自分のTシャツの胸の位置に留めた永峰千佳は、宙を見ながら言った。
「わあ、見えた。――ふーん。やっぱ、周りが普通に見えているからかな、私が使ってるヘッド・マウント・ディスプレイとは全然違うなあ……。でも、なんだろ、この感じ。ホログラフィーとも、なんか、ちょっと違う。鮮明な映像ってわけでもないのに、なんだか、すごくリアルな気がするわね。不思議。――ほら、ハルハルも」
「あ、いいんですか」
 春木陽香は永山を見た。永山哲也は笑顔で頷いた。
「じゃ、ちょっとだけ……」
 永峰からイヴフォンを受け取ると、春木陽香もそれをスーツの襟に付けてみた。左目を赤く光らせながら、彼女は言った。
「あ、ほんとだ。見える見える。ホントだ、変な感じですね。ホログラフィーとは違って、遠近感がこう……わ!」
 両手を空中に伸ばした春木陽香は、机の上の蕎麦の器に肘をぶつけた。傾いた器から汁が少し溢れて春木のスカートの上に掛かる。
 山野紀子が慌ててハンカチで春木の膝の上を拭いた。
「ほら、何やってるのよ。一張羅なんでしょ」
 春木陽香は涙目になって、お絞りでスカートを拭いた。
「はあ、どうしよう。スーツ、これしか持ってないんです。――明日から普通の服でいいですか」
 山野紀子は呆れた顔で言った。
「いいわよ。ただし、ギャル風は駄目よ。露出系も禁止。ライトの餌食になるから」
「わかりました」
 上野秀則が鼻の穴を膨らませた。
「俺たちは歓迎だけどな、なあ、神作……イテッ」
 大きな打撃音がした。
 頭を押さえた上野に、神作真哉が右手を振りながら言った。
「おまえ、管理職失格だな」
 春木から返されたイヴフォンを胸ポケットに挿した永山哲也は、再び左目を赤く光らせたまま言った。
「それより、さっきの話ですが、確かに田爪博士が第二実験で飛び立った先は、第一実験の日の、その場所ですね。二〇二七年九月十七日。ただし、時間は第一実験で高橋博士が飛び立った十秒後です」
「衝突を避けた訳ね」
 山野の指摘に、神作真哉が疑問を投げた。
「衝突したらどうなるんだ。そこに何かが在る場所に、タイムマシンが出現したら」
 上野秀則が意見を述べた。
「さあな。たぶん、ぐちゃぐちゃじゃねえか。搭乗者の位置が椅子とかハンドルとかだったら、こう、内側から体がやられて、バシュッと……」
「うぷっ」
 まだ蕎麦を食べていた春木陽香は、頬を膨らませて口元を両手で塞いだ。
「うーえーにょー。食事中でしょ」
 山野紀子が軽蔑的な視線を上野に送る。
 重成直人が話を戻した。
「だが、実際にその場に現われなかったってことで、国は高橋説が正しいと決め込んだ訳だろ。もしそれが間違っていて、田爪説が正しいのだとすれば、やっぱり時間軸は一本だということだ。そうなると、田爪健三はどこに行ったんだ。実験に失敗して、消滅して死んだってことか……。第一実験の日に現れなかった訳だからな」
 永山哲也はイヴフォンを切ると、目頭を押さえながら言った。
「高橋説が正しいのなら、二人とも、この時間軸上には居ない訳ですから、彼らのどちらかが『ドクターT』である可能性は互いにゼロですもんね。まずは、我々としては、田爪説が正しいという前提で考えた方がいいかもしれませんね」
 神作真哉が頷いてから言った。
「だな。だとすると、田爪は死んでいる可能性が大。残るは高橋。それでも高橋を見つけられなかった場合は、国の言うとおり高橋説が正しい可能性が大きいから、改めて『ドクターT』の正体を一から洗い直す、それしかないな」
 誰も、例の論文に書かれていた短い一文について触れようとはしなかった。春木陽香はそれについての意見を述べようとしたが、横から山野紀子が深刻な顔で発言したので、発言を躊躇して口を閉じていた。一瞬だけ永山と目が合う。
 山野紀子は言った。
「そんなことより、今度の二十三日よ。欠陥があるかもしれないタイムマシンで人が送られるのよ。何とかしないと」
 神作真哉は深く頷いた。
「そうだな。とりあえず搭乗者数をもう一度調べてみたんだが、四月二十三日金曜日に搭乗するのは最大で合計五名だな。氏名や性別、年齢などは当然わからなかったが、まず朝の七時に初の家族機の発射が実施されるのは確かなようだ。それに定員いっぱいの四名が乗って旅立つと考えた方がいいだろう。その後、夕方の四時に従来どおり単身機で一名。そういう予定みたいだ」
 山野紀子は顔を横に傾けて、少し苛立ったような口調で言った。
「司時空庁はあの論文を受け取っているのよね。それなのに、どうして家族まで乗せて飛ばそうとするのよ。危険かもしれないのに。まさか、受け取っただけで読んでないんじゃないでしょうね」
 神作真哉は後ろの畳に両手をつくと、体を少し後ろに倒した姿勢で言った。
「たぶん『ドクターT』もそう考えて、論文を送り続けたのかもな。俺が得た情報では三十二回も送っている。シゲさんが掴んだネタのとおりだったよ」
「さん……三十二回? ってことは、ほぼ毎月送っていたのかよ」
 そう言った上野の方に目線だけを向けて、神作真哉は落ち着いた口調で説明した。
「ああ。『ドクターT』のあの論文は、二〇三五年の七月から今年の二月まで、毎月、タイムマシンの発射日である二十三日より前に、上申書の添付データという形で司時空庁に送られているんだ。上申の内容は、もちろん、タイムトラベル事業の即時中止の要求。こんなに長い間送られてきていて、しかも、正式な行政文書に残す形で届いていて、司時空庁の奴らが読んでいないなんてことは、まずあり得んな」
「そう考えてとは、どういうことです?」
 永山哲也からの質問に、神作真哉は一度だけ片眉を上げてから答えた。
「司時空庁が、田爪博士が設計した単身乗り用のタイムマシンをカスタマイズして複数搭乗機にするという構想を打ち立てたのが、丁度今から三年前だ。津田が二期目の長官に就任した頃だよ。『ドクターT』は、その頃から上申書と論文を送り始めている」
 上野秀則はもう一度神作に尋ねた。
「どうやって分かった」
 神作真哉は姿勢を変えずに答えた。
「文書公開請求さ。司時空庁の郵送申請に関する受付記録の一覧を、過去十年分、取得してみた。差出人欄が黒く塗りつぶされてもいない、名前も書いていない、提出者欄が完全に空欄の受付記録が三年前の七月から毎月、存在していたんだ。あいつらも、過去にウチの会社から別件の質問書を郵送で受け付けていた事実があったから、その記録との整合性を保つために、受付記録そのものを改ざんして真実を隠す訳にはいかなかったんだろう。で、その差出人不明の提出文書全ての閲覧を再請求してみた。そしたら……」
 隣でお茶を飲みながら、山野紀子が言った。
「そっちは真っ黒けだった、そういうことでしょ」
 神作真哉は黙って大きく頷いた。
 上野秀則が膝を叩いて言った。
「ったく、マスキングか。あいつら、いつも国民に情報を隠しやがる」
 重成直人が口を開いた。
「つまり、その提出文書が『ドクターT』から送りつけられた上申書で、外部に知られると不味い内容だから、公開文書は全文が黒く塗り潰されていた、ということだな」
 神作真哉は再び頷いた。
 重成直人が神作に指を振って言った。
「こっちも有るぞ。総理府の担当秘書官から聞いた話なんだが、先月と今月は、やはり官邸にも同じものが届いていたそうだ」
「さっすが、もと敏腕政治記者。顔が利くう」
 重成を指差した山野の隣で、神作がその指を掴んで下に降ろしながら、言った。
「そうすると、合計三十四回か……」
 蕎麦を食べ終えた春木陽香が、咀嚼しながら必死に発言した。
「三年弱の間、『ドクターT』さんは、政府に対してタイムトラベル事業の危険性を訴え続けたってことですよね。モグモグモグ……」
 山野紀子は深刻な顔で頷いて、言った。
「そうなるわね。『ドクターT』がどうして、あの論文と同じものを三十四回も送り続けたのかは分からないけど、ただ、あれだけの量の論文を書くには、相当に長い年月をかけて研究を続けたはずよね。すごい執念だわ」
 神作真哉も深刻な顔で言った。
「それだけ、あのタイムトラベル事業の安全性に強い疑念を持っているということなのかもしれん。――千佳ちゃん、南米の神様について学会のウェブサイトに書き込んだ人物は絞れそうか」
 永峰千佳が答えた。
「ええ。人物の特定は無理ですけど、衛星多次元ネットを経由していましたから、使用した人工衛星のナンバーは分かりました。書き込みがされた時刻にその衛星がカバーしていた地域は、南米大陸の北東部あたりです。なので、その辺りからの発信だと思います」
「そうか……」
 とだけ答えた神作真哉は、再び腕組みをした。
 永山哲也が呟いた。
「やっぱり、戦闘区域から少し離れた場所かあ」
 すると、神作から質問が飛んだ。
「永山、南米の謎の科学者について何か分かったか」
 永山哲也はズボンの後ろのポケットから手帳を取り出して、それを開きながら答えた。
「とりあえず、ここ十一年間で南米入りした科学者について調べてみました。しかし、どの科学者も、環境や動物の専門家ばかりですね。戦争被害の実態調査で南米に入っています。しかも、半数以上が死んでいます。流れ弾にあたったり、地雷にやられたり。消息不明の者や遺体が見つかっていない科学者は居ません。それから、世界中で行方不明になっている科学者も調べてみましたが、インターポールやFBIが公開している所在不明の科学者でタイムトラベルや量子力学の専門家は居ません。ほとんど、電気工学かロボット工学、あるいは兵器関係の専門化ばかりです。特に、核兵器」
 神作真哉が永山に言った。
「核兵器関係の専門家なら、量子力学にも精通しているだろ」
 隣の席で目をパチクリとさせて、山野紀子が言う。
「そうなの? なんで真ちゃんがそんなことを知ってるのよ」
「うるせえ。勉強したんだよ」
 重成直人が山野に言った。
「神作ちゃん、会社に泊まりこんで徹夜で本を読み漁っていたからな」
「そうなんだ……」
 自分を凝視する山野から顔を逸らすと、神作真哉は座り直しながら言った。
「シゲさん、余計なことは言わんでいいです。それより、真明教の資料は集まりましたか」
 重成直人は頷きながら、顔の前で手を振った。
「ああ。ありゃ、とんでもないバケモノ宗教団体だな。今でも世界中に急速なスピードで広がっているようだ。だが、どの国でも評判はよくないな」
「と言うと」
「金だよ。例の通り『お布施』って奴さ。かなり高額の寄付金を富裕層の入信者たちから強引に取り立てているらしい。ヨーロッパでの裁判の記事を探してみたら、まあ、出るわ出るわ」
 神作と重成の会話を聞いていた上野秀則が顎を触りながら言った。
「そんな宗教団体が、戦争真っ只中の南米で布教か。でも、富裕層はとっくの昔に国外に脱出していて、今は軍人と戦争難民くらいしか残っていないはずだよな。妙だな」
 重成直人が上野の方を向く。
「それがですな、金持ち連中から集めた金を、どうも本当に戦争難民の救済に当てているようなんですよ。南米の各所に避難所というか、難民の保護施設のようなものを作っている。保護施設といっても、小さな町みたいなものですからな。どの施設も数万人を保護しているって話です。そこに、食料や医薬品などの必要物資を送り込んでいるようなんですよ。そんな宗教団体が今回の件と関係があるとは、どうも思えんのですが……」
 そう言って胡麻塩頭を掻いている重成に神作真哉が言った。
「いや、その宗教団体の教義が問題なんです。もう少し資料を集めてもらえませんか」
「分かった」
 快く返事をしてくれた先輩記者に一礼した神作真哉は、今度は上野に尋ねた。
「うえにょ。時吉ジュニアからの返事は」
 上野秀則は眉間に皺を寄せて答えた。
「いや、思い当たる筋は無いそうだ。どうも彼は、あの論文を読んで、自分で何とか発射を止めようと考えていたみたいだな。司時空庁に対して、タイムトラベルの実施を禁止する仮処分を裁判所に発してもらおうと、本気で検討していたようだ」
 神作は首を振りながら上野に言った。
「それはやめるように伝えるんだ。そんなことをしたら、『ドクターT』は即座に消されてしまう」
「はあ? なんで」
 口を尖らせてそう尋ねた上野に、神作真哉は説明した。
「いいか、うえにょ。この『ドクターT』が三年近くもの間、抗議文に近い論文を司時空庁に送り続けることができたのは、司時空庁の方が手を出さなかったからだ。STSとかいう実力部隊まで持っているあの司時空庁が本気になれば、『ドクターT』も時吉ジュニアも、俺たちも、いつでも消せるはずだろ。その司時空庁が動かずにいるのは、きっと何か特別な理由があるからだ。それなのに、こんな時に裁判を提起したら、ケツを焚かれた司時空庁は動き出すぞ。必ず『ドクターT』を消しにかかる。それに、NNJ社の動きも気になるところだ。バックにはNNC社がいる。あの国の企業だ。何らかの権利を主張してこの件に正面から介入してくることは十分に考え得るだろ。今はこっちの準備が何もできていない状態だ。裁判に持ち込まれれば、訴訟法を盾にされて、こっちは全く取材ができなくなるかもしれん。そうなれば、お手上げだ。だから、とにかく今は待つように言うんだ」
「分かった、伝えとこう……って、だから、なんでおまえが俺に指示してるんだ」
 顔をしかめている上野に、山野紀子が口元に湯飲みを近づけたままボソリと言った。
「あ、『うえにょ』でいいんだ」
「いい訳ないだろ!」
 即答した上野を無視して、永山哲也が神作に尋ねた。
「キャップ、岩崎さんからの返事は、まだですか」
 神作真哉は首を横に振る。
「ああ、まだだ。だが、アイツにはしっかり読み込んでもらわんとな。俺たちみたいに、斜め読みってことでは困る。少し待とう。彼女が読み終えてから、いろいろ内容を教えてもらえばいい。永山、それ、おまえの担当な」
 永山哲也は自分の顔を指差して、目を丸くした。
「僕ですか? ――嫌ですよ、面識も無いですし。キャップか、うえにょデスクの方でお願いします」
 上野秀則がワイシャツの襟を整えながら言った。
「その岩崎とかいう技官さんは、相当な美人だと言っていたな。じゃあ、独身となった神作より既婚者の俺の方が安全……」
 また上野に後頭部を向けて、神作真哉は春木に言った。
「じゃあ、ハルハル、頼むな。おまえが行って、話を聞いてきてくれ。俺は同級生だからな。何か、あいつに教えてもらうと、何か、腹が立つんだよ。分かるだろ」
「はあ……」
 少し困惑気味に春木陽香は返事をした。
 神作真哉は立ち上がりながら言った。
「とにかく、何か決定的な証拠を見つけて、司時空庁か官邸に突きつけないと、揉み消されちまうぞ。紀子とハルハルは、まずは高橋諒一の家族の行方を追ってくれ。あとは、それぞれの担当を継続して遂行。以上、解散。上野デスク、ご馳走様でした」
「ご馳走様でしたあ。上野デスク」
 全員が合掌して上野に御辞儀した。
 上野秀則は顔の前で手を振って答えた。
「いやあ、気にするな……って、コラ! 奢らんぞ。なに立ち上がってんだ、おまえら。ちゃんと払って帰れよ。俺は奢らんからな。ていうか、こんな時だけ『上野』か。コラ、待て。上司を置いて帰るな!」
 記者たちは蕎麦屋の個室を後にした。
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