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俺と太鼓と祭りと夏と
第24話だ 助けてあげるぞ
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「美歩ちゃん、何してんだ、こんな所にしゃがんで」
「あ、桃太郎さん。ほら、見て。蝉さんだよ。元気がない。風邪かな」
あらら、随分と弱っているな。瀕死の状態じゃないか。こりゃ駄目だな。
「――ホントだな。きっと、鳴き疲れたんだよ」
「死んじゃうのかな……」
「そうかもな。俺も図書館で少し調べたんだが、こいつらは夏までが寿命なんだ。きっと、こいつらなりに、ひと夏の短い命を全力で精一杯に生きたんだよ。悔いはなかろう」
「食べちゃ駄目だよ」
「食べるか! 俺を何だと思っているんだ、美歩ちゃん」
美歩ちゃんは瀕死の蝉を優しく両手で包む。何をする気だ。まさか、食べるのか?
「蝉さんは、木の汁を吸うんだよ。お腹一杯になれば、元気になるかも」
「いや……どうだろうなあ、老衰のじいさんを食べ放題の焼肉屋などに連れて行ったら病気が治ったと言う話は、聞いたことが無いが……」
「どこか、いい木はないかな」
「ああ、人気のファミレスならぬセミレスなら知ってるぞ。仇に恩で報いる事になるが、まあ、これも善行だな。こっちだ、美歩ちゃん。ついてきな」
仕方ない。美歩ちゃんの気が済むようにしてやるか。
という訳で、美歩ちゃんを連れて観音寺に向かう。
「あ、桃太郎さん。ほら、見て。蝉さんだよ。元気がない。風邪かな」
あらら、随分と弱っているな。瀕死の状態じゃないか。こりゃ駄目だな。
「――ホントだな。きっと、鳴き疲れたんだよ」
「死んじゃうのかな……」
「そうかもな。俺も図書館で少し調べたんだが、こいつらは夏までが寿命なんだ。きっと、こいつらなりに、ひと夏の短い命を全力で精一杯に生きたんだよ。悔いはなかろう」
「食べちゃ駄目だよ」
「食べるか! 俺を何だと思っているんだ、美歩ちゃん」
美歩ちゃんは瀕死の蝉を優しく両手で包む。何をする気だ。まさか、食べるのか?
「蝉さんは、木の汁を吸うんだよ。お腹一杯になれば、元気になるかも」
「いや……どうだろうなあ、老衰のじいさんを食べ放題の焼肉屋などに連れて行ったら病気が治ったと言う話は、聞いたことが無いが……」
「どこか、いい木はないかな」
「ああ、人気のファミレスならぬセミレスなら知ってるぞ。仇に恩で報いる事になるが、まあ、これも善行だな。こっちだ、美歩ちゃん。ついてきな」
仕方ない。美歩ちゃんの気が済むようにしてやるか。
という訳で、美歩ちゃんを連れて観音寺に向かう。
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