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俺と太鼓と祭りと夏と
第14話だ ちょっと気づいたぞ
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俺が「ただいまあ」と事務所兼住居の二階の和室を覗くと、美歩ちゃんが机の上で夏休みの宿題をしている。他人に言われなくても自分で勉強する感心な子だ。
でも、今日は午前中にプールに行ったんじゃなかったっけ。もう帰ってきたのか。
あれ? ビニールの巾着袋は置いたままだ。水着も入っているぞ。混んでいたのかな。あ、陽子さんだ。
「なあ陽子さん。美歩ちゃんはプールに行ったんだよな。こんなに早く帰ってきて、どこか具合でも悪いのか」
「あら、美歩。もう帰ってきたの。今日はプールがお休みだった?」
「ううん。今日は、プールは、いい。しゅくだいする」
「――そう。折角お天気もいいのに、勿体ないわね。混んでいたのなら、午後からもう一度行ってみたら? 空いているかもしれないわよ。お母さんの事は気にしなくてもいいから、存分に遊んでらっしゃい。四時半までなら、迎えに行っても帰りはまだ明るいから大丈夫よ」
「今日は行かない。向こうの男子がいるから」
「向こうの男子?」
「……」
どうしたんだ美歩ちゃん。元気がないし、涙目じゃないか。大丈夫かな。お、理科の教科書か。子供の教科書もなかなか面白い……ん、これは……。
「あら、桃太郎さんもお勉強ですか。随分と熱心ね。目を丸くして」
「いや、陽子さん。ちょっと出かけてくる。重要な事実が分かったんだ。昼食は先に食べていてくれ。遅くなるかもしれん」
「桃太郎さーん、ちゃんと夕方までには帰ってきてよ。明日のお祭りの準備で出かけ……もう、せっかちねえ」
すまん、陽子さん。俺は今、祭りどころではない。急いで図書館に行かねばならないんだ。図書館は、ここからは少し遠い。とにかく今は走らねば。
でも、今日は午前中にプールに行ったんじゃなかったっけ。もう帰ってきたのか。
あれ? ビニールの巾着袋は置いたままだ。水着も入っているぞ。混んでいたのかな。あ、陽子さんだ。
「なあ陽子さん。美歩ちゃんはプールに行ったんだよな。こんなに早く帰ってきて、どこか具合でも悪いのか」
「あら、美歩。もう帰ってきたの。今日はプールがお休みだった?」
「ううん。今日は、プールは、いい。しゅくだいする」
「――そう。折角お天気もいいのに、勿体ないわね。混んでいたのなら、午後からもう一度行ってみたら? 空いているかもしれないわよ。お母さんの事は気にしなくてもいいから、存分に遊んでらっしゃい。四時半までなら、迎えに行っても帰りはまだ明るいから大丈夫よ」
「今日は行かない。向こうの男子がいるから」
「向こうの男子?」
「……」
どうしたんだ美歩ちゃん。元気がないし、涙目じゃないか。大丈夫かな。お、理科の教科書か。子供の教科書もなかなか面白い……ん、これは……。
「あら、桃太郎さんもお勉強ですか。随分と熱心ね。目を丸くして」
「いや、陽子さん。ちょっと出かけてくる。重要な事実が分かったんだ。昼食は先に食べていてくれ。遅くなるかもしれん」
「桃太郎さーん、ちゃんと夕方までには帰ってきてよ。明日のお祭りの準備で出かけ……もう、せっかちねえ」
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