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第12話
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次の日、シェリーは友人たちと昼食をとったあと、廊下を歩いていると会いたくない人に出くわしてしまった。
デューイはシェリーを認識すると、条件反射のように怒鳴った。
「おい、クソ女! お前のせいで成績が悪くなったらどうしてくれる!」
シェリーは久しぶりに怒鳴りつけられて、息がつまって苦しくなった。
友人たちは心配そうにシェリーを見ている。一般的な貴族令嬢である彼女たちは怒鳴り声に免疫がなく、驚いてとまどっているようだ。
シェリーは動揺する友人たちを見ると、この場をどうにかしなければと思い、デューイにむかって平静な声で言った。
「私のせいとはどういうことですか?」
「お前が課題をやらないから、お母様に相談して使用人にやらせることにしたんだ! あいつらにまかせてから教師に出来が悪いと毎日小言を言われるようになった。お前のせいだぞ!」
あまりのあきれた言い分にシェリーは黙ってしまった。
——この人は何のために学園に通っているのだろう?
シェリーが沈黙しているとデューイは続けて言った。
「やっぱりお前がやれ! あとで俺の教室に課題を取りに来い!」
「いいえ。私はもう二度とあなたの課題をやりません」
シェリーが毅然と断ると、デューイはますます怒って声を荒らげた。
「お前は何様のつもりだ! 婚約破棄した途端に偉そうな態度とりやがって……!」
そう言うとシェリーの方に詰め寄って来ようとした。
「ハーパー侯爵子息」
声がした方を見ると、シェリーは驚いた。
マリーが一歩前に進み出て、決意のこもった表情をして言った。
「なぜ婚約破棄したお相手にかまうのですか?」
デューイは見知らぬ令嬢に突然問われてとまどっているようだ。
その様子を見てシェリーは思った。
——やっぱりこの人は私以外の人の言葉は聞くのね。
デューイは、先ほどよりだいぶ勢いを失った声で言った。
「……なぜだと? この女はお母様に嫌われていて、俺もこいつが嫌いだから、自分の立場をわからせてやる必要があるからだ!」
マリーはいぶかしげに言った。
「でも嫌いな人には関わらないのが一般的な対応ではないでしょうか? もしやハーパー侯爵子息はシェリー様に未練があるのでは?」
シェリーはマリーの発言にかすかに顔を引きつらせ、冗談でもやめてほしいと思った。
一方まわりの友人たちは華やいだ声をあげた。
「まあ!」
「そういうことでしたのね」
「照れ隠しで怒鳴ってらっしゃるのかしら?」
などと言って、さえずる小鳥たちのようにクスクス笑いあっている。
デューイはその雰囲気に気圧されたのか、数歩あとずさって、負け惜しみのように叫んだ。
「このクソ女に未練があるわけないだろ! 俺にはヴィオラというかわいい婚約者がいるんだからな! シェリー覚えてろよ。お母様にお前の態度は伝えておいたからな。お母様は次のお茶会が楽しみだと言っていたぞ!」
言い終えると、デューイは憎々しげな表情をして去って行った。
シェリーはデューイの捨て台詞を聞いて暗たんとした気分になった。
——まだハーパー侯爵夫人とのお茶会に行かなければならないの?
ハーパー侯爵夫人はデューイが婚約破棄した件を知らないのだろうか。それとも、紙の上での婚約が続いている以上、婚約者というあつかいをしているのか。
一刻もはやく、婚約解消の手続きを進めたいとシェリーは思った。
その後、シェリーは友人たちにかばってもらったお礼を言うと、なごやかに雑談しながら教室へ戻った。
マリーはとても優しくて良い人だ。やはり良い人同士で交流を持つものなのだろうか、彼女の友人たちもみんな心根の良い人たちなのだった。
卒業を目前にして、こんなに素敵な友人たちを持つことができて、自分は幸せものだとシェリーは思った。
デューイはシェリーを認識すると、条件反射のように怒鳴った。
「おい、クソ女! お前のせいで成績が悪くなったらどうしてくれる!」
シェリーは久しぶりに怒鳴りつけられて、息がつまって苦しくなった。
友人たちは心配そうにシェリーを見ている。一般的な貴族令嬢である彼女たちは怒鳴り声に免疫がなく、驚いてとまどっているようだ。
シェリーは動揺する友人たちを見ると、この場をどうにかしなければと思い、デューイにむかって平静な声で言った。
「私のせいとはどういうことですか?」
「お前が課題をやらないから、お母様に相談して使用人にやらせることにしたんだ! あいつらにまかせてから教師に出来が悪いと毎日小言を言われるようになった。お前のせいだぞ!」
あまりのあきれた言い分にシェリーは黙ってしまった。
——この人は何のために学園に通っているのだろう?
シェリーが沈黙しているとデューイは続けて言った。
「やっぱりお前がやれ! あとで俺の教室に課題を取りに来い!」
「いいえ。私はもう二度とあなたの課題をやりません」
シェリーが毅然と断ると、デューイはますます怒って声を荒らげた。
「お前は何様のつもりだ! 婚約破棄した途端に偉そうな態度とりやがって……!」
そう言うとシェリーの方に詰め寄って来ようとした。
「ハーパー侯爵子息」
声がした方を見ると、シェリーは驚いた。
マリーが一歩前に進み出て、決意のこもった表情をして言った。
「なぜ婚約破棄したお相手にかまうのですか?」
デューイは見知らぬ令嬢に突然問われてとまどっているようだ。
その様子を見てシェリーは思った。
——やっぱりこの人は私以外の人の言葉は聞くのね。
デューイは、先ほどよりだいぶ勢いを失った声で言った。
「……なぜだと? この女はお母様に嫌われていて、俺もこいつが嫌いだから、自分の立場をわからせてやる必要があるからだ!」
マリーはいぶかしげに言った。
「でも嫌いな人には関わらないのが一般的な対応ではないでしょうか? もしやハーパー侯爵子息はシェリー様に未練があるのでは?」
シェリーはマリーの発言にかすかに顔を引きつらせ、冗談でもやめてほしいと思った。
一方まわりの友人たちは華やいだ声をあげた。
「まあ!」
「そういうことでしたのね」
「照れ隠しで怒鳴ってらっしゃるのかしら?」
などと言って、さえずる小鳥たちのようにクスクス笑いあっている。
デューイはその雰囲気に気圧されたのか、数歩あとずさって、負け惜しみのように叫んだ。
「このクソ女に未練があるわけないだろ! 俺にはヴィオラというかわいい婚約者がいるんだからな! シェリー覚えてろよ。お母様にお前の態度は伝えておいたからな。お母様は次のお茶会が楽しみだと言っていたぞ!」
言い終えると、デューイは憎々しげな表情をして去って行った。
シェリーはデューイの捨て台詞を聞いて暗たんとした気分になった。
——まだハーパー侯爵夫人とのお茶会に行かなければならないの?
ハーパー侯爵夫人はデューイが婚約破棄した件を知らないのだろうか。それとも、紙の上での婚約が続いている以上、婚約者というあつかいをしているのか。
一刻もはやく、婚約解消の手続きを進めたいとシェリーは思った。
その後、シェリーは友人たちにかばってもらったお礼を言うと、なごやかに雑談しながら教室へ戻った。
マリーはとても優しくて良い人だ。やはり良い人同士で交流を持つものなのだろうか、彼女の友人たちもみんな心根の良い人たちなのだった。
卒業を目前にして、こんなに素敵な友人たちを持つことができて、自分は幸せものだとシェリーは思った。
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