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天国と地獄!(2)
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看板娘のかけ声が聞こえなくなったので、二人は受付に行った。
「鑑定魔導具の商品モニター終わりました」
「はい。お疲れ様!ちょっと待ってねぇ。はい、これが報酬よ!」
「ありがとうございます」
受け取ったお金は多くなかった。
「すくない……」
ヴァージニアの代わりにマシューが言った。
彼の顔はとても険しかった。
「でも!仕事が入ったから大丈夫よ!」
看板娘のは少し焦ったようだが、いつものように明るい表情で言った。
「何を運ぶんですか?」
「あらやだ。さっき見ていたでしょう?」
「まさか…」
マシューはハッとした表情になった。
「毒きのこを運ぶんですか?」
「あらー、分かっているじゃない!これを王立魔導研究所に持って行って欲しいの」
看板娘はニコニコ笑顔でとんでもない事を言った。
「げ」
また局長に会ってしまうのだろうかと思うと、げと言いたくなる。
というか、もう言ってしまった。
「げ?」
「どうしたの?」
マシューと看板娘は首を傾げた。
「いえ、何でもないです。王都に行けばいいんですか?」
ヴァージニアは顔が引きつりそうになるのをなんとか堪えた。
「王都じゃなくて学園都市の方ね。毒物は王様達がいる所じゃ研究出来ないでしょう?危ないもの」
(学生や研究者はいいのか?)
「学園都市って海の近くでしたっけ?行ったことあったかなぁ?」
「ここから遠くないから平気よ」
「ちかかったら、すぐにかえってこられるね!」
「近いのに私が運ぶのは…何故でしょう?」
遠くないのはいいが、近いのならば依頼された人達が届けた方が余分に時間もお金もかからずにすむ。
「それはだな、俺たちはここに待機してジェイコブと合流しないといけないからだ」
そう言ったのは毒きのこを採ってきた剣士だった。
少し離れた所にいたと思ったが、いつの間にか隣に来ていた。
「ジェイコブとですか?」
「そうなの。逃げ足の速い禁術使いが近くにいるらしい情報が入ったの。私達はその人を捕まえに行くんだけど、ジェイコブは別の仕事をしているから戻るのを待っているの」
さっきの魔導師が言った。
「禁術って、もしかして生き物を合成するやつですか?」
「そう、その人!知ってるの?」
魔導師達が少し驚いていた。
確かにそんな危険な生き物と遭遇するのは、もっと腕のいい人達だろう。
「この子達も合成生物に遭遇しているのよ」
「はい。ケリー兄弟に助けていただきました」
「ああ、奴等がヘマして逃がしちまったやつか」
筋骨隆々の武闘家らしき男性が腕組みをしながら言った。
「あの時は魔力の流れが乱れていたから仕方ないですよ」
「普段から気の流れの感知を鍛錬していれば失敗などしない」
武闘家は表情を変えずに言った。
「コイツ、ケリー兄弟となるといつもこんな感じなんだ」
「あはは……」
武闘家はケリー兄妹をライバル視しているのだろうか。
「けんかはよくないよ」
「違う違う。コイツが目の敵にしているだけだって!」
「そうなの?」
「そうそう!」
剣士が言うと武闘家は気まずそうにそっぽを向いた。
「ねぇねぇあなた!さっきから思っていたんだけど、綺麗な目をしているのね。こんなに綺麗な虹色は久しぶりよ」
魔導師がマシューの顔を覗き込んだ。
「いいでしょ!」
マシューはドヤ顔をしている。
ドヤ顔をしててもイラッとしないのは、マシューの顔立ちがいいからだろうとヴァージニアは思った。
「虹色かぁ。しかもどの色も同じように出ているってことは全属性を均等に使えるのか。羨ましいな」
「均等にですか?」
「そう。目が虹色をしていても、得意な属性の色が濃く出たりするの」
「その逆もある」
「へぇぇえ」
得意だと濃く、不得意だと薄くなるようだ。
だが、全属性使えるのには変わりはないのだろう。
「鍛錬しても虹色になるかは分からないのよね。魔力が強ければ可能性はあるけど、今言ったように得手不得手があるからね」
局長が言っていたのはこの事だったようだ。
ならば、きちんと説明してくれればいいのにとヴァージニアは思った。
「それに加えて、巨大な力を持つものに気に入られるとその属性の色が強くなるんだ」
「魔力は強くないけど、転移魔法出来るってことは、目の色からして貴女は水属性の何かに気に入られているんでしょうね」
「水属性の……」
「水辺にいる生き物を助けたんじゃないのか?」
武闘家に言われヴァージニアは記憶を掘り起こして見たが、特に印象的な出来事は思い出せなかった。
「うーん、記憶にないですね。そもそも助けただけで力を貸してくれるものなんですか?それに力を貸してくれるほど大きな力を持った生き物を私が助けられるんですかねぇ…?」
「眷属を助けたとかじゃないか?」
「そうそう。彼もトカゲを助けたら、それ以来地属性の力を貸して貰ってるんだって」
魔術師が武闘家の方を向いて言った。
「トカゲじゃなくてドラゴンの子どもだったんだろ?」
「随分デカいトカゲがいるなとは思ったんだ」
「はっ!ジニー!さっきのトカゲはなにかあるかな?」
マシューはトカゲと聞いて目が輝いている。
「あのトカゲは頭に宝石がついているだけじゃないの?」
「ジェムストーンリザードね。そうなの、あのトカゲは成長しても大きな魔力は持たないんだよね」
「繁殖場があるぐらいだしな」
「なぁんだ。ぼくもなにかと、なかよくなりたかったなぁ」
これは午前中に喧嘩した子の言ったセリフである。
「どんなのがいいんだ?それなりに魔力があるんだから、使役するのも簡単だろう」
「後は自分で作るとかね」
剣士と魔導師は何やらすごい話をしている。
使役は難しいし、作るなんて意味が分からない。
「そうだなぁ、かっこいいのがいいなぁ」
「え~、可愛いのじゃ駄目?」
魔導師が言うと彼女が被っていた帽子が動いて、その中から何かが出てきた。
「鑑定魔導具の商品モニター終わりました」
「はい。お疲れ様!ちょっと待ってねぇ。はい、これが報酬よ!」
「ありがとうございます」
受け取ったお金は多くなかった。
「すくない……」
ヴァージニアの代わりにマシューが言った。
彼の顔はとても険しかった。
「でも!仕事が入ったから大丈夫よ!」
看板娘のは少し焦ったようだが、いつものように明るい表情で言った。
「何を運ぶんですか?」
「あらやだ。さっき見ていたでしょう?」
「まさか…」
マシューはハッとした表情になった。
「毒きのこを運ぶんですか?」
「あらー、分かっているじゃない!これを王立魔導研究所に持って行って欲しいの」
看板娘はニコニコ笑顔でとんでもない事を言った。
「げ」
また局長に会ってしまうのだろうかと思うと、げと言いたくなる。
というか、もう言ってしまった。
「げ?」
「どうしたの?」
マシューと看板娘は首を傾げた。
「いえ、何でもないです。王都に行けばいいんですか?」
ヴァージニアは顔が引きつりそうになるのをなんとか堪えた。
「王都じゃなくて学園都市の方ね。毒物は王様達がいる所じゃ研究出来ないでしょう?危ないもの」
(学生や研究者はいいのか?)
「学園都市って海の近くでしたっけ?行ったことあったかなぁ?」
「ここから遠くないから平気よ」
「ちかかったら、すぐにかえってこられるね!」
「近いのに私が運ぶのは…何故でしょう?」
遠くないのはいいが、近いのならば依頼された人達が届けた方が余分に時間もお金もかからずにすむ。
「それはだな、俺たちはここに待機してジェイコブと合流しないといけないからだ」
そう言ったのは毒きのこを採ってきた剣士だった。
少し離れた所にいたと思ったが、いつの間にか隣に来ていた。
「ジェイコブとですか?」
「そうなの。逃げ足の速い禁術使いが近くにいるらしい情報が入ったの。私達はその人を捕まえに行くんだけど、ジェイコブは別の仕事をしているから戻るのを待っているの」
さっきの魔導師が言った。
「禁術って、もしかして生き物を合成するやつですか?」
「そう、その人!知ってるの?」
魔導師達が少し驚いていた。
確かにそんな危険な生き物と遭遇するのは、もっと腕のいい人達だろう。
「この子達も合成生物に遭遇しているのよ」
「はい。ケリー兄弟に助けていただきました」
「ああ、奴等がヘマして逃がしちまったやつか」
筋骨隆々の武闘家らしき男性が腕組みをしながら言った。
「あの時は魔力の流れが乱れていたから仕方ないですよ」
「普段から気の流れの感知を鍛錬していれば失敗などしない」
武闘家は表情を変えずに言った。
「コイツ、ケリー兄弟となるといつもこんな感じなんだ」
「あはは……」
武闘家はケリー兄妹をライバル視しているのだろうか。
「けんかはよくないよ」
「違う違う。コイツが目の敵にしているだけだって!」
「そうなの?」
「そうそう!」
剣士が言うと武闘家は気まずそうにそっぽを向いた。
「ねぇねぇあなた!さっきから思っていたんだけど、綺麗な目をしているのね。こんなに綺麗な虹色は久しぶりよ」
魔導師がマシューの顔を覗き込んだ。
「いいでしょ!」
マシューはドヤ顔をしている。
ドヤ顔をしててもイラッとしないのは、マシューの顔立ちがいいからだろうとヴァージニアは思った。
「虹色かぁ。しかもどの色も同じように出ているってことは全属性を均等に使えるのか。羨ましいな」
「均等にですか?」
「そう。目が虹色をしていても、得意な属性の色が濃く出たりするの」
「その逆もある」
「へぇぇえ」
得意だと濃く、不得意だと薄くなるようだ。
だが、全属性使えるのには変わりはないのだろう。
「鍛錬しても虹色になるかは分からないのよね。魔力が強ければ可能性はあるけど、今言ったように得手不得手があるからね」
局長が言っていたのはこの事だったようだ。
ならば、きちんと説明してくれればいいのにとヴァージニアは思った。
「それに加えて、巨大な力を持つものに気に入られるとその属性の色が強くなるんだ」
「魔力は強くないけど、転移魔法出来るってことは、目の色からして貴女は水属性の何かに気に入られているんでしょうね」
「水属性の……」
「水辺にいる生き物を助けたんじゃないのか?」
武闘家に言われヴァージニアは記憶を掘り起こして見たが、特に印象的な出来事は思い出せなかった。
「うーん、記憶にないですね。そもそも助けただけで力を貸してくれるものなんですか?それに力を貸してくれるほど大きな力を持った生き物を私が助けられるんですかねぇ…?」
「眷属を助けたとかじゃないか?」
「そうそう。彼もトカゲを助けたら、それ以来地属性の力を貸して貰ってるんだって」
魔術師が武闘家の方を向いて言った。
「トカゲじゃなくてドラゴンの子どもだったんだろ?」
「随分デカいトカゲがいるなとは思ったんだ」
「はっ!ジニー!さっきのトカゲはなにかあるかな?」
マシューはトカゲと聞いて目が輝いている。
「あのトカゲは頭に宝石がついているだけじゃないの?」
「ジェムストーンリザードね。そうなの、あのトカゲは成長しても大きな魔力は持たないんだよね」
「繁殖場があるぐらいだしな」
「なぁんだ。ぼくもなにかと、なかよくなりたかったなぁ」
これは午前中に喧嘩した子の言ったセリフである。
「どんなのがいいんだ?それなりに魔力があるんだから、使役するのも簡単だろう」
「後は自分で作るとかね」
剣士と魔導師は何やらすごい話をしている。
使役は難しいし、作るなんて意味が分からない。
「そうだなぁ、かっこいいのがいいなぁ」
「え~、可愛いのじゃ駄目?」
魔導師が言うと彼女が被っていた帽子が動いて、その中から何かが出てきた。
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