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第3章 マーシア、タラア王妃となる

14、大円団

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月日は矢のように過ぎた。

今日はマーシアの110 歳の誕生日。

盛大なバースデーパーティーの支度したくで王宮の人々は大わらわだ。

タラアの習慣では誕生日パーティーは、当日の午前0時から準備を始める。

タラア国王も王妃も気さくな人。

もう少し若い頃は二人もパーティーの支度したくを率先して手伝ったものだが、今は流石さすがに高齢なので準備が整うまで寝室で休んでいる。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆

朝日が完全に登りきり、オレンジ色の海が鮮やかな青へと変わった。

「もう準備万端ね。では私が呼んでくるわ」

国王夫妻のひ孫である20歳になる王女が、二人を呼びに、らせん階段を上る。

カツカツ、カツカツという、若い娘らしい溌溂はつらつとしたハイヒールの音。

「ひいお爺様、お婆様……」

若い王女はカチャリとドアを開ける。

国王夫妻の寝室はクリーム色を基調とした、ホテルのスイートルームのような部屋だ。

ドアを開いて真っ先に目に入るのは、部屋の正面にある大きな出窓の先の、青くきらめく海。



「やはりこの眺めは、いつ見ても最高ね」

そうつぶやきながら、若い王女は左の天蓋付きベッドに目線を移す。

そこには寄り添うように眠る、国王夫妻がいた。

もうパーティーに向かう用意は万端だったのだろう。

マーシアは真っ赤なハイビスカス柄のワンピース。

国王は、経済発展後にタラアで着られるようになった、白い麻のスーツにスカイブルーのネクタイだった。

ドレスアップを済ませて、ちょっと一休みのつもりで眠っているというふうだ。

マーシアが自分よりも頭一つ背の高いタラア王を、まるで幼い少年にするかのように、左手で抱き寄せ、右手を彼の頭に置いている。

若い王女は二人の尋常でない静けさに、ハッとしてベッドにそっと近寄った。

眠る夫婦の唇の上に、手のひらをかざす。

「……さすがね。二人ふたり一緒に天に召されるなんて」

(終わり)

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