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第3章 マーシア、タラア王妃となる
12、あの……お姉様、手を握ってもいいですか?
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マーシアはピアにタラア島のことを「遅れている」と馬鹿にされ、悲しい思いでいた。
といっても実をいえば、マーシアもこの国の生活の原始的なのには驚いていた。
例えばタラア島には電気、ガスは通っていない。
王宮や一部の貴族、外国人向けコテージなど、特別な施設で太陽光パネルを設置して、わずかな電気を使っているのみだ。
その太陽光パネルも面積の広い大きなものではなく、ロイデン王国にいればネット通販でも買えるような小さなサイズのものが主流。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜になるとマーシアとタラア王は、国王夫妻の寝室である、竪穴式住居で眠る。
床は土の上に茣蓙を敷いただけ。
壁も天井もなく、丸木の柱が丸見え。
そんな原始的な建物だが、夫婦だけの寝室を持てるというのは、王族や貴族の特権らしい。
ワイルドなインテリアにミスマッチな、ロイデン王国の高級家具メーカー製のキングサイズのベッドが、部屋の中央に圧倒的な存在感で鎮座している。
少年王とマーシアは陽が沈むころになると、二人でそこに横たわる。
あまりにも広々としていて、 それがさびしいのか、少年王はマーシアにそっと近寄ってくる。
「あの……お姉様、手を握ってもいいですか?」
「もちろんよ。夫婦ですもの」
マーシアは少年王を抱き寄せて、そっと髪を撫でた。
こんな可愛い陛下と一緒に暮らせて、彼に愛されて、マーシアは自分は幸せものだと思った。
(屋敷の図書室で、色あせたタラア島のガイドブックを見つけて、思いきってバカンスに来て本当によかったわ)
陛下の顔の輪郭は、シュッとシャープなラインを描いているが、触れてみればマシュマロのようにほわほわだ。
マーシアの胸はいとおしさであふれる。
「かわいい」
そうささやくと、マーシアは陛下の頬を両手で挟み、自分の顔を近づけた。
いとおしいものを、もっと愛でたい。
そんな本能のおもむくままに、少年の形のよい唇に口づけをする。
「んっ」
陛下の小鳥のような声。
マーシアが唇を離すと、陛下はプイと顔をそむける。
もぞもぞとマーシアのいるのとは、反対側のベッドの淵に行ってしまった。
「あ……あの……陛下……
お嫌でしたか?
ごめんなさい。
私陛下があまりにも可愛らしかったからつい……
もしお嫌でしたら、もう二度とこんなことはしません」
マーシアがオロオロと陛下に謝ると、陛下は
「いっ! いやなんかじゃありません!!!
ただ、さっきはちょっとびっくりしてしまったから……
それに僕は男なんだから、僕からお姉さまにキスをしたい」
そう涙目になりながら、きっぱりした声で言った。
マーシアは
「あら、そうでしたのね……
ごめんなさい。
……
……
……では今から私にキスなさいますか?」
陛下はこくんと頷くと、またもぞもぞとマーシアに近寄った。
陛下の腕がマーシアの両脇に触れると、マーシアはまぶたを閉じた。
やわらかな両手がマーシアの頬を包む。
唇の上に、ふわり、と少年の唇の感触を感じる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ちりーん、と入口にかけてあるドアチャイムが鳴った。
幸せを呼ぶようにと、マーシアの両親から送られたものだ。
といっても実をいえば、マーシアもこの国の生活の原始的なのには驚いていた。
例えばタラア島には電気、ガスは通っていない。
王宮や一部の貴族、外国人向けコテージなど、特別な施設で太陽光パネルを設置して、わずかな電気を使っているのみだ。
その太陽光パネルも面積の広い大きなものではなく、ロイデン王国にいればネット通販でも買えるような小さなサイズのものが主流。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜になるとマーシアとタラア王は、国王夫妻の寝室である、竪穴式住居で眠る。
床は土の上に茣蓙を敷いただけ。
壁も天井もなく、丸木の柱が丸見え。
そんな原始的な建物だが、夫婦だけの寝室を持てるというのは、王族や貴族の特権らしい。
ワイルドなインテリアにミスマッチな、ロイデン王国の高級家具メーカー製のキングサイズのベッドが、部屋の中央に圧倒的な存在感で鎮座している。
少年王とマーシアは陽が沈むころになると、二人でそこに横たわる。
あまりにも広々としていて、 それがさびしいのか、少年王はマーシアにそっと近寄ってくる。
「あの……お姉様、手を握ってもいいですか?」
「もちろんよ。夫婦ですもの」
マーシアは少年王を抱き寄せて、そっと髪を撫でた。
こんな可愛い陛下と一緒に暮らせて、彼に愛されて、マーシアは自分は幸せものだと思った。
(屋敷の図書室で、色あせたタラア島のガイドブックを見つけて、思いきってバカンスに来て本当によかったわ)
陛下の顔の輪郭は、シュッとシャープなラインを描いているが、触れてみればマシュマロのようにほわほわだ。
マーシアの胸はいとおしさであふれる。
「かわいい」
そうささやくと、マーシアは陛下の頬を両手で挟み、自分の顔を近づけた。
いとおしいものを、もっと愛でたい。
そんな本能のおもむくままに、少年の形のよい唇に口づけをする。
「んっ」
陛下の小鳥のような声。
マーシアが唇を離すと、陛下はプイと顔をそむける。
もぞもぞとマーシアのいるのとは、反対側のベッドの淵に行ってしまった。
「あ……あの……陛下……
お嫌でしたか?
ごめんなさい。
私陛下があまりにも可愛らしかったからつい……
もしお嫌でしたら、もう二度とこんなことはしません」
マーシアがオロオロと陛下に謝ると、陛下は
「いっ! いやなんかじゃありません!!!
ただ、さっきはちょっとびっくりしてしまったから……
それに僕は男なんだから、僕からお姉さまにキスをしたい」
そう涙目になりながら、きっぱりした声で言った。
マーシアは
「あら、そうでしたのね……
ごめんなさい。
……
……
……では今から私にキスなさいますか?」
陛下はこくんと頷くと、またもぞもぞとマーシアに近寄った。
陛下の腕がマーシアの両脇に触れると、マーシアはまぶたを閉じた。
やわらかな両手がマーシアの頬を包む。
唇の上に、ふわり、と少年の唇の感触を感じる。
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ちりーん、と入口にかけてあるドアチャイムが鳴った。
幸せを呼ぶようにと、マーシアの両親から送られたものだ。
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