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第2章 バカンス先で恋の予感♪お相手はなんと!!
6、椰子の木陰の美少年
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バカンスに来て三週間目。
マーシアがそろそろ、帰宅の準備に取りかかりはじめたところだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕暮れ時、マーシアは日課の散歩をしていた。
バカンス出発前、鬱っぽかったマーシアは、医者に相談にいった。
医者がマーシアに与えたアドバイスは、毎日自然の中を、一時間程度ウォーキングするというもの。
そこでマーシアは、毎日陽差しが和らいでくると、海岸沿いを一時間ぐらい散歩している。
これはバカンスの初日からずっとだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアのまとっているドレスは、南国の気候に合わせた、ノースリーブの体を締め付けないスタイル。
足だけは砂が入らないように、リネン製のショートブーツ。
ぎゅっぎゅっと、夕日でオレンジ色に染まった砂を踏みしめながら前に進む。
ざざんざざんと寄せては返す潮騒の音。
海風がマーシアのタイダイ染めのワンピースを、ぶわりと翻す。
マーシアの足元には、ホイップクリームのような波がちらちらと揺れている。
マーシアは宿泊しているコテージから、海岸沿いに30分ぐらい歩いた後、いつものように海岸から少し離れた、ヤシの防風林に赴く。
そこに一休みできるようなベンチがあるのだ。
マーシアが防風林にたどり着くと、マーシアのお供のメイド「ネリィ」が慣れた調子でバックからウェットティッシュをさっと取り出して、ベンチをふく。
マーシアはワンピースの裾をエレガントにつまみ、そこに座った。
メイドもマーシアに促されて隣に座る。
マーシアはこれも医者からアドバイスをされた通りに目をつぶって、両手を太ももの上で合わせてメディテーションを始めた。
「お嬢様。自動販売機で飲み物を買ってきますわ。今日は何をお飲みになります?」
マーシアは
「ではカフェオレをおねがい」
と答えた後、深い瞑想に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
医者からやりかたを教わった通りに、ゆったりとした呼吸に合わせて千まで数えたのち、マーシアは「ぱち」と目を開いた。
暗闇に慣れた目には、夕暮れ時の景色もまぶしい。
眼の前の椰子の幹と幹の間から、11、2歳のかわいらしい少年が顔をのぞかせて、マーシアをじっとみている。
肩まで伸びた、暗色のおおきくウェーブした髪。
切りそろえらた前髪のかげで、きらきらと輝く大きなぱっちりとした瞳。
まるお人形のように整った鼻に口元。
一見女の子と見間違えてしまうが、この国の女の子はみな、生まれてから一度も切ったことがないような長い髪をしているはずだ。
この子は男の子だろう。
「あらっ、なんてきれいな男の子」
思わず口元がほころぶのを感じながらマーシアが、
「こんばんは」
とあいさつをすると、少年はひらっと身をひるがえして、去っていってしまった。
マーシアに背を向けて、夕日に向かって駆けていく、少年の均整の取れたスタイルと、躍動感はみごとなものだ。
マーシアは思わず、うっとりとしてしまう。
「お嬢様、ごめんなさい。遅くなってしまって。実は自販機のところで、最近仲良くなった地元の方に引き留められてしまって」
戻ってきたメイドのネリィが、マーシアに、紙パックに入ったカフェオレを差し出す。
「あら? お嬢様ったら、なにニコニコしていらっしゃるのですか? クラーク様との婚約破棄以来、こんなに楽しそうなお嬢様をみるのは初めてですわ」
ネリィにそう不思議がられて、マーシアは
「さっき、とてもかわいい男の子に会ったのよ。あんまりかわいいから、ついニヤニヤしちゃったのね」
ネリィは美少年が大好きで、海外の子役スターのファンクラブに入っている。
マーシアが美少年を見たと聞いて、きゃいきゃいとはしゃぎだした。
「まあ! ! そうでしたの!!
そういえばこの辺りはタラア王家の方々が、よく遊びにいらっしゃるビーチだと聞きましたわ!!
もしかしてその男の子はきっと王子様かもしれませんわね!!
きっとそうですわ!!
あーん、お嬢様ばかりずるい。
私も見たかったのに!
残念ですわ!」
マーシアはネリィの肩をぽんぽんと優しくたたくと
「そうね。もしかして、あの子は王子様かもね。
どことなく気品もあったし。
いいわ、明日も同じ時間にここに来ましょう。
またあの王子様がいらっしゃるかもしれなくてよ」
マーシアがそろそろ、帰宅の準備に取りかかりはじめたところだ。
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夕暮れ時、マーシアは日課の散歩をしていた。
バカンス出発前、鬱っぽかったマーシアは、医者に相談にいった。
医者がマーシアに与えたアドバイスは、毎日自然の中を、一時間程度ウォーキングするというもの。
そこでマーシアは、毎日陽差しが和らいでくると、海岸沿いを一時間ぐらい散歩している。
これはバカンスの初日からずっとだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアのまとっているドレスは、南国の気候に合わせた、ノースリーブの体を締め付けないスタイル。
足だけは砂が入らないように、リネン製のショートブーツ。
ぎゅっぎゅっと、夕日でオレンジ色に染まった砂を踏みしめながら前に進む。
ざざんざざんと寄せては返す潮騒の音。
海風がマーシアのタイダイ染めのワンピースを、ぶわりと翻す。
マーシアの足元には、ホイップクリームのような波がちらちらと揺れている。
マーシアは宿泊しているコテージから、海岸沿いに30分ぐらい歩いた後、いつものように海岸から少し離れた、ヤシの防風林に赴く。
そこに一休みできるようなベンチがあるのだ。
マーシアが防風林にたどり着くと、マーシアのお供のメイド「ネリィ」が慣れた調子でバックからウェットティッシュをさっと取り出して、ベンチをふく。
マーシアはワンピースの裾をエレガントにつまみ、そこに座った。
メイドもマーシアに促されて隣に座る。
マーシアはこれも医者からアドバイスをされた通りに目をつぶって、両手を太ももの上で合わせてメディテーションを始めた。
「お嬢様。自動販売機で飲み物を買ってきますわ。今日は何をお飲みになります?」
マーシアは
「ではカフェオレをおねがい」
と答えた後、深い瞑想に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
医者からやりかたを教わった通りに、ゆったりとした呼吸に合わせて千まで数えたのち、マーシアは「ぱち」と目を開いた。
暗闇に慣れた目には、夕暮れ時の景色もまぶしい。
眼の前の椰子の幹と幹の間から、11、2歳のかわいらしい少年が顔をのぞかせて、マーシアをじっとみている。
肩まで伸びた、暗色のおおきくウェーブした髪。
切りそろえらた前髪のかげで、きらきらと輝く大きなぱっちりとした瞳。
まるお人形のように整った鼻に口元。
一見女の子と見間違えてしまうが、この国の女の子はみな、生まれてから一度も切ったことがないような長い髪をしているはずだ。
この子は男の子だろう。
「あらっ、なんてきれいな男の子」
思わず口元がほころぶのを感じながらマーシアが、
「こんばんは」
とあいさつをすると、少年はひらっと身をひるがえして、去っていってしまった。
マーシアに背を向けて、夕日に向かって駆けていく、少年の均整の取れたスタイルと、躍動感はみごとなものだ。
マーシアは思わず、うっとりとしてしまう。
「お嬢様、ごめんなさい。遅くなってしまって。実は自販機のところで、最近仲良くなった地元の方に引き留められてしまって」
戻ってきたメイドのネリィが、マーシアに、紙パックに入ったカフェオレを差し出す。
「あら? お嬢様ったら、なにニコニコしていらっしゃるのですか? クラーク様との婚約破棄以来、こんなに楽しそうなお嬢様をみるのは初めてですわ」
ネリィにそう不思議がられて、マーシアは
「さっき、とてもかわいい男の子に会ったのよ。あんまりかわいいから、ついニヤニヤしちゃったのね」
ネリィは美少年が大好きで、海外の子役スターのファンクラブに入っている。
マーシアが美少年を見たと聞いて、きゃいきゃいとはしゃぎだした。
「まあ! ! そうでしたの!!
そういえばこの辺りはタラア王家の方々が、よく遊びにいらっしゃるビーチだと聞きましたわ!!
もしかしてその男の子はきっと王子様かもしれませんわね!!
きっとそうですわ!!
あーん、お嬢様ばかりずるい。
私も見たかったのに!
残念ですわ!」
マーシアはネリィの肩をぽんぽんと優しくたたくと
「そうね。もしかして、あの子は王子様かもね。
どことなく気品もあったし。
いいわ、明日も同じ時間にここに来ましょう。
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