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第2章 バカンス先で恋の予感♪お相手はなんと!!
5、侯爵令嬢マーシア、失恋旅行に行く。
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クラークから婚約破棄されて一月後、マーシアはたった一人のメイドを連れて、バカンスへと出かけた。
バカンス先は、ロイデン王国最南端のサイナン岬から、南に200キロ行ったところにある小さな島国タラア王国。
50年前まで、ロイデン王国の、属領の一つだったが、今は独立国だ。
250年の歴史を持つロイデン王家よりも古い歴史を持つと言われている、タラア王家が国を治めている。
この南の島でのバカンスは、マーシアにとって、いわば失恋旅行だ。
ここで一月過ごしたらマーシアは再び家に戻り、貴族のための結婚紹介所に入会し、お見合いざんまいの生活に入る予定だ。
そして相手に気に入られて、相手が幸せな家庭を築くことができそうな人だったら、えり好みしたりせずに、その人と結婚するつもり。
たぶんマーシアの年齢からいったら、相手は結構年上になるだろう。
そして再婚で子供がいる可能性が高い。
「そうなったら私は血のつながらない子供の母親になるわけだわ。しっかりしなくちゃ。クラーク王子さまのことはきっぱり諦めよう」
マーシアはそう思ったが、頼りないけれど、ハンサムで優しいクラークの姿が何度も何度も思い浮かび、思わず涙ぐんでしまう。
だってクラークと婚約した5歳の時から、マーシアはずっと彼のことを「私の未来の旦那さま」と思ってきたのだ。
タラア島についてから、マーシアは幾度クラークの夢を見たことだろう。
「うううう……やはり私、まだクラーク様のことが忘れられないのね」
マーシアは自分でも知らない間に涙ぐんでいるのに気がついて、ハッとする。
窓から広がる景色は青い空、白い雲。
サンゴ礁の海。
あまりにも透明なために、泳ぐ魚がくっきりと見える波打ち際。
手のひらにすくえば、指をすりぬけて落ちていってしまう、真っ白な砂。
小麦色の肌に白い歯がまぶしい、素朴なタラアの住民たち。
そんな楽園のようなタラアも、マーシアの傷ついた心を簡単には癒してくれそうになかった。
よかったことは、この島では、ネット回線が使えないことだろうか?
もしネットにつながることができたら、マーシアはついついクラークの動画を見てしまったことだろう。
実は、インターネットが使えないことが、マーシアがこの島をバカンス先に選んだ、理由の一つだった。
バカンス先は、ロイデン王国最南端のサイナン岬から、南に200キロ行ったところにある小さな島国タラア王国。
50年前まで、ロイデン王国の、属領の一つだったが、今は独立国だ。
250年の歴史を持つロイデン王家よりも古い歴史を持つと言われている、タラア王家が国を治めている。
この南の島でのバカンスは、マーシアにとって、いわば失恋旅行だ。
ここで一月過ごしたらマーシアは再び家に戻り、貴族のための結婚紹介所に入会し、お見合いざんまいの生活に入る予定だ。
そして相手に気に入られて、相手が幸せな家庭を築くことができそうな人だったら、えり好みしたりせずに、その人と結婚するつもり。
たぶんマーシアの年齢からいったら、相手は結構年上になるだろう。
そして再婚で子供がいる可能性が高い。
「そうなったら私は血のつながらない子供の母親になるわけだわ。しっかりしなくちゃ。クラーク王子さまのことはきっぱり諦めよう」
マーシアはそう思ったが、頼りないけれど、ハンサムで優しいクラークの姿が何度も何度も思い浮かび、思わず涙ぐんでしまう。
だってクラークと婚約した5歳の時から、マーシアはずっと彼のことを「私の未来の旦那さま」と思ってきたのだ。
タラア島についてから、マーシアは幾度クラークの夢を見たことだろう。
「うううう……やはり私、まだクラーク様のことが忘れられないのね」
マーシアは自分でも知らない間に涙ぐんでいるのに気がついて、ハッとする。
窓から広がる景色は青い空、白い雲。
サンゴ礁の海。
あまりにも透明なために、泳ぐ魚がくっきりと見える波打ち際。
手のひらにすくえば、指をすりぬけて落ちていってしまう、真っ白な砂。
小麦色の肌に白い歯がまぶしい、素朴なタラアの住民たち。
そんな楽園のようなタラアも、マーシアの傷ついた心を簡単には癒してくれそうになかった。
よかったことは、この島では、ネット回線が使えないことだろうか?
もしネットにつながることができたら、マーシアはついついクラークの動画を見てしまったことだろう。
実は、インターネットが使えないことが、マーシアがこの島をバカンス先に選んだ、理由の一つだった。
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