満たされない僕は

わおわお

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金欠

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 やべっ。
 本能で危険を察知するかのように目が覚めた。
 急いでスマホを見る。六時二十九分。

 あっぶねー。

 「体よ、頼もしいぞ」

 起き上がりながら、自分の体を労う。

 体のべっとりとした気持ち悪さと、頭の少し重たい感じで、昨日のことを思い出した。
 帰ってきてシャワーを浴びる元気もなく、そのままベッドに入ってしまっていた。すぐに寝た気がする。

 そういえば、誰かとちゃんと話したのって、二週間ぶりくらいだったな。美紗都と会ってから以来バイト先でしか他人と話すことなんてなかった。
 誰かと話すことって意外と大事なのかもしれない。
 
 とりあえずシャワーを浴びにベッドから出る。
 朝シャンというやつは気持ちいな。これから朝シャワーしようかな、なんて思ったがすぐにやらないだろうなと思った。

 シャワーを終えて、スマホを見ると、バイト先から連絡が来ていた。
 
 『旦那の体調がよくないので、これを機に、今週いっぱいは休みをいただこうと思います。急な連絡で申し訳ありません』

 うおー。
 急に来る休みほど嬉しいものはない。
 
 そんな気持ちになったが、すぐに嫌な感情が押し寄せた。
 
 やっぱり――。
 銀行のアプリで口座残高を見ると、七万ちょっとしかなかった.。

 金欠になる。
 
 休みは嬉しいが、そんな状況ではない。部活での急なオフができたときとはわけが違う。
 働かないと、生きていくためのお金が無くなるのである。
 
 退学をしてから、親と喧嘩して、仕送りがなくなった。月七万くらいのバイト代に、足りない分は貯金から使っていた。 仕送りをもらう前提で、今の家に住んだから、お金が無くなっていくのは当然だと思った。

 単発バイトかー。

 お金をすぐに稼げるといえば、単発バイトだ。
 大学にいたときに仲良くなった友達(今は一切連絡していないから友達と言えるかわからないが)と、一回単発バイトをした。でも、楽しくないし、しんどいし、最後には「おい、派遣」で指図される始末だった。
 もう単発バイトなんてやらないでおこーぜ、とか言っていたのが懐かしい。もうすることなんてないだろうと思っていた。
 
 あの時は、お金に対する心配なんてみじんもなかった。
 なくなりそうだったら、親にでも言えばいいと思っていた。

 だるいなー。
 でも仕方ないよなー。

 スマホのロックを解除して、しぶしぶ単発バイトのアプリを開く。
 「スタッフ大募集」と書かれた募集欄がずらりと並んでいる。この大募集も、どうせ都合よく使われて終わる。
 
 世の中こんなもんだよな。
 自分みたいな人間はこうやって安く雇われて終わる。現代はまだましになったとはいえ、その本質的なところは何も変わっちゃいない。
 
 スマホを見ながら、大学卒業という資格を失ってしまったことに後悔をする。
 本当に何で大学なんてやめたんだろう。
 
 結局、明日にあるイベントの設営、撤去と書かれたのを応募した。
 しんどそうだけど、今はそんなことを言ってられない。出来るだけ、時給が高い方がいい。

 
 就職かー。
 そんな文字が頭に流れる。

 ――映画観よ。
 
 結局、気づけばその日は終わっていた。
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