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みんなが落ち着いたので朝食を食べながら自己紹介をすることになった。

「わたしはクリスティーナよ。クリスって呼んで」
「レティシアで、この子はルーナです」
「ミャ」
「あら、あなた従魔師だったの?」
「いえ、この子は子どものころからずっと一緒に育ったんです。今回は着いてきてしまって、王都に入るために首輪をしてます」
「へぇ~……でも聖女選定の儀に来たなら宿があるでしょ?行く宛がないってどうしてよ」

もっともな質問にエド様が事情を説明してくれたので、わたしは食事を再開する。
クリスさんの料理どれも美味しい。
ルーナもパクパク食べている。

「成る程ね~……そいつ殺って良い?」
「止めはせんが、後々面倒になるぞ。殺るなら準備を整えてからだ」
「だよな~……なぁ、みんなに知らせたのか?」
「いや…事件の真相が掴めていないうちは報せない方が良いだろ。陛下には昨日のうちに手紙をだした」
「そっか」

クリスさんがエド様に顔を近付けて何か話してるけど良く聞こえない。
その距離感にやっぱり恋人なんだと思ってまたモヤモヤしてしまう。
こんな素敵な人に恋人がいないわけないよね。
やっぱり慣れてしまう前に村に帰ろう。
美味しい朝食を食べ終え店をあとにする。
クリスさんはまたおいでって言ってたけど、恋人が他の女と一緒に来て嫌じゃないのかな?
それとも、わたしだから警戒してないとか?
まぁ、わたしなんて二人からしたら子供だもんね。
ふたりは二十六歳でわたしとは十も違うもの。
少し暗い気持ちのままエド様に着いて行くと、今度は騎士団の詰所に連れて来られた。
昨日と同じようにセルジオ様が出てきてエド様とわたしをジッと見ている。
あっ、手を繋いだままだった!
慌てて手を離そうとしたけど びくともしない。
それどころか、握る力が強くなった!?

「……可愛いですね」
「可愛いだろ。やらんぞ」
「死にたくないので遠慮します。順調なようで良かったです」
「そうでもないさ」

二人が何か言ってるけど、エド様の手を外すのに必死なわたしには聞こえなかった。
結局わたしの力では外すことができず、そのまま中の部屋に移動するはめに……ときどきすれ違う騎士たちがみんな二度見して行く。
は、恥ずかしい。
部屋に着くとやっと手を離してもらえた。
むっつりとエド様を見上げると、困ったように頭を撫でられる。
完全に子供扱いだ。

「そうむくれるな。レティが俺の関係者だと知らしめるために必要だったんだ。なぁ、セルジオ」
「……団長の関係者だと知られていれば余計なちょっかいをかけられないから安心できますからね」

成る程、確かにわたしは部外者だもんね。
そんなのがうろうろしてたら警戒しちゃうか。

「……分かってないですね」
「な?順調なわけないだろ」
「頑張ってください。無理強いは駄目ですよ」
「………あぁ」
「その間は何ですか!」

昨日から思っていたけど、ふたりは中が良いよね。
それにしても此処へは何しに来たんだろ?
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