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冒険者~修行~

学園祭~憧れ~

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サマンサの提案に固まっていたフェリーチェたちは、手早く食事をすませて空き部屋に向かい詳しく話を聞く事にした。

「それで?何でサヨなんだ?」

「実はね、今まで学園の入学希望者は貴族だけだったのに、最近では平民も増えてるらしいわ」

「それは良い事ですが、それとサヨが何の関係があるんですか?」

「それがあるのよミゲル。平民が入学を希望しだしたのは、ある2人組がこの国に現れてからなの」

「成る程、その2人がサヨとアルですね?」

「ネイサン、正解よ。平民の間で2人に憧れて、魔法をちゃんと習いたいって希望者が増えたらしいわ」

「話は分かったけど、あの子もそうとは限らないんじゃ」

「その時はその時よ。取り敢えず、やってみて損はないと思うわ」

「う~ん。やっても良いけど、周りに誰もいない時の方が良いかも」

「それなら、選手控室に行くと良い。個室だから、1人のはずだ」

「うん」

「僕も行く~」

「行くのは良いが、騒動は起こすなよ」

「「は~い!」」

クロードに元気な挨拶をした2人に、その場にいた全員が同じ事を思った。

(((((((絶対また何かやらかす……絶対)))))))

試合が始まる前に会いに行く事になり、その場で『サヨ』と『アル』に変化した2人は、ネイサンに案内されて控室に向かった。

「ここが彼女の控室。私は自分の控室にいるから、終わったら呼ぶんだよ」

「ありがとう兄様」

「行ってきます」

サヨがノックすると、ドアを開けてシェリが顔を出した。
訪ねてきた見知らぬ2人に、シェリは不審げに口を開いた。

「あの……どちら様ですか?」

「始めまして、私はサヨです」

「へ?」

「僕はアルだよ」

「へぁ?サヨ……アル……流民の?」

「「うん」」

唖然としていたシェリは、2人答えを聞いてバタンッと後ろに倒れた。
とっさに、サヨが『空気布団』エアクッションを発動したので、シェリは体を打ち付ける事はなかったが、完全に意識がないようだ。

「また気絶しちゃった」

「この様子だと、母様の予想は当たってたみたいだね」

シェリを部屋にあったソファに寝かせて待つ事5分、シェリが目覚めた。

「わたし……いつの間に寝たのかしら?それにしても、良い夢見たわ」

「どんな夢だったの?」

「どんなって、あのサヨ様とアル様が目の前に………ん?」

シェリは誰と話しているのか分からず横を向くと、ポカ~ンとしてしまった。

「どうしたの?」

「ゆ、ゆ、夢じゃない!?」

「ちょっと落ち着きなよ。また気絶したら話しが進まないから」

「深呼吸して深呼吸。ほら、すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~」

「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~……すいません。あの、それで話って」

「その前にちょっといい?どうして僕たちを様付けしてるの?ただの流民だよ?」

「だだの流民なんかじゃありません!アル様は魔物の群れを一瞬で焼きつくす力があり、サヨ様は治癒師が治せなかった病気や怪我を一瞬で治しただけでなく、平民にも無償で治療をしてくれたじゃありませんか!貴族じゃなくてもちゃんと治療してれるなんて、考えられない事なんですよ!」

「あの、シェリさん」

「シェリと読んで下さい!敬語もいりません」

「シェ、シェリ、あれは私たちにも目的があってした事だから」

「それでもです!」

シェリにグイグイ来られて、多少引きながらもサヨは目的を果たすために話を進めた。

「そ、そっか……え~と、それで話なんだけど」

「実は、君が揉めてるのを見かけてね。勝手ながら話を聞いてたんだ」

「そうだったんですか。恥ずかしい所を見せてしまいました」

「それは良いの。ただ、どうして彼女たちにあんな‘時間の無駄’とか言ったの?あれじゃあ相手を怒らせるだけだよ」

「え?でも友達が、貴族と話す時はああやって話さないと処罰されるって」

「その時の事、詳しく聞いてもいいかな?」

「はい。あれは学園に合格した時でした」

〔回想〕

わたしは、アル様とフェリ様に憧れて学園の入試を受ける事をリリー、友達に話したら一緒に受けると言ってくれて、合格発表にも2人で行きました。

「良かった。受かってる。奨学生にもなれたし、これで良いとこに就職できれば、皆を楽にしてあげられる」

わたしは無事合格できたので、喜びを噛み締めてたんですが、わたしの友達が震えていたので、声をかけたんです。

「リリー、どうしたの?あ!合格したのが嬉しくて泣いてるの?わたしも合格できたよ」

「……合格?そう、合格したのね。残念だけど、わたしは落ちたわ」

「え?……あの、ごめんなさい」

わたしが、すぐに謝ったらリリーは許してくれました。
その後リリーが言葉使いを教えてくれたんです。
最初に聞いた時は、こんな事を言ったら怒らせるんじゃないか聞いたんですよ。
そしたら、

「貴族はわたし達とは違うのよ」

そう言って帰って行きました。

〔回想終了〕

シェリの話を聞いて、サヨとアルは念話で話した。

{フェリ、とう思う?}

{これだけだと何とも}

「もしかして、無表情だったのもその子に言われたからなの?」

「はい。確かあれは、わたしが8歳位の頃でした」

〔回想〕

「シェリ、僕と一緒に遊ぼうよ」

「何言ってんだよ!シェリは俺と遊ぶんだ!」

「喧嘩はダメだよ。みんなで遊ぼうよ」

その頃、何故か男の子たちの喧嘩が絶えたくて、困ってたんです。
わたしがリリーに相談したら、

「なにそれ自慢?喧嘩は、あんたのせいでしょ。あんたが笑うと迷惑なのが分からないの?喧嘩させたくないなら、二度と笑わないでよ」

と言われました。
わたしは、それで喧嘩がなくなるならと笑わなくなりました。

〔回想終了〕

「それから、喧嘩はなくなったんですけど、しばらくしたらリリーと男の子たちが遊ぶようになって、わたしは誘われなくなりました。何故でしょうか?」

「何故でしょうかって……シェリは、その子とはどうやって友達になったの?」

「小さい頃に、リリーが引っ越して来たんです。その時、同い年だからって一緒に遊んでたんですけど、いきなり‘あんた生意気’って言われて頬を叩かれました。父さんに、やられたらやり返せって言われてたので、わたしも叩いたんです。それで友達になりました」

「「…………ん?」」

「え?」

シェリから信じられない言葉が聞こえて、サヨとアルはそれを理解するのに時間がかかった。

「ごめん。何でそれで友達になるの?」

「父さんが‘殴って殴り返したら、それで友達だ!’って言ってたんですけど違うんですか?」

「いや、それは……君のお父さんはそうだったかもしれないけど、君はどうかな?」

さすがのアルも困惑気味に答えた。
しかし、これでその友達が故意に間違った事を教えていたのが分かった。

「シェリ、確かに貴族と平民は身分は違うけど、ものの感じ方はだいたい同じなの。あんな、話し方をされたら頭にくるし不快になるのよ」

「え!?じゃあ、わたし今まで……どうしよう」

次第に青ざめるシェリに、2人は励ますように声をかけた。

「これから気を付ければいいさ。君を誤解してる人もいるだろうから、聞かれたら僕たちにした話をすると良いよ」

「それと、笑いたい時はちゃんと笑ってね。無表情より、その方が良いと思うから」

「はい。わたしリリーとちゃんと話してみます」

「あ、うん。でも、あんまり問い詰めると――」

「きっとリリーも間違いに気付いてないんですよ。このままだとリリーも困っちゃうから、間違ってる事を教えてきます」

「……………」

シェリの言葉にサヨが絶句していると、ポンッと肩を叩かれた。
振り返ると、アルが何ともいえない顔で頭を振っていた。

{やれる事はやったよ。後は本人次第だ}

{そうだね。でも、心配}

サヨとアルは目的を果たしたので、シェリに別れを告げて部屋を出た。
外に出ると、連絡を入れていたネイサンが待っていて、クロードたちの所に戻るため歩きだした。

「それで、どうだったの?」

「間違いは伝えたから大丈夫だよ。でも、違う意味で心配なの」

「あの子、純粋というか前向きというか、人を疑わないんだろうね。騙されやすそうだった」

「それは……自分で気付かないと。一応、私も気にかけておくよ」

「「うん」」

シェリについて話した後、世間話をしながら歩いている時に突然サヨとアルは名前を呼ばれた。

「もしかして、アルとサヨですか?」

「「え?」」

声のした方を向くと、そこにいたのは王都のギルドマスター、ルフィーナだった。

「お久しぶりです。ルフィーナさん」

「久しぶりだね。ルフィーナ」

「本当に久しぶりだわ。あら?そちらは」

「始めまして、ネイサン・ファウストと申します」

「始めまして、私は王都ギルドマスターのルフィーナです。ファウストというと宰相様の?」

「はい、次男になります。アル殿とサヨ殿は当家の客人なので案内しておりました」

ネイサンが機転を利かせて話をしてくれたので、サヨとアルはホッとした。

「そうですか。それにしても、王都に来てるなら教えてくれても良かったのに。皆、会いたがってのよ?」

「あぁ~……僕ら今日の朝こっちに着いて、そのまま来たんだ」

「そうなの。いつまで滞在するのかしら?」

「えっと、まだはっきり決めてないんです」

「だったら一度ギルドに来てちょうだい」

「あ、うん」

「あの!ルフィーナさんは、どうしてここに?」

サヨが話をそらすようにルフィーナに尋ねる。

「学生の試合が終わった後に、団体戦の練習として対抗戦に出る生徒と模擬戦をするためよ。私は女子担当で、男子担当は副ギルドマスターのダイソンよ」

「「団体戦?」」

サヨとアルがネイサンを見ると教えてくれた。

「対抗戦は、学校ごとに各学年3人の代表が個々で戦う個人戦と、中等部と高等部で各学年1人ずつ選び6対6で戦う団体戦があるんですよ」

「「へぇ~」」

「本当は本番みたいに6対6でした方が良いのですが、今回は観客もいますし自分たちより強い者と戦う時の、連携の練習にもなりますから」

「それで、わたしとダイソンが来たんだけど……ねぇ、せっかくだから2人でやってみない?」

「「はぁ?」」

「それは…………」

突然のルフィーナの提案に、サヨとアルは困惑したが、ネイサンは何か考えているようだった。

「2人の実力は確かだし、学生たちのためにもなると思うの。流民である2人だからできる戦い方があるでしょう?」

「「え……」」

((流民って、ただの設定なんですけど!戦い方だって修業途中なんです!))

2人が内心焦っているど、考え込んでいたネイサンが口を開いた。

「ルフィーナ殿たちは、それで良いのですか?」

「えぇ、学園の方には話を通すから大丈夫よ」

((いやいやいやいや、大丈夫じゃないよ))

「分かりました。しかし2人は当家の客人なので、父に確認してみます」

((何で!?))

「お願いします。では、わたしはダイソンにも話しておくので失礼します」

サヨとアルはネイサンに理由を聞こうとしたが、難しい顔をしている彼に声をかけられず、途中で子どもに戻りクロードたちと合流した。
ネイサンはクロードと2人で、離れた場所に移動して真剣な顔で何か話していた。
クロードは、顔をしかめて話を聞いていたが、溜め息をひとつついて頷いた。
そしてその時、サヨとアルの模擬戦への参加が決定したのだった。








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