上 下
4 / 166
禁忌の子

禁忌の子?

しおりを挟む
――キィーッ――ガシャンガシャン

ドアの開く音がして、誰かが入って来た。

「おい、メシだ!……なんだ、寝てんのか?はっ、いいご身分だな『禁忌』のくせに!」

(入って来たのは、男の人みたい。何でこんなに怒ってるの?『禁忌』ってどういう事だろう)

私は怒鳴り声にびっくりして、体が動きそうになったのを必死に押さえてた。

――カツン、カツン

「うるさいですよ。何をしているのですか」

開いたドアからもう1人入って来て、男に声をかけた。

(今度は女の人の声だ……もう少し寝たフリしておこうかな)

「すいません……わざわざ地下室までメシを持って来たのに、こいつが寝てるから腹がたったんスよ」

「寝ているのですか?この時間なら起きてるはずですが……そういえば、昨日は新開発した毒の実験をしてましたね。かなり効果が強いと言っていたので、そのせいかもしれませんね?」

(ここって地下室だったんだ。だから窓がないなかぁ……でも、毒の実験ってどういう事!?)

私は、聞こえてきた内容に驚き、起き上がりそうになったが、このまま2人の会話を聞いていた方が、いろいろ分かりそうなので、聞くことに集中した。

「フンッ、このまま起きなきゃいいのにな。もう、4年っスよ?まったく、当主様はいつまでこいつを生かしておくつもりなんですか?」

「口を慎みなさい。使用人が口出ししていい事ではありません。旦那様が決める事です」

「分かってるっスよ。でも実際、不思議なんスよね~何で『禁忌』である双子なのに、二人とも生かしておくのか。普通、どちらか殺すはずっスよね?」

「旦那様も生まれた時に、どちらかを処分しようとなさいましたが、簡易的な能力測定の結果を見て、どちらとも育てる事になったのです」

(育てるって……地下室に監禁するのを育てるとは言わないでしょ!?だいたい、何で双子が『禁忌』なの?しかも、生まれたらどちらかを処分――殺すって!?)

育てる・・・ねぇ……2人とも能力が高かったって事っスか?」

「えぇ。姉の方は、通常の赤ん坊より魔力が高いのですが、一族の『固有スキル』を持たず、妹の方は魔力は普通ですが、『固有スキル』を持っていたので、妹の方を娘として育てる事になったのです。姉の方は、『固有スキル』こそ持ちませんが、高い魔力は貴重ですので……。しかし、『禁忌』とされる双子がいるなど知られる訳にはいきません。ですから、……」

「だから、姉の方は地下室って訳っスね。流石メイド長!詳しいっスね。でも、貴重と言うわりに最近、実験に使っているじゃないですか?」

(ここは地下室……ということは、『わたし』が双子の姉で、『妹』がいるのかぁ)

「それは、弟君が生まれたからです。弟君は、魔力も高く、『固有スキル』も持っているそうなので、いずれは立派な当主となる事でしょう」

「そりゃあ安心っスね。なら、こいつは用済みでしょう?」

「ですから、それは旦那様が決める事です。それに、まだ使い道はありますよ……そろそろ時間ですね。戻りますよ」

「了解っス」

――バタン――ガチャン

2人共、部屋を出たようだ。
私は、寝転んだまま外の様子を伺う。

――カツン――カツン
――ガシャ――ガシャ

2人の足音が、遠ざかっていくのを聞きながら、私は体を起こしたが、しばらく呆然としてしまった。



数分後――

私は、2人の会話を思い出しなから、情報を整理する事にしました。

「何か…想像を越えてたな……情報を整理してみよう…」

さっきの会話で分かった事は――

*『わたし』は『禁忌』とされる双子の姉で、おそらく4歳。
*『わたし』は魔力は高いが、一族の『固有スキル』を持ってないので、地下室に監禁されている。
*最近、能力の高い弟が生まれた。
*弟が生まれてから『わたし』は人体実験されているらしい。
*この家は、メイドや使用人を雇うほどの家らしい。

(私、ここにいたら危ないよね?だいたい、開発した毒と薬の実験って……最近、始めたって事だけど、今の『わたし』は4歳なのよ?……そんな子どもに実験?普通じゃないよ!昨日は新開発の毒で実験したって言ってたから、もしかして『わたし』はその毒に耐えられなくて『小夜』が目覚めたって事なのかな?でも、『小夜』が目覚めた時は、体は何ともなかったよね?今までだってそんな実験されたら、無事なわけないと思うんだけど………とにかく、このまま此処にいても生きられるか分からないから、脱出する方法を考えないと……その為にも、まずは『ステータス』の確認からだ!)

私は、此処から脱出方法を考える為に、自分の能力を調べることにした。

「よし!ステータス!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...