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待ち受けるもの
第185話 迫り来る時 ~岱胡 1~
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南浜に着くと、岱胡はまず、倉庫へ寄って銃弾の確認をしてから談話室に隊員たちを集めた。
茂木のおかげで隊は奇麗に三つにわけられ、それぞれがどの浜に行くかも決まっている。
「さすが。仕事早いね~」
「そりゃあ……だって時間がないって言ったじゃないですか」
軽口をたたく岱胡に、茂木も合わせて笑いながら答えた。
「まぁね、でも本当に助かったよ」
隊員たちに予備隊と訓練生を組み分けした名簿を渡す。
「これを見て、自分の浜につくメンバーをしっかり頭に入れといて。今回は敵兵が相当な数になるはずだから絶対に乱戦になるけど、一弾一弾を確実に敵兵に当てるように集中して。うっかり、なんてミスは絶対に勘弁してよ? シャレにもならないからさ」
改造したスコープもできあがっていて、みんな首から下げている。
「名簿には各自の武器も乗ってるから、それを見て自分の組む班の銃を使うやつらにスコープ配ってやってよ」
全員の返事を確認した。
わかれて活動すると言っても、岱胡の隊員たちなら離れていても心配はない。
問題なのは訓練生で予備隊も少しばかり心配ではある。
間違っても修治や鴇汰に当てるようなことがあっちゃいけない。
もちろん麻乃にもだ。
「ねぇ、岱胡隊長。自分たちは後方支援になるから前線には出ませんけど、一応、ルートの確認もしておきたいんですけど」
「そうそう。距離や土地勘を掴んでおきたいですよね」
「あぁ、そっか……そうだよな。実際、二班は西と北でそれぞれのやりかたに従ってもらうわけだもんな」
「ええ、それに馴染みのないやつらもいますから、早いうちにコミュニケーション取っておきたいですしね」
ほかの隊の隊員たちよりは、岱胡の隊はどの隊のやつらとも密着している。
だから誰とでも親しくしているけれど、予備隊や訓練生となると、どうしても馴染みのないものが多い。
意志の疎通がしっかりできていないと、動きにロスや支障が出る場合もある。
残り日数は恐らく五日――。
なにがあるのかわからない今、もっと隊のやつらと今後のことを打ち合せたり雑談をしたり、密に時間を共有しておきたい思いもある。
ただ、それをしてしまうと、各自が各浜に行ってから困ることになってしまう。隊員たちの言葉で気づかされた。
「もうホントに時間がないんだよね。猶予は恐らくあと五日……あとのことを考えて、今日中に各自準備を済ませて移動して。向こうに着いたら西は修治さん、北は鴇汰さんに従えばなんの心配も要らないから」
「――はい!」
全員の大きな返事が部屋中に響く。
気を抜くと泣きそうになっている自分がいて、岱胡は頬をたたいて気を引き締めた。
なにか気の利いた言葉でもかけてやればいいんだろうけれど……。
こんなふうに離れて行動するのは演習のときくらいなものだし、今度に限っては戦争の規模さえも大きいだろうということしかわからない。
万が一……ということがないとも言い切れず、どう声をかけようか迷った。
「なんて言うか……俺らいつも前線から離れているから、そう危ない目には遭わないけどさ……今回は見えないことが多いから……とにかくみんな、最後まで生き残って中央で集合しよう」
迷って口をついた言葉は、ちょっとカッコ悪かったかもしれない。
どうも徳丸や巧、修治のようにしっかりとしたことが言えないし、鴇汰や麻乃のように勢いの付くようなことも、穂高や梁瀬のようにみんなを気遣うようなことも言えない。
言われたくはないけれど、一番年下である自分の情けない部分だという自覚はある。
クスクスと笑い声が響いて、顔が熱くなった。
「俺たち、全員しぶといから大丈夫ですよ」
「そうそう。だからまぁ、怪我くらいはするでしょうけど、しっかり援護をしたうえで必ず中央にたどり着きますって」
「うん。みんな、ホントにしっかり頼むよ」
移動の準備をするために、次々に出ていく隊員たちの背中を見送りながら、茂木と福島だけを残した。
すぐに談話室の中は空になりしんと静まり返った。
気を利かせた福島はコーヒーを片手に戻ってくると、それぞれの目の前に置いて椅子に腰を下ろした。
「あのさ、麻乃さんがどの浜に上陸するかわからないだろう? 俺のところかもしれないし……そっちかもしれない」
「そうですね……どの浜も前線に出るやつらは対峙するだけにずいぶんと緊張してるみたいですよ」
「だろうね。俺だっていくら後方とは言え、麻乃さんに当たったら厄介なことになると思うし……」
茂木のおかげで隊は奇麗に三つにわけられ、それぞれがどの浜に行くかも決まっている。
「さすが。仕事早いね~」
「そりゃあ……だって時間がないって言ったじゃないですか」
軽口をたたく岱胡に、茂木も合わせて笑いながら答えた。
「まぁね、でも本当に助かったよ」
隊員たちに予備隊と訓練生を組み分けした名簿を渡す。
「これを見て、自分の浜につくメンバーをしっかり頭に入れといて。今回は敵兵が相当な数になるはずだから絶対に乱戦になるけど、一弾一弾を確実に敵兵に当てるように集中して。うっかり、なんてミスは絶対に勘弁してよ? シャレにもならないからさ」
改造したスコープもできあがっていて、みんな首から下げている。
「名簿には各自の武器も乗ってるから、それを見て自分の組む班の銃を使うやつらにスコープ配ってやってよ」
全員の返事を確認した。
わかれて活動すると言っても、岱胡の隊員たちなら離れていても心配はない。
問題なのは訓練生で予備隊も少しばかり心配ではある。
間違っても修治や鴇汰に当てるようなことがあっちゃいけない。
もちろん麻乃にもだ。
「ねぇ、岱胡隊長。自分たちは後方支援になるから前線には出ませんけど、一応、ルートの確認もしておきたいんですけど」
「そうそう。距離や土地勘を掴んでおきたいですよね」
「あぁ、そっか……そうだよな。実際、二班は西と北でそれぞれのやりかたに従ってもらうわけだもんな」
「ええ、それに馴染みのないやつらもいますから、早いうちにコミュニケーション取っておきたいですしね」
ほかの隊の隊員たちよりは、岱胡の隊はどの隊のやつらとも密着している。
だから誰とでも親しくしているけれど、予備隊や訓練生となると、どうしても馴染みのないものが多い。
意志の疎通がしっかりできていないと、動きにロスや支障が出る場合もある。
残り日数は恐らく五日――。
なにがあるのかわからない今、もっと隊のやつらと今後のことを打ち合せたり雑談をしたり、密に時間を共有しておきたい思いもある。
ただ、それをしてしまうと、各自が各浜に行ってから困ることになってしまう。隊員たちの言葉で気づかされた。
「もうホントに時間がないんだよね。猶予は恐らくあと五日……あとのことを考えて、今日中に各自準備を済ませて移動して。向こうに着いたら西は修治さん、北は鴇汰さんに従えばなんの心配も要らないから」
「――はい!」
全員の大きな返事が部屋中に響く。
気を抜くと泣きそうになっている自分がいて、岱胡は頬をたたいて気を引き締めた。
なにか気の利いた言葉でもかけてやればいいんだろうけれど……。
こんなふうに離れて行動するのは演習のときくらいなものだし、今度に限っては戦争の規模さえも大きいだろうということしかわからない。
万が一……ということがないとも言い切れず、どう声をかけようか迷った。
「なんて言うか……俺らいつも前線から離れているから、そう危ない目には遭わないけどさ……今回は見えないことが多いから……とにかくみんな、最後まで生き残って中央で集合しよう」
迷って口をついた言葉は、ちょっとカッコ悪かったかもしれない。
どうも徳丸や巧、修治のようにしっかりとしたことが言えないし、鴇汰や麻乃のように勢いの付くようなことも、穂高や梁瀬のようにみんなを気遣うようなことも言えない。
言われたくはないけれど、一番年下である自分の情けない部分だという自覚はある。
クスクスと笑い声が響いて、顔が熱くなった。
「俺たち、全員しぶといから大丈夫ですよ」
「そうそう。だからまぁ、怪我くらいはするでしょうけど、しっかり援護をしたうえで必ず中央にたどり着きますって」
「うん。みんな、ホントにしっかり頼むよ」
移動の準備をするために、次々に出ていく隊員たちの背中を見送りながら、茂木と福島だけを残した。
すぐに談話室の中は空になりしんと静まり返った。
気を利かせた福島はコーヒーを片手に戻ってくると、それぞれの目の前に置いて椅子に腰を下ろした。
「あのさ、麻乃さんがどの浜に上陸するかわからないだろう? 俺のところかもしれないし……そっちかもしれない」
「そうですね……どの浜も前線に出るやつらは対峙するだけにずいぶんと緊張してるみたいですよ」
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