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待ち受けるもの
第146話 双紅 ~マドル 11~
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なんの滞りもなく打ち合わせが済み、詳細をすべて決定できた。
ちょうど夜も更けてきたところで用意された部屋で休息を取り、翌朝は準備の整った船の状態を確認した。
早くに目が覚めた割に体に疲れが残っていない。
特にどこが痛むことも疲労を感じることもなく、ホッとする。
ヘイトには対ジャセンベル用に、国境沿いに多めの兵を配備してあるからか、泉翔侵攻へ参加する兵の不安も軽減されているようだった。
(思いの外、準備が早いのも、そのせいがあってのことか……)
仕方なく行ったことが良い結果につなががっている。
今回の泉翔侵攻以降のことも、なにもかもがうまくとしか思えないほどだ。
ヘイトに関しては、特にマドルが口を挟まなくても、すべてを任せることができそうで、注意点だけを伝え、そのまま庸儀へ戻ることにした。
まだ陽の高い内に庸儀に着くと、なにやら慌ただしい雰囲気が漂っている。
まずは軍部へ顔を出した。
「なにか問題でもあったのですか?」
変に緊張感に満ちた部屋で雑兵に問いかけると、物資がほとんど整っていないことを、強くジェに責められたと言った。
当のジェは側近を一新して、今は城に戻ったきりらしい。
外された元側近たちは、どんなに面白くない思いをしているのかと思いきや、意外にも気楽な様子で出航の準備についている。
そして思ったとおり、リュの話しが雑兵たちの間に流れ、ジェとの間に微妙な隔たりができたようだった。
上将は別として、雑兵の間では麻乃への関心が高まっている。
まとまりの無くなった庸儀の軍を動かすのは、手間と面倒がかかりそうだ。
それに万が一にも今度の事が原因で、雑兵の士気が下がってしまったら……。
ただでさえ防衛力の強い泉翔の戦士を相手に、中央まで進軍することが難しくなってしまうかもしれない。
庸儀と一緒に行動するマドルにとって、それは由由しき事態だ。
早急に会議室に雑兵を集めた。
各浜から上陸し、中央の城で合流することを伝えた。
「ロマジェリカ軍を率いてくるのは女性です。ですが腕は確かです」
「その女性というのは……ジェさまと同じ紅い髪のかたでしょうか?」
「ええ、そうです。私は落城の作戦をそのかたに任せるつもりですが、ロマジェリカの兵だけでは心許ない……みなさんにもその作戦のほうへ参加していただきたいと考えています」
一瞬、部屋の空気が固まったように感じた。
兵たちの立場上、ジェのことを考えると、手放しに首を縦に振ることができないのだろう。
「ですが、ジェさまがなんと仰られるか……」
「それは大丈夫です。あのかたには側近の方々と共に、別の作戦をお任せするつもりでいますので」
この一言が兵の士気を一気に高めたようで、会議室中を高揚した雰囲気が包んだ。
誰もがもう一人の鬼神を、ひと目見たいと思ったからに違いない。
「詳細は万事うまくことが運び、みなさんが中央まで無事に進軍したのちにお話ししますので、そのつもりでお願いします」
ざわめきの立った中、雑兵の一人にロマジェリカに戻る旨を伝え、会議室をあとにした。
(思った以上にやる気を出してくれたか)
これならば、いちいち指示して追いたてることをしなくても、物資の調達も出航の準備もスムーズに進むだろう。
どうあっても中央まで進軍するために……。
すぐに車の準備をさせ、ロマジェリカに戻ることにした。
ジェも自分の周りのことで手一杯で、マドルに構っている余裕はなさそうだ。
ここへは、出航の前日に戻ってくれば十分だろう。
なにかあったときのために側近を一人、連絡係として残して庸儀を発った。
ちょうど夜も更けてきたところで用意された部屋で休息を取り、翌朝は準備の整った船の状態を確認した。
早くに目が覚めた割に体に疲れが残っていない。
特にどこが痛むことも疲労を感じることもなく、ホッとする。
ヘイトには対ジャセンベル用に、国境沿いに多めの兵を配備してあるからか、泉翔侵攻へ参加する兵の不安も軽減されているようだった。
(思いの外、準備が早いのも、そのせいがあってのことか……)
仕方なく行ったことが良い結果につなががっている。
今回の泉翔侵攻以降のことも、なにもかもがうまくとしか思えないほどだ。
ヘイトに関しては、特にマドルが口を挟まなくても、すべてを任せることができそうで、注意点だけを伝え、そのまま庸儀へ戻ることにした。
まだ陽の高い内に庸儀に着くと、なにやら慌ただしい雰囲気が漂っている。
まずは軍部へ顔を出した。
「なにか問題でもあったのですか?」
変に緊張感に満ちた部屋で雑兵に問いかけると、物資がほとんど整っていないことを、強くジェに責められたと言った。
当のジェは側近を一新して、今は城に戻ったきりらしい。
外された元側近たちは、どんなに面白くない思いをしているのかと思いきや、意外にも気楽な様子で出航の準備についている。
そして思ったとおり、リュの話しが雑兵たちの間に流れ、ジェとの間に微妙な隔たりができたようだった。
上将は別として、雑兵の間では麻乃への関心が高まっている。
まとまりの無くなった庸儀の軍を動かすのは、手間と面倒がかかりそうだ。
それに万が一にも今度の事が原因で、雑兵の士気が下がってしまったら……。
ただでさえ防衛力の強い泉翔の戦士を相手に、中央まで進軍することが難しくなってしまうかもしれない。
庸儀と一緒に行動するマドルにとって、それは由由しき事態だ。
早急に会議室に雑兵を集めた。
各浜から上陸し、中央の城で合流することを伝えた。
「ロマジェリカ軍を率いてくるのは女性です。ですが腕は確かです」
「その女性というのは……ジェさまと同じ紅い髪のかたでしょうか?」
「ええ、そうです。私は落城の作戦をそのかたに任せるつもりですが、ロマジェリカの兵だけでは心許ない……みなさんにもその作戦のほうへ参加していただきたいと考えています」
一瞬、部屋の空気が固まったように感じた。
兵たちの立場上、ジェのことを考えると、手放しに首を縦に振ることができないのだろう。
「ですが、ジェさまがなんと仰られるか……」
「それは大丈夫です。あのかたには側近の方々と共に、別の作戦をお任せするつもりでいますので」
この一言が兵の士気を一気に高めたようで、会議室中を高揚した雰囲気が包んだ。
誰もがもう一人の鬼神を、ひと目見たいと思ったからに違いない。
「詳細は万事うまくことが運び、みなさんが中央まで無事に進軍したのちにお話ししますので、そのつもりでお願いします」
ざわめきの立った中、雑兵の一人にロマジェリカに戻る旨を伝え、会議室をあとにした。
(思った以上にやる気を出してくれたか)
これならば、いちいち指示して追いたてることをしなくても、物資の調達も出航の準備もスムーズに進むだろう。
どうあっても中央まで進軍するために……。
すぐに車の準備をさせ、ロマジェリカに戻ることにした。
ジェも自分の周りのことで手一杯で、マドルに構っている余裕はなさそうだ。
ここへは、出航の前日に戻ってくれば十分だろう。
なにかあったときのために側近を一人、連絡係として残して庸儀を発った。
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