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島国の戦士
第135話 下準備 ~巧 3~
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耳鳴りがして、部屋中の空気が固まった気がしたのと同時に、巧は体が動かなくなった。
声も出せない。
みんなも同じなのか動く気配をまったく感じない。
ちょうど梁瀬のほうを向いていたおかげで、その表情が良く見えた。
眉をひそめた梁瀬は、一点を見つめている。
「なんスか? どうかしました?」
岱胡の声が聞こえ、気配が動くのを感じた。
(動けるのは岱胡だけ? どうして……?)
そう思った一拍あとに、もう一つの気配が動いた。
「なに? みんなどうかしたの? あたし、本当に急いでるからもう行くね」
(麻乃の声だ! 麻乃も動けるの?)
扉が開き、閉じる音が部屋に響いた。
麻乃と岱胡の声が遠ざかっていく。
「あれっ?」
裏返った声をあげた梁瀬の表情に焦りがみえる。
二人が出ていったあと、梁瀬ががっかりした様子で机を打つと、体が解き放たれてガクンと揺れた。
「あんた、いきなりなにをやってくれているんだ! 追いつけなくなっちまったじゃないか!」
修治がつかみかからんばかりの勢いで、梁瀬に詰め寄る。
「いや、ごめん……もしかして麻乃さん、術が効きやすくなってるのかな~、って思って、ちょっと金縛りを……」
「ヤッちゃんが昨日、試してみようか、って言ったのはこれのこと?」
あわてていいわけをはじめた梁瀬に、巧はそう問いかけた。
「うん、この部屋に有効にかけたんだけどね、一瞬、止まったからかかったのかと思ったんだけど、やっぱり動いてたね」
梁瀬は苦笑いを浮かべ、頭を掻いている。
「やるならやるで、先にひと声かけてくれ。俺はこんなに驚いたのは久々だ」
「本当だよ、俺も術をかけられるなんて久しぶりで驚いたよ」
凝りをほぐすように首を動かした徳丸がぼやき、穂高もホッと息をついて椅子に腰をおろした。
「ごめん。本当にごめんね。凄く気になってたからさ……でも、やっぱりかからないのはハッキリしたよね?」
梁瀬は巧の顔を見てそう言った。
修治も納得したようにうなずいている。
(でも……だったら庸儀との交戦で麻乃が見たものは、一体なんだっていうのかしら……?)
巧が考えにふけっていると、梁瀬の後ろを無表情のまま鴇汰が通り過ぎていったのが見えて慌てて呼び止めた。
「なんだよ」
振り返った鴇汰の目の前に、巧は手紙を一通、差し出した。
「あんた、明日は休みよね? 悪いんだけど、この手紙を届けてほしいのよ」
「別に構わないけど、どこに届けるのよ?」
「麻乃の道場、あんたも知っているわよね? そこの師範の高田さんに渡してもらいたいの」
鴇汰が手紙を受け取ろうとした手をサッと引っ込め、巧を睨む。
「そんなの、麻乃に頼めばいいじゃねーの」
「そうしようと思っていたんだけど帰っちゃったじゃない。少しばかり返事を急ぐから、明日の昼には届いてないと困るのよ」
「だったら、あんたが自分で行けよ」
「そうしたいけど、私は明日から北詰所でまた中央から離れるから、今日は家に戻るって子どもたちと約束してるのよね」
鴇汰はグッと言葉を詰まらせると、大きなため息をひとつつき、手紙を乱暴に奪い取った。
「いいよ。わかった。届けるよ」
「ありがとう。助かるわ」
会議室を出ていく鴇汰の後ろ姿にお礼を言った。
(まずは一つ、うまくいった。あとは明日か……)
声も出せない。
みんなも同じなのか動く気配をまったく感じない。
ちょうど梁瀬のほうを向いていたおかげで、その表情が良く見えた。
眉をひそめた梁瀬は、一点を見つめている。
「なんスか? どうかしました?」
岱胡の声が聞こえ、気配が動くのを感じた。
(動けるのは岱胡だけ? どうして……?)
そう思った一拍あとに、もう一つの気配が動いた。
「なに? みんなどうかしたの? あたし、本当に急いでるからもう行くね」
(麻乃の声だ! 麻乃も動けるの?)
扉が開き、閉じる音が部屋に響いた。
麻乃と岱胡の声が遠ざかっていく。
「あれっ?」
裏返った声をあげた梁瀬の表情に焦りがみえる。
二人が出ていったあと、梁瀬ががっかりした様子で机を打つと、体が解き放たれてガクンと揺れた。
「あんた、いきなりなにをやってくれているんだ! 追いつけなくなっちまったじゃないか!」
修治がつかみかからんばかりの勢いで、梁瀬に詰め寄る。
「いや、ごめん……もしかして麻乃さん、術が効きやすくなってるのかな~、って思って、ちょっと金縛りを……」
「ヤッちゃんが昨日、試してみようか、って言ったのはこれのこと?」
あわてていいわけをはじめた梁瀬に、巧はそう問いかけた。
「うん、この部屋に有効にかけたんだけどね、一瞬、止まったからかかったのかと思ったんだけど、やっぱり動いてたね」
梁瀬は苦笑いを浮かべ、頭を掻いている。
「やるならやるで、先にひと声かけてくれ。俺はこんなに驚いたのは久々だ」
「本当だよ、俺も術をかけられるなんて久しぶりで驚いたよ」
凝りをほぐすように首を動かした徳丸がぼやき、穂高もホッと息をついて椅子に腰をおろした。
「ごめん。本当にごめんね。凄く気になってたからさ……でも、やっぱりかからないのはハッキリしたよね?」
梁瀬は巧の顔を見てそう言った。
修治も納得したようにうなずいている。
(でも……だったら庸儀との交戦で麻乃が見たものは、一体なんだっていうのかしら……?)
巧が考えにふけっていると、梁瀬の後ろを無表情のまま鴇汰が通り過ぎていったのが見えて慌てて呼び止めた。
「なんだよ」
振り返った鴇汰の目の前に、巧は手紙を一通、差し出した。
「あんた、明日は休みよね? 悪いんだけど、この手紙を届けてほしいのよ」
「別に構わないけど、どこに届けるのよ?」
「麻乃の道場、あんたも知っているわよね? そこの師範の高田さんに渡してもらいたいの」
鴇汰が手紙を受け取ろうとした手をサッと引っ込め、巧を睨む。
「そんなの、麻乃に頼めばいいじゃねーの」
「そうしようと思っていたんだけど帰っちゃったじゃない。少しばかり返事を急ぐから、明日の昼には届いてないと困るのよ」
「だったら、あんたが自分で行けよ」
「そうしたいけど、私は明日から北詰所でまた中央から離れるから、今日は家に戻るって子どもたちと約束してるのよね」
鴇汰はグッと言葉を詰まらせると、大きなため息をひとつつき、手紙を乱暴に奪い取った。
「いいよ。わかった。届けるよ」
「ありがとう。助かるわ」
会議室を出ていく鴇汰の後ろ姿にお礼を言った。
(まずは一つ、うまくいった。あとは明日か……)
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